[事例研究]
株式会社マツモトキヨシ

1.FAXと電話に依存していた従来の情報伝達

デジタルアドバンテージ
2001/04/21

和知 義仁 氏
(株)マツモトキヨシ
電算部 課長
「現在から将来への多店舗展開に耐えうる情報システムを構築するのが目的」と語る。

 マツモトキヨシでは、新商品の通知や商品の販売などに関する業務連絡を、毎日本社から各店舗に向けて行っている。この情報配信は、従来はFAXの同報通信で行っていたが、1店舗あたり平均2〜3ページ程度の配信量でも、500店舗ともなると膨大な時間とコストがかかっていた。「多店舗化に比例して日々の通信料が高額になっていくのはもちろん、日によっては、開店時間までに全店分を送信完了できないケースがでてきました」(マツモトキヨシ 和知氏)。

 また、FAXでは間に合わない緊急性の高い情報は、店舗から店舗への連絡網に従って電話を利用していたが、「伝言ゲームのように最後まで確実に情報が伝わらないなど、指示系統の徹底が問題となり始めていました」(マツモトキヨシ 和知氏)

マツモトキヨシ池袋Part2店
関東一円に500店舗を展開するマツモトキヨシは、これまで、本社−店舗間の情報伝達手段をFAXと電話に頼っていた。しかし情報伝達コストや情報伝達の確かさなど、店舗数の急激な増加によって、情報伝達体制の抜本的な見直しを迫られていた。

 すでにマツモトキヨシでは、店舗での販売管理用として全社的なPOSシステムを導入しており、1日の販売データなどは各店舗から本部に通知されるようになっていた。しかし本社の経理部門では、必要に応じて、不定期に経理情報を店舗から吸い上げたいと考えていた。このようなニーズに応えられるようにPOSシステムを改良することも可能だが、莫大なコストがかかるし、何より将来をにらんだ柔軟性に欠ける。経理情報だけでなく、メッセージング・システムを活用することで、将来的には定型/非定型のさまざまな情報を本社−店舗間でタイムリーに交換できるようにし、両者のパイプを太くしたいという希望もあった。

本社内ではISPへのダイヤルアップによって電子メールを利用

 5年ほど前から、マツモトキヨシ本社では社内LANの構築に着手し、Windows NT 3.51を導入して、主に文書処理用などとしてMicrosoft Officeを使用していた。この社内LANはインターネットに常時接続していたわけではなく、電子メールは各クライアントからISP(Internet Service Provider)にダイヤルアップ接続し、マイクロソフトから無償公開されているOutlook Express(電子メール・ソフトウェア)を利用してメールのやり取りを行っていた。当初は試験的な色合いが濃く、一足飛びにインターネットに常時接続ということにはならなかったようだ。これらの社内クライアントPCは更新時期を迎えていたため、これを期に、全社的な情報システムの見直しに着手した。

トータル・コストや将来性、既存環境との親和性から、Exchange 2000 Serverを選択

本社風景
マツモトキヨシ本社では、すでに社内LANを構築しており、文書処理用などとしてMicrosoft Officeを使用していた。インターネット・メールも利用していたが、従来は各クライアントからISPにダイヤルアップ接続していた。

 全社的なメッセージング・システム導入における必須要件は、まずは、すでに本社で利用しているOutlook Expressでのメール交換と同等の処理が行えることだ。もちろん、情報システムを刷新するにあたっては、将来に向けたさまざまな新しい試みも視野に入れているが、これらは不確定要素が多いので、柔軟性のあるシステムを導入しておき、必要に応じて対応していけばよいと判断した。したがって基本的な要求は、電子メールをベースとした、柔軟性を備えた社内の情報系システムの新規導入ということになる。

 この条件で、各社にシステムの提案を要求したところ、6社からさまざま提案があり、主要なメッセージング・システムの提案が出そろった。これらの提案の中でも、最もシステム・コストが安価だったのは、Linuxをベースとするシステムだった。「メッセージング・システムの初期導入ということだけを考えれば、Linuxベースのシステムは極めて安価で、非常に魅力的なものでした」(マツモトキヨシ 和知氏)。

 しかしマツモトキヨシには、システム費用が安いだけでは決断できない事情があった。過酷な流通・小売競争を生き抜く同社にとって、業務の中心はやはり店舗開発や店舗運営にあり、POSシステムを含めた社内の情報システムの開発・運営に割り当てられる社内リソースは非常に少ない。このためシステムを導入しても、以後の管理・運用を自社要員で行うのは現実的ではなく、同社はシステムの管理・運用を含めて、できるだけ社外にアウトソースしたいと考えていた。初期導入費用だけでなく、管理・運用を含めたトータル・コストを検討する必要があったわけだ。

 最終的にマツモトキヨシは、Microsoft Exchange 2000 Server(以下Exchange 2000)をメッセージング・サーバとして使用し、サーバ・システムを社外のデータ・センタに配置して、これらの管理・運用を一括してアウトソーシングできるというCSKネットワークシステムズ(以下CSK Netと略)の提案を採用した。Exchange 2000を採用した最大の理由は、メール・クライアントとしてOutlook 2000を利用することで、従来から馴染みのあるOutlook ExpressやOfficeなどに関するスキルが最も活かしやすいと考えたからだ。さらにExchange 2000では、クライアントとしてInternet Explorerを使用するOutlook Web Access(OWA)が利用できる。これにより、すでにPOSの監視用などの用途で各店舗に配備されているのWindows NT Workstation 4.0をメール・クライアント用途として流用可能であり、その際でもハードウェアの強化や、専用ソフトウェアのインストールが不要といった利点もあった。後で述べるように、将来的には、本社・店舗とも共通でOfficeを積極活用しようという思惑もある。「これらを総合的に考えると、CSK Netの提案が最も優れていましたし、システムの導入から展開、運用、管理も含め、トータル・コスト的に最も優れていると判断しました」(マツモトキヨシ 和知氏)。


 INDEX
  [事例研究]株式会社マツモトキヨシ
  1.FAXと電話に依存していた従来の情報伝達
    2.主要サーバ群はすべてデータセンタにハウジング
    3.アウトソーシングの積極活用で素早い導入・移行を達成
 
事例研究

 



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