IMAP

Dianna Mullet、Kevin Mullet著
木田直子訳
(株)オレンジソフト監訳
446ページ
定価:4000円
ISBN4-87311-043-2
オライリー・ジャパン 発行


 電子メール用のプロトコルとしては、POPSMTPが著名だが、POP方式では、クライアント側のメール・ソフトでメッセージを取得するときに、基本的にメール・サーバのメッセージを削除し、以後メッセージは、メール・ソフトで管理することになる。特定のPCでのみ電子メールをやり取りするなら、この方式でもまったく問題はないし、現在でも多くのユーザーがPOP方式でプロバイダからメールを取得している。しかし外出先などからも、以前に取得したメッセージを自由に参照したければ、メッセージを取得したPC(メール・ソフト)を持ち歩かなければならない。これに対しIMAPでは、メッセージをメール・サーバに残したまま、必要に応じてクライアント側からメッセージの一覧を取得したり、メッセージ本体を取得したりする方式をとる。メッセージは常にインターネット上のメール・サーバに保存されることになるので、場所やアクセス機器に依存することなく、どこからでもメッセージにアクセスできるようになるわけだ。会社だけでなく、自宅にもインターネットへの常時接続環境が浸透したこと、モバイル機器を利用した無線インターネット・アクセス・サービスが普及したことなどから、このように場所と時間を選ばずにメール・ボックスにアクセスしたいというニーズは徐々に高まりつつある。

 本書は、IMAPメール・サーバの管理者を対象として、そのプロトコル概要からIMAPサーバの具体的な設定方法、管理方法を詳細に解説したものである。

 まずは電子メール・システムの基本的なしくみから、IMAPの概要、IMAPセッションの具体例を解説。続いて代表的なIMAPクライアントを紹介し、それぞれの特徴やサポートされる機能、設定方法などを解説している。具体的には、PINE/PC PINE(文字ベースのIMAPクライアント)、Star Mail(フリーソフトであるStar Officeに含まれる電子メールクライアント)、Netscape Messenger、Outlook Express、Eudoraなどを取りあげる。また通常のアプリケーションだけでなく、WebベースのIMAPクライアント(IMPやSilkymail、xGateなど)についても併せて紹介している。

 本編であるサーバ編としては、IMAPベースのメール・サーバ(UW IMAPとCyrus IMAP)をインストールし、管理する具体的な方法を解説している(いずれもUNIX環境向けのサーバ)。UW IMAPはIMAPの考案者であるマーク・クリスピン(Mark Crispin)氏によってワシントン大学で開発されたIMAPサーバであり、一方のCyrusはカーネギーメロン大学のプロジェクトとして開発されたIMAPサーバである(いずれもオープンソース)。いずれも、ソフトウェアの入手方法からハードウェア/ソフトウェア・プラットフォームの選択、インストール方法、本稼働に向けたテスト方法、運用の具体的なテクニックや注意点などが詳細に説明されている。UWとCyrusのIMAPサーバ管理者だけでなく、そこでのテクニックは、これら以外のIMAPサーバ管理者に対しても参考になるだろう。

 本書の監訳を担当している(株)オレンジソフトは、電子メール・ソフトとして著名なWinBiffの開発で知られる。そのノウハウを活かして、原書にはない日本語環境ならではの情報が追加されており、たいへん参考になる(日本語特有の問題や、日本での著名なメールクライアントなど)。

 本書は、IMAPサーバ管理者の座右の書と言っても大げさではないだろう。

 Book Review
 
更新履歴
【2001.6.15】最後から2つ目の段落、本書の監訳者に関して記述した部分で、「『電子メールプロトコル』に続き、本書の監訳を担当している(株)オレンジソフトは〜」と表記していましたが、『電子メールプロトコル』の監訳者には(株)オレンジソフト以外の担当者も含まれていることが分かりました。不正確な表現だったことをお詫びし、当該部分を訂正させていただきます。

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