ウェブ・ユーザビリティ
顧客を逃さないサイトづくりの秘訣


ヤコブ・ニールセン著
グエル 訳
篠原稔和 監修
344ページ
発行日:2000年8月1日
定価:2800円
ISBN4-8443-5562-7
エムディエヌコーポレーション 発行


 もはや慣れっこになっているのだが、それでもなお「やっぱりアメリカは進んでいるなぁ」と改めて思わされることがある。本書もそんな1冊だ。

 本書は、全米でベストセラーとなった『Designing Web Usability』の邦訳で、著者のヤコブ・ニールセン(Jakob Nielsen)氏は、IBMワトソン研究センターのユーザー・インターフェイス研究所からSun Microsystems、Apple Computerと転籍しながら、長年にわたりユーザビリティに関する調査と研究を行ってきた人物だ。このニールセン氏が、WebページやWebサイトのユーザー・インターフェイスについて、長年の研究成果をまとめたのが本書である。Webページは、紙の印刷物と比較すると、圧倒的にクオリティの低いディスプレイを使って表示されるという欠点と、マウスのワン・クリックだけで、あるページから世界のどこかにある別のページへとジャンプできるハイパー・リンクを持つことができるという長所を併せ持っている。このように新しいメディアにおいて、使いやすいユーザー・インターフェイスを作りあげるにはどうすればよいか、あるいは逆に、使いやすくするために「やってはいけないこと」とは何なのかを明らかにするのが本書の目的である。

 周知のように、あたりを見回せば、すでに数え切れないほどのWebページが存在している。自由にインターフェイスを設計できる点はWebページの良いところだが、一方では、非常に分かりにくいページがあるのも事実だ。単に手間を惜しんだためならともかく、「余計な手間」をかけたために、かえって分かりにくくなっているページも少なくない。これなどは、使いやすいWebインターフェイスを誤解した結果といってよいだろう。

 本書は、ニールセン氏の豊富な経験を基に、具体的な事例を紹介しながら、そのページの優れた点、マネしてはいけない点などを指摘している。ここで最も大事なことは、本書で展開される評価の多くが、単にニールセン氏の主観だけによるものではなく、おそらくは莫大な時間とお金が必要だったであろう実際のユーザビリティ・テストの結果に基づいていることだ。ユーザビリティ・テストを開催したことがある経験者ならお分かりと思うが、適切な被験者を選択し、適切な実験を行うのは非常に骨が折れる作業だ。そうした長年の研究成果のエキスが1冊にまとめられたのが本書なのだ。

 惜しむらくは、原書がフルカラーであるのに対し、邦訳書ではモノクロになってしまったことだ(また邦訳書は版型も原書からひとまわり小さくなっており、事例の表示サイズもひとまわり小さくなっている)。印刷コストの関係と思われるが、内容が内容だけに残念でならない(代わりに邦訳書は、原書よりもかなり安くなってはいる)。フルカラーで事例を見たいという方は、併せて原書を購入するとよいだろう(原題『Designing Web Usability』 Jakob Nielsen著、New Riders発行、ISBN1-56205-810-X、45ドル)。インターネットの普及のおかげで、最近では洋書の購入もだいぶ簡単になった。

 いずれにせよ、読者がWebサイトの構築や、ページ設計に少しでも携わっているなら、それがどのような類のページ(サイト)であったとしても、本書は必ず役に立つはずだ。本書の教えに沿ってページ(サイト)をデザインすれば、大成功するかどうかはともかく、大失敗を避けることができるだろう。

 

「Book Review」

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