特集
Windows Server 2003完全ガイド

システムの管理と構成を強力に支援する
[サーバーの管理]ツール

3.一新された[サーバーの管理]ツール

井上孝司
2002/11/01

 Windows .NET Serverを起動して、Administratorアカウントでログオンすると、真っ先に「サーバーの管理」ツールが表示される([スタート]メニューの[すべてのプログラム]−[管理ツール]−[サーバーの管理]でも起動できる)。これはWindows 2000 Serverも同様だったが、画面の内容が大幅に変化している点に、すぐに気付かれるだろう。

「サーバーの管理」ツールの初期画面
左側に大きく表示されているのは、「役割」の追加と管理の選択メニュー。前者は新しく「役割」を追加する際に使用するもので、後者は追加済みの「役割」の設定を行う際に使用する。セットアップ直後には何の「役割」も追加されていないので、[サーバーの役割を管理]の下側の選択項目は空白になっている。
  「役割」を追加する際には、ここをクリックする
  「役割」を追加すると、ここに項目が表示されるようになる(初期状態では空白)
  関連するタスクやツールに対するリンクが、右側にまとめて表示されている

[サーバーの管理]ツールでサーバの役割を設定する

 ここでの[役割を追加および削除する]をクリックすると、チェックリストの表示に続いて、サーバの動作状況がチェックされる。例えば、ケーブルが接続されていないLANアダプタが存在した場合、警告メッセージが表示されるようになっている。そして、続いて次のような[構成オプション]という画面が表示される。

サーバーの構成ウィザード
サーバ・マシンに「役割」を追加するために使われるウィザード。ウィザードの指示に従ってサーバの「役割」を選択することにより、必要なコンポーネントのインストールやサービスの追加、初期設定などを自動的に済ませることができる。従来のWindows 2000の「サーバーの構成」ツールよりも、親切にネットワークやシステムの設定をガイドしてくれる。ウィザードを起動すると2種類の選択肢が表示されるが、すでにActive Directoryドメインが存在する場合や、DNSサーバ、DHCPサーバが稼働している場合は、[カスタム構成]を選択し、必要な役割だけを組み込む必要がある。それに対して新規にネットワーク構築を行う場合は、[最初のサーバーの標準構成]を選択すると、必要な役割が自動的にまとめてインストールされる。
  新規にActive Directoryドメインを構築し、さらにDNSサーバとDHCPサーバを立ち上げる場合は、こちらを選択する。
  必要な機能を選択して個別に組み込む場合は、こちらを選択する。

 まだLAN上にActive Directoryドメインが存在せず、作業中のWindows .NET Serverを使用して新たにActive Directoryドメインを構築する場合は、ここで[最初のサーバーの標準構成]を選択する。すると、ウィザード形式でActive Directoryドメインの新規構築と、DNSサーバ、DHCPサーバなどのインストールがすべて同時に行える。しかし、すでにActive Directoryドメインが存在する場合や、ドメイン以外の「役割」を追加する場合は、[カスタム構成]を選択し、必要な役割だけを選択してインストールすればよい。また、新規にネットワークを構築する場合でも、複数のサーバで機能を分担させたい場合は、やはり[カスタム構成]を選択する必要がある。[最初のサーバーの標準構成]では、1台のサーバにすべての機能が集中して組み込まれてしまうからだ。

 このうち[カスタム構成]を選択して[次へ]をクリックすると、以下の画面が表示される。

サーバの役割を個別に指定する場合のウィザード画面
「サーバーの構成ウィザード」で[カスタム構成]を選択すると、動作中のWindows .NET Serverに追加する「役割」を個別に選択してインストールすることができる。また、[コントロールパネル]の[プログラムの追加と削除]を使用すると、さらに別の「役割」を追加できる。
  ここには、導入可能な「役割」と、それぞれのステータスが表示される。すでに組み込まれている「役割」については、「構成済み」の項目が「はい」と表示される。
  追加したい「役割」をクリックして選択すると、[次へ]がグレー表示でなくなる。

 それでは、「サーバーの構成」ツールで何を選択すると、実際にはどのような作業が行われるのか、その概要を説明していこう。

[最初のサーバーの標準構成]でサーバを設定する

 [最初のサーバーの標準構成]を選択した場合、以下のような作業が自動的に実行される。

  • Active DirectoryのインストールとActive Directoryドメインの新規作成
  • DNSサーバのインストール
  • DHCPサーバのインストール
  • 「ルーティングとリモートアクセス(RRAS)」のインストール
 最後のRRASは、LANアダプタが複数存在する場合のみ実行される項目で、LANアダプタが1枚しかない場合はインストールされない。

 この[最初のサーバーの標準構成]を選択した場合、実際のインストール作業に移る前に、ウィザード形式でさらに以下の項目を指定する必要がある。

  • Active DirectoryドメインのFQDNのDNS名
  • Active DirectoryドメインのNetBIOS名(DNS名から自動的に生成されるが、変更することもできる)
  • DNSフォワーダの使用/不使用と、フォワーダを使用する際の転送先IPアドレス
  • インターネット側に接続されたNICの選択と、簡易ファイアウォール設定の有無(RRAS使用時のみ)
 DNSのフォワーダとは、ローカルのDNSサーバでは解決できないFQDNに対して、その名前解決を委任されるDNSサーバのこと。一般的には、ローカルのDNSサーバに登録されていないDNSのゾーンに対しては、フォワーダに問い合わせるか(フォワードされた先のDNSサーバがすべての名前解決を引き受ける)、ルートDNSサーバから順にたどって、(自力で)再帰的に解決する。

 こうして設定されたWindows .NET Serverは、Active Directoryのドメイン・コントローラ、DHCPサーバ、DNSサーバの機能を兼ねることになる。その際の注意事項としては、以下の点が挙げられる。

■DNSサーバの構成
 DNSは「Active Directory統合」モードで動作する。逆引き参照ゾーン(IPアドレスからFQDN名を求めるためのゾーン定義のこと)は作成されないので、PTRレコード(逆引きレコード)を登録するためには、後からDNS管理ツールを起動して、手作業で逆引き参照ゾーンを追加する必要がある。

■LAN側ネットワークの接続設定
 Windows .NET Serverをセットアップする際の初期値では、従来と同様、DHCPによる自動構成でIPアドレスが指定されるようになっている。その状態で「サーバーの構成ウィザード」を使用してDHCPサーバを自動的にインストールした場合、TCP/IPのプロパティが自動的に変更され、サーバ自身のIPアドレスは「192.168.0.1」、サブネットマスクは「255.255.255.0」、DNSサーバのIPアドレスは「192.168.0.1」に指定される。そのため、すでに運用されているLAN上でIPアドレス「192.168.0.1」が使用されている場合、Windows .NET Serverをセットアップする際には、ほかと重複しない固定IPアドレスを手作業で指定しておかなければならない。

■DHCPサーバの構成と稼働の可否
 .NET Serverをセットアップしたコンピュータが接続されたLANで、すでに別のDHCPサーバが稼働している場合、DHCPサーバ機能はインストールされない。この判別は自動的に行われる。

 LAN上ににDHCPサーバが存在しない場合、DHCPサーバがインストールされた上で、サービスが有効化されるが、IPアドレスのリース範囲は「192.168.0.10〜192.168.0.254」、リース期間は10日+3時間という設定になる。

「192.168.0.0/24」以外のネットワーク・アドレスでは?
プライベートIPアドレスを使用してLANを構築する際に、最も一般的に使用されているネットワーク・アドレスは「192.168.0.0/24(192.168.0.0〜192.168.0.255)」だろう。だが「サーバーの構成」ツールでDNSサーバとDHCPサーバを自動構成した場合、これ以外のIPアドレスが先に手作業でLANアダプタに設定されていると、それに合わせて自動構成される内容も変化する。

 例えば、Windows .NET Serverをセットアップする際に、LANアダプタに対して固定IPアドレス「192.168.10.2」、サブネットマスク「255.255.255.0」を設定しておくと、DHCPサーバのアドレス・プール(DHCPのクライアントにリースされるIPアドレスの集合)は「192.168.10.10〜192.168.10.254」となる。

 ただし、すべてのケースに関して検証したわけではないので、あまり妙な設定をしていると、トラブルの元になる可能性も考えられる。もっとも[最初のサーバーの標準構成]を選択するのは、新規にTCP/IPネットワークを構築する場合が多いと考えられるので、それほど心配することではないかもしれない。
 

 INDEX
  [特集]Windows Server 2003完全ガイド
  システムの管理と構成を容易にする[サーバーの管理]ツール
     1.デフォルト設定が見直されたWindows .NET Server
     2.Windows .NET Serverのサーバ・コンポーネントとサーバ・サービス
   3.一新された[サーバーの管理]ツール
     4.サーバの構成1(ファイル/プリント・サービス)
     5.サーバの構成2(インターネット・サービス)
     6.サーバの構成3(イントラネット・サービス)
 
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