[Competition] エンタープライズ・バックアップ&リカバリ・ソフトウェア15製品 デジタルアドバンテージ 島田 広道2009/05/14 2009/05/28更新 |
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ハードディスクに代表されるハードウェアの故障、操作ミスによるファイルの誤削除、ソフトウェア・トラブルによるファイル・システム損傷などによって、データ損失やサービス停止という重大な事態を招く可能性は、どのコンピュータ・システムにもあることだ。
最近の例としては、NTTデータが提供しているブログ・サービスの「Doblog」で、2009年2月8日にデータベース・サーバのRAIDボリュームでハードディスク2台が同時に故障するなどのハードウェア障害により、記事データが損失してサービス停止に陥った件が挙げられる(概要はITmedia News「『Doblog』5月に終了 障害で3カ月投稿不能、一部データ復旧できず」参照)。
それでも、障害発生の前日未明までのバックアップ・データからほとんどの情報をリカバリできたという。もしバックアップ・データがなければ、あるいはリカバリに失敗したら、被害はより甚大になっていただろう。あらためてバックアップとリカバリの備えの重要性を示してくれた事例である。
データの安全性確保は重要な事柄だけにWindows OSにもバックアップ・ツールは標準装備されており、使ったことのある(使っている)読者も多いだろう。この標準バックアップ・ツールに対して、より高機能・多機能なバックアップ&リカバリ製品も数多く販売されている。そこで本稿では、市販のバックアップ&リカバリ製品を取り上げることにする。
ただ、バックアップ&リカバリ製品といっても対象とするOSやアプリケーションなどによってさまざまな製品があるため、今回は大企業においてWindows Serverを保護できる製品のうち、Windowsで実行可能かつWindowsから管理可能なソフトウェアを対象とした。クライアントしかバックアップできない製品は対象外としている。また、リモート・サイトにサーバの複製を作成して災害に備える機能(レプリケーション)を主眼とした製品も、いわゆるバックアップ&リカバリ製品とは指向が異なるので対象から外した。
こうしてピックアップした主要15製品だが、価格やサポートする機能のバラツキがあり、そのままでは横並び比較が難しい。そこでスペック比較表では、Windows以外のOSをサポートし、かつテープ・ライブラリ/オートローダにバックアップ可能な製品と、そのほかの製品という2つのグループに分類してみた。この2つの機能は、より大規模あるいはハイエンドな環境で必要とされることが多い。もちろん、ほかにも大規模・ハイエンド向けの機能はあるので、必ずしも後者が大規模/ハイエンドな環境で利用できないわけではない。比較のための目安の1つとして捉えていただきたい。
スペックにおける製品の注目ポイント
■バックアップ・メディア/デバイスのサポート
既存のバックアップ・メディア/デバイスから復旧する可能性がある場合、当然、新たに導入するバックアップ&リカバリ製品はそのメディア/デバイスをサポートしている必要がある。中でもテープ・ドライブやライブラリ(テープ・ドライブの集合体)、オートローダは種類が多く、またバックアップ&リカバリ製品への依存度も高い。詳細なサポート状況はスペック表の[関連リンク・備考]以下からサポート情報や技術情報を参照したり、各ベンダに問い合せたりして確認していただきたい。
注目すべきトレンドは、すべての製品がハードディスクへのバックアップをサポートする一方で、一部の製品はテープ・ドライブをサポートしていないことだ。以前は、バックアップ・デバイスというとテープ・ドライブが主流であったが、ハードディスクの大容量化に伴い、テープではサポートする容量やバックアップ速度の点から、すべてのボリュームを一度にバックアップできなくなっている。そのため、最近ではハードディスクへのバックアップが主流になってきている。
ハードディスクはテープに比べて高速だが、オフラインで長期間バックアップ・データを保持するような用途には向かない。例えば経理や契約に関する情報はテープへのバックアップが必須だろう。このようにテープ・ドライブのサポートの有無は用途を左右するので気を付けたい。
■オンライン・バックアップ
稼働中のシステム・ボリュームやサーバ・アプリケーションのデータをバックアップできると、バックアップのためにシステムやサービスを停止せずに済んだり、停止時間を短縮したりできる。Windows Server 2003以降にVSS(Volume Shadow Copyサービス)が実装されてから、特にシステム・ボリュームについては多くのバックアップ&リカバリ製品がこのオンライン・バックアップをサポートするようになった。
一方、サーバ・アプリケーションのデータについては、製品によって大きな差があるのが現状だ。アプリケーションごとに有償オプションを必要とする製品が多く、導入コストを左右するので注意が必要だ。
■仮想化のサポート
仮想化の普及に合わせて、バックアップ&リカバリ製品でも仮想化のサポートが始まっている。例えば物理マシンと同様に仮想マシン(VM)上のファイルをバックアップしたり、稼働中にVMそのもののイメージをバックアップしたりできる製品が増えている。もっとも現状では、仮想化ソフトウェアの種類(VMwareか、Hyper-Vか、など)によってサポート状況が大きく異なっている。
■リカバリ機能
以前のバックアップ&リカバリ製品では、ハードディスクの故障などでOSが失われてしまった場合、いったんサーバ・マシンにOSとリカバリ・ツールを順番にインストールして復旧を行う必要があった。しかし最近では、OSをインストールせずに専用ブート・ディスクでサーバ・マシンを起動し、リカバリ・ツールを実行して復旧する「ベアメタル・リカバリ」機能が実装されるようになった。速やかにシステムを復旧するには必須の機能だ(ベアメタルとは、むき出しのままの金属という意味で、OSも何もインストールしていない状態のコンピュータ・ハードウェア・システムのこと)。
また一部の製品では、バックアップ時のサーバ・マシンとは別のハードウェアのマシンに、バックアップからOSごと復旧できるようになっている。この機能がないと、起動ドライブ用のデバイス・ドライバが組み込めず、OSを起動できないなどのトラブルが生じるため、通常はOSの再インストールが必須だ。代替マシンのないサーバが災害で全損するような状況を想定するなら、有用な機能といえる。
■管理機能
特にバックアップ対象のWindows Serverマシンが分散している場合、バックアップ&リカバリ製品そのものにリモートからの管理機能がほしい。台数が多い場合は、複数台を同時に扱える集中管理機能が必須になるだろう。同様のことは、イベント通知やレポート送信、スクリプトによる制御機能についても当てはまる。
ベンダ | 製品名 | 提供形態 | リリース時期 | 詳細スペック表へ |
Acronis(ラネクシー) | Acronis True Image Echo Enterprise Server | リセラー / 直販 | 2008年5月 | |
ULTRABAC Software(アーク・システムマネジメント) | ULTRABAC UBDR Gold Stand-alone Server Edition V3.5 | リセラー | 2008年7月 | |
EMCジャパン | NetWorker 7.5 | リセラー / 直販 | 2009年4月 | |
シマンテック | Symantec Backup Exec 12.5 for Windows Servers | リセラー | 2008年10月 | |
日本アイ・ビー・エム | Tivoli Storage Manager 6.1 for Windows | リセラー / 直販 | 2009年3月 | |
日本CA | CA ARCserve Backup r12.5 for Windows | リセラー | 2009年5月 | |
日本ヒューレット・パッカード | HP Data Protector software 6.1 | リセラー / 直販 | 2009年3月 | |
バックボーン・ソフトウエア | NetVault Backup 8.2 | リセラー | 2008年10月 | |
Acronis(ラネクシー) | Acronis True Image Echo Server for Windows | リセラー / 直販 | 2008年7月 | |
シマンテック | Symantec Backup Exec System Recovery 8.5 Server Edition | リセラー | 2008年10月 | |
StorageCraft(アズジェント) | ShadowProtect 3.3 Server Edition | リセラー | 2008年11月 | |
ネットジャパン | ActiveImage Protector 2.5 Server Edition | リセラー | 2009年3月 | |
パラゴンソフトウェア | Paragon Drive Backup 9.0 Server | リセラー | 2008年10月 | |
マイクロソフト | System Center Data Protection Manager 2007 | リセラー | 2007年12月 | |
ライフボート | LB イメージ バックアップ9 Server | リセラー / 直販 | 2009年4月 | |
比較対象の製品一覧 |
INDEX | ||
Competiton | ||
エンタープライズ・バックアップ&リカバリ・ソフトウェア15製品 | ||
1.スペック表の各項目について | ||
2.スペック表: ラネクシー Acronis True Image Echo Enterprise Server | ||
3.スペック表: アーク・システムマネジメント ULTRABAC UBDR Gold Stand-alone Server Edition V3.5 | ||
4.スペック表: EMCジャパン NetWorker 7.5 | ||
5.スペック表: シマンテック Backup Exec 12.5 for Windows Servers | ||
6.スペック表: 日本アイ・ビー・エム Tivoli Storage Manager 6.1 for Windows | ||
7.スペック表: 日本CA CA ARCserve Backup r12.5 for Windows | ||
8.スペック表: 日本ヒューレット・パッカード HP Data Protector software 6.1 | ||
9.スペック表: バックボーン・ソフトウエア NetVault Backup 8.2 | ||
10.スペック表: ラネクシー Acronis True Image Echo Server for Windows | ||
11.スペック表: シマンテック Backup Exec System Recovery 8.5 Server Edition | ||
12.スペック表: アズジェント ShadowProtect 3.3 Server Edition | ||
13.スペック表: ネットジャパン ActiveImage Protector 2.5 Server Edition | ||
14.スペック表: パラゴンソフトウェア Paragon Drive Backup 9.0 Server | ||
15.スペック表: マイクロソフト System Center Data Protection Manager 2007 | ||
16.スペック表: ライフボート LB イメージ バックアップ9 Server | ||
「Competition」 |
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