Googleが提供するGoogle Apps Script(GAS)のプログラミングで、Google Apps(主にスプレッドシート)を操作する方法を解説していく連載。今回は、スプレッドシートに図形でボタンを作成しGASを関連付ける方法、トリガーを使ったメニューの追加について解説する。
本連載「Excel VBAプログラマーのためのGoogle Apps Script入門」では、Googleが提供する「Google Apps Script」(GAS)のプログラミングで、「Google Apps」を操作する方法を「Google Sheets」(スプレッドシート)を中心に解説していく。
今回は、作成したスクリプトと、スプレッドシート上に配置した図形を関連付けて、図形をクリックするとスクリプトが実行されるようにしてみる。また、スプレッドシートに「メニュー」という項目を追加して、この項目を選択すると、各種登録されたスクリプトの一覧が表示されて、それを選択するとスクリプトが実行される処理を解説する。
使用するデータは図1のようなデータを使用する。書式はメニューから手動で行っている。
今回の処理は連載第6回の「Google Apps Scriptで繰り返しと条件分岐を組み合わせて、データの仕分けを自動化する」の中で作成した、スクリプトを使用している。
65点以上の場合「◎」、50〜60点は「○」、それ以外は「×」を表示させていた処理だ。再掲しておく。
ツールメニューから「スクリプトエディタ」を起動する。開いたエディタ画面から「ファイル」→「新規作成」とたどって、「科目の判定」ファイルを作成する。「科目の判定.gs」内に、リスト1のコードを記述する。
function myCourseDeterminationFunction() { var sheet=SpreadsheetApp.getActiveSheet(); var value={}; var values=sheet.getRange("B3:B10").getValues(); var count=values.length; for(var i=0;i<=count-1;i++) { value[i]=values[i] if(value[i]>=65) { sheet.getRange(i+3,3).setValue("◎"); }else if(value[i]>=50 && value[i]<65){ sheet.getRange(i+3,3).setValue("○"); }else{ sheet.getRange(i+3,3).setValue("×"); } } }
リスト1の詳細については、連載第6回を参照してほしい。
次は、このデータからグラフを作るスクリプトだ。
ツールメニューから「スクリプトエディタ」を起動する。開いたエディタ画面から「円グラフ作成」というファイルを作成する。「円グラフ作成.gs」内に、リスト2のコードを記述する。
function myPIEChartFunction() { var sheet=SpreadsheetApp.getActiveSheet(); var range=sheet.getRange("A2:B10"); var chart=sheet.newChart() .addRange(range) .setChartType(Charts.ChartType.PIE) .setPosition(2,5,0,0) .setOption('title','科目別平均点'); sheet.insertChart(chart.build()); }
リスト2の詳細については、連載第8回の「GASで棒、円、折れ線など各種グラフを作成、変更、削除するための基本」を参照してほしい。
ここからは、これら2つのスクリプトを、まずは図形と関連付けて実行させてみる。
スプレッドシートの画面のメニューから「挿入」→「図形描画」と選択する(図2)
すると、図形描画画面が表示されるので、「図形」のアイコンを選択して「図形」→「角丸四角形」(図3)を選択しよう。
するとカーソルが「+」に変わるので、ドラッグしながら適当な大きさの角丸四角形を作成する。作成した角丸四角形を選択して、マウスの右クリックをすると、「テキストを編集」メニューが表示される。これを選択すると、角丸四角形内が編集状態になるので、「科目の判定」と入力する。「図形描画」のメニューから「太字」と「中央揃え」にしておく。(図4)。
次に、図4の右隅上にある「保存して閉じる」をクリックする。するとスプレッドシート上に、今作成した角丸四角形が表示されるので、適当な位置に移動して配置しておく。
図2〜3の手順で、もう1つ角丸四角形を作成し、名前を「円グラフの作成」としておく。「保存して閉じる」をクリックすると、スプレッドシート上には2つの角丸四角形があることになる。それぞれをドラッグ&ドロップして適当な位置に配置する。
筆者は図5のように配置した。
この2つの角丸四角形にスクリプトを関連付けることになる。
Excelで図形を作成する場合は、メニューの「挿入」→「図形」とたどって角丸四角形などを選択する。GASでは、「挿入」→「図形描画」→「図形」から、角丸四角形を選択している。GASの方がひと手間多いだけだ。
まず、「科目の判定」の角丸四角形を選択状態にすると、右隅上に「▼」アイコンが表示されるので、これをクリックする。すると各種メニューが表示される(図6)。
図6から「スクリプトを割り当て」を選択する。すると「どのスクリプトを割り当てますか?」と表示されるので、リスト1の「myCourseDeterminationFunction」を指定する(図7)。これは「科目の判定」のスクリプトだ。
図7から「OK」ボタンをクリックする。
同じ手順で、今度は「円グラフの作成」の角丸四角形に、リスト2の「myPIEChartFunction」を指定する。これで、2つの角丸四角形にはスクリプトが関連付けられた。
実行してみよう。まず、「科目の判定」をクリックすると、画面の右上に「スクリプトを実行しています」と表示され、図8のように表示される。
次に、「円グラフの作成」をクリックすると図9のように表示される。
これらのスクリプトを再度実行する場合、削除機能は付けていないので、手動で「判定」欄の値を削除したり、手動で「円グラフ」を削除したりしてから再実行をしていただきたい。特に「円グラフ」の場合は、新規に作成するようにしているので、既存の「円グラフ」を削除してから、スクリプトの再実行を行わないと、何重にも重なって「円グラフ」が表示されるので、注意してほしい。
Excel VBAで図形にマクロを関連付ける場合は、図形を選択してマウスの右クリックから表示される「マクロ」を選択するとマクロの一覧が表示されて、その中から選択するようになる。この点に関してもExcel VBAとGASでは、見栄えが異なるだけで、処理の手順としては大差がない。
次に、スプレッドシートのメニューに「メニュー」項目を追加して、前述のスクリプトを実行させる処理を解説する。
スプレッドシートにメニューを追加するには、スプレッドシートが開いたときにメニューを追加するスクリプトを実行する必要がある。
そのようなときは、下記の「トリガー」(イベントハンドラ)を使用する。
スプレッドシートを開いたときに実行される。開いたWebページをリロードした場合なども実行される。
他にも、スプレッドシートを編集したときに実行されるトリガー「onEdit」がある。例えば、いろいろなセルを書き換えるたびにイベントが発生し、このトリガーが呼び出されることになる。
これらの外にも、トリガーの種類があるが、本稿では省略する。気になる方は、下記のURLを参照してほしい。
Excel VBAでブックが開いたときに自動実行させる方法には、2通りの方法がある。
Workbook_OpenとAuto_Openだ。
シートが編集されたときのイベントはWorksheet.Changeを使用することになるだろう。
ツールメニューから「スクリプトエディタ」を起動する。開いたエディタ画面から「onOpenイベント」というファイルを作成する。「onOpenイベント.gs」内に、リスト3のコードを記述する。
function onOpen(){ var sheet = SpreadsheetApp.getActiveSpreadsheet(); var myMenu= []; myMenu.push({name: "科目の判定", functionName: "myCourseDeterminationFunction"}); myMenu.push({name: "円グラフの作成", functionName: "myPIEChartFunction"}); sheet.addMenu("メニュー", myMenu); }
変数sheetに現在のアクティブなスプレッドシートを取得して参照する(2行目)。
変数myMenuで空の配列変数を作成する(3行目)。
空の配列変数myMenuのpushメソッドで、メニューの名前と実行するスクリプトの名前を指定していく(4〜5行目)。
最後に、addMenuメソッドで、「メニュー」という項目を追加し、内容に配列変数myMenuに追加された項目名とスクリプトを追加する(6行目)。
これを実行すると図10のように、スプレッドシートのメニューに「メニュー」という項目が追加されるが、最初に実行した場合は、追加されていないことが多い。その場合はWebページをリロードすると追加される。
図10の「メニュー」から各項目を選択すると、図8や図9のように表示される。
Excelに独自のメニューを追加する場合は、「CommandBar」オブジェクトを使用する。Excelのメニューバーは「Worksheet Menu Bar」という名前のCommandBarオブジェクトである。下記のようなタイプがある。
コントロール名 | 説明 |
---|---|
msoControlButton | ボタン |
msoControlEdit | テキストボックス |
msoControlDropdown | ドロップダウンリストボックス |
msoControlComboBox | コンボボックス |
msoControlPopup | ポップアップメニュー |
VBAでは、メニューバーに指定する形式(Type)を、表のように、いろいろ選択できる。しかしGASでは、テキストだけの表示になる点が、VBAと異なる。
今回はこれで終わりだ。次回は、最終回。フォームのデータをスプレッドシートに追加しメールで知らせる方法を紹介する。
PROJECT KySS 薬師寺 国安(やくしじ くにやす)
1950年生まれ。フリーVBプログラマー。高級婦人服メーカーの事務職に在職中、趣味でVBやActiveXに取り組み、記事を執筆。2003年よりフリー。.NETやRIAに関する執筆多数。Windowsストアアプリも多数公開中(約270本)。
Microsoft MVP for Development Platforms - Client App Dev (Oct 2003-Sep 2012)。
Microsoft MVP for Development Platforms - Windows Phone Development(Oct 2012-Sep 2013)。
Microsoft MVP for Development Platforms - Client Development(Oct 2013-Sep 2014)。
PROJECT KySSは、1997年に薬師寺聖と結成したコラボレーション・ユニット
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.