前編 Web2.0の全体像を整理する
Web2.0の本質から読み取る
Webビジネスの心得とは?
野村総合研究所
技術調査室
堀祐介
2006/2/4
日本国内でもWeb2.0に関する議論が活性化し事例や関連情報が増えてきた。前編ではWeb2.0の全体像を整理し、後編は事例を中心に紹介する。Web2.0の本質に迫ってみたい。 |
すべては2005年にはじまった |
Web2.0では、Webという生態系(ビジネス的要素や技術的要素)を議論の対象とし、Webの今後の方向性を導き出そうとしている。よってWeb2.0の全体像を整理し本質を知るということは、すべてのWeb利用者(メーカー、小売業から消費者まで)にとって有益である。
日本国内でもWeb2.0に関する議論が活性化し事例や関連情報が増えてきた状況下で、前編ではWeb2.0の全体像を整理し、後編は事例を中心に紹介する。そして最後にWeb2.0の本質に迫ってみたい。
Web2.0の全体像から本質を整理する |
Web2.0とは「Webの世界で起きている新しいトレンドの総称」である。厳密に何かを定義した仕様ではなく、過去・現在・未来において常に変化し続ける“Webを取り巻く環境の変化”をとらえ、Webの今後の方向性を洞察する試みだ。
そもそもなぜWeb2.0という言葉が生まれたのか? Web2.0によって何が分かるのか? Web2.0の本質とは何か? 答えを求めてGoogleで“Web2.0”を検索してみると、事例紹介、ビジネス面の分析、Webアプリケーション開発手法の変化や要素技術の解説など、さまざまなとらえ方や分析の切り口を得ることができる。しかし各論のみではWeb2.0の全体像をとらえることが難しく、ひいてはWeb2.0の本質が見えてこない。
一方でWeb2.0の議論ではテーマの広範さからさまざまなアイデアが生まれており、今後のWebの方向性をとらえる指標として有益である。例えばWeb2.0のキーワードの1つに“マッシュアップ”があるが、マッシュアップの事例集であるmashupfeedを参照するとそのアイデアの多様性に驚かされる。そしてこの事例集自身もWeb2.0的な手法で構築されているから面白い。Web2.0の議論に参加することで、企業の視点に立てば新しいWebビジネスのアイデアが見つかる可能性があるし、ユーザーの視点に立てばライフスタイルに影響を与えるような新しいWebの利用方法が見つかるかもしれない。
Web2.0にWebビジネスを成功させる秘訣や上手なWeb利用方法のヒントが含まれているとすると仮定し、Web2.0の要素を実践するとなると、やはりWeb2.0の全体像把握や本質の整理が必要になる。Web2.0の全体像や本質を整理する手順を図表1-1のように提案する。
図表1-1 Web2.0の考え方「出所:野村総合研究所」 |
ティム・オライリー氏の論文“What Is Web2.0”では副題が“Design Patterns and Business Models for the Next Generation of Software(次世代ソフトウェアのデザインパターンとビジネスモデル)”とされていることからも分かるように、Web2.0の議論の中核はデザインパターンとビジネスモデルである。この2つを総称して本文では“Webビジネスの構造”*(1)とする。
(1)通常、ビジネス構造というと企業資産やビジネスプロセスのすべてを意味するが、本文ではWebが関連する範囲に限定する |
このWebビジネスの構造を次の3軸に分けて考える。
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そしてマッシュアップやロングテールといったWeb2.0の特徴を表すキーワード群はこの3つの軸に分けて考えた方がより理解が深まるだろう。
またWeb2.0で取り上げられるビジネスの成功事例や先進的事例は、いま、現実に起きているWebビジネスの構造変化を把握するのに役立つ(詳細は後編で紹介する)。これらの事例はWebを取り巻く環境変化を感じ取り、上手に適応した例でもあるため、事例の背景としてWebを取り巻く環境変化がどのようなものであるかも整理してみたい。
Web2.0がもたらすWebビジネスの構造変化 |
図表1-2に国内外のWeb2.0に関する記事でよく取り上げられるキーワード群を示す。
ここではキーワード群を、以下の3つに分類した。
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キーワード群をふかんしただけでもWeb2.0が指し示すテーマの広範さがよく分かる。
図表1-2 Web2.0の主なキーワード群「出所:野村総合研究所」(図版をクリックすると拡大します) |
さて、図表1-2でWeb2.0の特徴として挙げた7つのキーワード群を図表1-1で示した「ビジネスモデル」「情報モデル」「技術トレンド」にマッピングしてみよう(図表1-3)。図表1-3の横軸は時間軸を意味し、Webの黎明期をWeb 1.0、普及期をWeb 1.5、現在のWebをWeb2.0とする。
図表1-3 Webビジネス構造の変化 「出所:野村総合研究所」(図版をクリックすると拡大します) |
この3軸の関係は独立ではなく、相互にリンクする。例えば「ロングテール」を意識したビジネスを展開するためには「ユーザー参加型」により多くのユーザーフィードバックを集めることが欠かせないし、多くのユーザーを参加させるためにはAJAXなどを用いて「リッチなユーザー体験」を実現し、ユーザーが口コミ情報を入力したくなるような魅力的なWebサイトを構築する必要があるだろう。
これら3軸において過去から現在に至るまでの変化を振り返り、Webビジネスの構造変化をとらえてみたい。
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INDEX |
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Web2.0の本質から読み取るWebビジネスの心得とは? | ||
Page1<すべては2005年にはじまった> Web2.0の全体像から本質を整理する/Web2.0がもたらすWebビジネスの構造変化 |
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Page2<ビジネスモデルの変化(実店舗型からロングテール・サービス型を意識したビジネスへ)>
情報モデルの変化(静的な情報から混ぜ合わせ活用される情報へ)/技術トレンドの変化(テキスト主体から構造化されたWebへ)/Webを取り巻く環境の変化/情報発信者の多様化 |
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Page3<コンテンツ間・ユーザー間の相互連携加速>
Web2.0の全体像から読み取れるWebビジネスの心得とは?/ユーザー主導型のプラットフォームを取り込む/口コミ情報を最大限に利用する/ロングテールビジネスは規模(アクセス数)の獲得とターゲット(顧客)の設定が必要/自動配信する情報の中身とターゲット(配信先)を設定する/マッシュアップするのか、されるのかを考える/Web2.0でできること |
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