特集
Windows Server 2003完全ガイド 2002/10/25 |
|
注意:本コーナーは、当初「Windows .NET Server 2003完全ガイド」として記事公開を開始 しましたが、その後マイクロソフトは、製品名称から「.NET」を取り、「Windows Server 2003」と改めました。この名称変更以降の記事については「Windows Server 2003」の表記で統一していますが、それ以前の記事については、基本的に公開時点での「Windows .NET Server 2003」をそのまま使っています。ご了承ください。 |
Windows .NET Server 2003は、Windows 2000 Serverの後継となるサーバ製品である。このWindows .NET Server 2003のRC1(製品直前バージョン)が開発者やマスコミ関係者などに公開され、テスト・評価作業が進められている。
この「Windows .NET Server 2003完全ガイド」は、2003年の登場が予定されるこの新しいサーバOSについて、実際に開発途中バージョンを評価しながら、新機能や改良された機能などについて、ポイントごとに解説しようとするものだ。
Windows .NET Server 2003 |
画面はWindows .NET Server 2003 Enterprise Edition日本語版RC1。 |
第1回目の今回は、Windows .NET Server 2003の機能概要一覧をご紹介する。以後、Windows .NET Server 2003の新機能や機能改良点に注目し、それらをトピックごとに詳しく解説していく予定である。
Windows .NET Serverの製品名
Windows .NET Serverの日本語版RC1は2002年8月初旬に公開された。当初マイクロソフトは、年号を入れずに単に「Windows .NET Server」と呼んでいたが、その後、年号を入れた製品名に変更したようだ。具体的には、各製品を次のように呼んでいる。以後本稿でもこの呼称に従うが、特定のエディションだけに当てはまるもの以外は、単に「Windows .NET Server 2003」と総称することにする。
ベータ3時点での呼称 | RC1での呼称 |
Windows .NET Web Server | Windows .NET Server 2003 Web Edition |
Windows .NET Standard Server | Windows .NET Server 2003 Standard Edition |
Windows .NET Enterprise Server | Windows .NET Server 2003 Enterprise Edition |
Windows .NET Datacenter Server | Windows .NET Server 2003 Datacenter Edition |
従来から改められた各製品の呼称 |
各エディションの主要なターゲットを以下にまとめておく。
パッケージの種類 | 製品の主なターゲット |
Web Edition | 単機能のWebサーバとして利用することを目的とする機能制限版。このためActive Directoryサーバ機能など、LANのサーバとして必要となる機能は提供されない。ASP.NETを利用したWebアプリケーション/Webサーバ・プラットフォームなどとして利用する。パッケージ販売はなく、パートナー経由の販売のみとなる予定 |
Standard Edition | SOHOや特定部門など、ワークグループ環境や小規模なビジネス・インフラを提供することを目的とするエディション。Active Directoryを始めとするネットワーク管理機能は提供されるが、クラスタリング・サポートやSANストレージ・サポートなど、中規模〜大規模ネットワークが対象となる機能は提供されない |
Enterprise Edition | 中規模〜大規模なエンタープライズ環境をターゲットとするエディション。8プロセッサまでのマルチプロセッサ・システム・サポート、8ノード・クラスタリングなど、エンタープライズ環境におけるミッション・クリティカルなシステム(基幹業務アプリケーション・システムなど)を安全かつ効率的に構築、運用するための機能が提供される |
Datacenter Edition | エンタープライズ環境における大規模なデータベース・システム、リアルタイム・トランザクション・システム、EAIによるサーバ統合など、最高レベルの信頼性や可用性、拡張性などが求められるシステム向けのエディション |
マイクロソフトから見たWindows .NET Server 2003
Windows .NET Server 2003とは、一言でいえばどのようなOSで、いまと何が変わるのか? 手っ取り早くこの答えを知りたいと思っている人は少なくないだろう。多機能なサーバOSの特徴や目的を一言で表すのは容易でないが、ここでそのヒントとして、マイクロソフトの幹部が説明している「Windows .NET Server 2003のトップ12機能」をご紹介しよう。
- セキュリティ
- 安全なネットワーク・アクセス
- Active Directory
- 信頼性と可用性
- パフォーマンスとスケーラビリティ
- マネージメント
- ストレージ・マネージメント
- ボリューム・シャドウ・コピーとシャドウ・コピー・リストア
- ターミナル・サービス
- Windows Mediaサービス
- .NET Framework統合
- Internet Information Services 6.0(IIS 6.0)
これは、2002年8月にマイクロソフト主催で開催されたWindows .NET Server 2003の記者向け説明会「Windows .NET Server Reviewer's Workshop」において、マイクロソフトWindowsサーバ製品部 部長の高沢冬樹氏が語ったリストである。実はこれは、米MicrosoftのWindows .NET Server開発の責任者であるBill Veghte氏が語ったリストと一致している(ただし、Veghte氏のリストでは3番目にあった「セキュリティ」が、高沢氏のリストでは1番目に移動された)。
これがWindows .NET Server 2003の本質を表しているかどうかはともかく、開発しているマイクロソフト自身が考えるトップ12機能がこれである。ざっとリストを見ると、「Active Directory」「ボリューム・シャドウ・コピー(オープン中のファイルもバックアップ可能にする機能)」「.NET Framework」「IIS 6.0」などといったマイクロソフト独自の機能もあるが、「セキュリティ」「安全なネットワーク・アクセス」「信頼性と可用性」といった抽象的な文言が数多く並んでいる。
ここから分かることは、Windows .NET Server 2003は、独自の突出した新機能を華々しく組み込んだ新OSというよりも、安心して使えるサーバOSとして、一見しただけでは見えにくい機能追加や機能改善を幅広く施したものだろうということだ。本稿の後半には、Windows .NET Server 2003の新機能や改良された機能一覧を掲載している。具体的にどのような点が変わっているのか、これをざっと見渡せば、その方向性を理解できるだろう。
3つの目的
ケースによってさまざまな見方があるだろうが、筆者はWindows .NET Server 2003の目的を次の3つととらえている。
■安心してミッション・クリティカルなシステムにして使えるベースOS
先に触れた「Reviewer's Workshop」において、Windowsサーバ製品部 シニア・プロダクト・マネージャの吉川顕太郎氏は、「現状のWindows
2000 Serverも、ミッション・クリティカルなシステムに耐えるだけの堅牢性と可用性を備えているが、顧客はいまだに疑念を持っている」と述べた。確かに、自分の身の回りで見聞きする限りでも、IAサーバは普及しているとはいえ、重要度の高いサーバにWindows
OSを使うことには拒否反応を示す管理者が少なくない。これは、クライアント用OSから、ボトムアップ的にサーバ領域に到達したWindowsが背負わざるを得ない十字架なのかもしれない。
しかしWindowsが次に開拓しなければならない領域の1つは、従来はメインフレームやUNIXワークステーションなどが担ってきた、企業の基幹業務などのミッション・クリティカルなシステムである。Windowsが背負っている、こうした負の先入観を払拭して、ミッション・クリティカル・システムにコストパフォーマンスの高いIAサーバ+Windowsを導入してもらうためのベースOSとして、Windows .NET Server 2003は機能しなければならない。このためWindows .NET Server 2003では、サーバ・クラスタリング機能の強化やセキュリティ機能の強化、ストレージ管理機能の強化などが図られている。
■システム管理、システム運用のTCOを削減する
GUIで操作できるので便利ではあるが、だからといってWindowsサーバにすればTCO(Total
Cost of Ownership)を削減できるかといえば、答えはノーである。セオリーどおりに設定して、そのまま使い続けるならよいが、イレギュラーな処理がひとたび起こると、途端にGUIなどが使いものにならなくなった、という経験はだれにでもあるだろう(そして、たいていはコマンド・プロンプトが活躍することになる)。
こうした問題を解消し、Windowsシステムの導入や設定、管理にかかる手間を低減するために、Windows .NET Serverでは、システムの柔軟性向上に加え、さまざまな支援機能、支援ツールが提供されている。
例えばWindows 2000では、ディレクトリ・サービスとしてActive Directoryが新たに組み込まれたが、いったんドメインを構築すると簡単に構成変更ができないなど、柔軟な運用は困難だった。これに対しWindows .NET Server 2003では、後からドメイン名を変更できるようになるなど、Active Directoryの柔軟性が大幅に改善されている。これ以外にも、サーバのコンポーネント構成や管理をウィザードで手軽に行えるようにする「サーバの管理」ツールが追加されたり、管理作業をバッチ型で処理する目的などのためにコマンドライン・ツールが大幅に強化されたりしている。
■来るべき.NET時代のインフラストラクチャを整備する
マイクロソフトは、.NET Frameworkという新しいアプリケーション・フレームワークを開発し、その開発環境(Visual Studio .NET)を発表している。Windows
.NET Server 2003には標準で.NET Frameworkが組み込まれており、VS.NETで開発した.NET対応アプリケーションを追加ソフトウェアなしで実行することができる。またWindows
.NET Server 2003には、企業内でUDDIサーバ(Webサービスのディレクトリ・サービス)を構築するための機能も標準で組み込まれている。
特にWindows .NET Server 2003では、ASP.NETを利用したWebアプリケーションやWebサービスを実行するためのアプリケーション・インフラとして、従来版から大幅に作り直した新バージョンのIIS 6.0が同梱されている。このIIS 6.0では、Webアプリケーションなどのプロセス(ワーカー・プロセス)の独立性を向上させ、いずれかのプロセスが不具合を起こしても、ほかのプロセスは影響を受けないように改良された。また、問題が発生したプロセスをいったん停止して自動的に再起動できるようにするなど、WebサーバとしてのIISの堅牢性が大幅に強化されている。Code RedやNimdaなどの一件により、何かと槍玉に上げられることが多かったIISの汚名を返上して、.NET対応アプリケーションのインフラとして機能すること。これはWindows .NET Server 2003の大きなミッションといってよいだろう。
Windows .NET Server 2003の必要環境
ベータ3の時点と変わっていないが、Windows .NET Server 2003 RC1時点での、各エディションと必要システム構成についてまとめておこう。このうちStandard EditionとEnterprise Editionについては、日本語版RC1が提供されているので、インストールCDのREADMEファイルを調査した。Web Editionについては日本語版が存在しないので、英語版RC1のREADMEを使用した。またDatacenter Editionについては、マイクロソフトが公開しているドキュメントから情報を転載している。
必要条件 | Web Edition*1 | Standard Edition | Enterprise Edition | Datacenter Edition*2 |
対応プロセッサ | Intel Pentium/Celeronファミリ、AMD K6/Athlon/Duronファミリ、またはこれらの互換製品 | Intel Pentium/Celeronファミリ、AMD K6/Athlon/Duronファミリ、またはこれらの互換製品 | Intel Pentium/Celeronファミリ、Itanium、AMD K6/Athlon/Duronファミリ、またはこれらの互換製品 | − |
最低CPU速度 | 133MHz | 133MHz | 133MHz (x86) / 733MHz (Itanium) | 400MHz (x86) / 733MHz (Itanium) |
推奨CPU速度 | 550MHz | 550MHz | 550MHz(x86) | 733MHz |
最少RAM容量 | 128Mbytes | 128Mbytes | 128Mbytes(x86)/1Gbytes(Itanium) | 512Mbytes |
推奨最低RAM容量 | 256Mbytes | 256Mbytes | 256Mbytes(x86) | 1Gbytes |
最大RAM容量 | 2Gbytes | 4Gbytes | 32Gbytes (x86) / 64Gbytes (Itanium) | 64Gbytes (x86) / 128Gbytes (Itanium) |
マルチプロセッサCPU数 | 1もしくは2CPU | 1もしくは2CPU | 1CPU〜8CPU | 8CPU〜32CPU |
最低ディスク必要量 | 1.25〜2Gbytes | 1.25〜2Gbytes | 1.25〜2Gbytes (x86) / 3〜4Gbytes (Itanium) | 1.5Gbytes (x86) / 2.0Gbytes (Itanium) |
グラフィックス | VGA以上(800×600ドット以上を推奨) | VGA以上(800×600ドット以上を推奨) | VGA以上(800×600ドット以上を推奨) | − |
クラスタ・ノード | なし | なし | 8台まで | 8台まで |
Windows .NET Server 2003各製品の必要システム構成 | ||||
各RC1 CD-ROMに含まれるREADMEファイルにて確認した各製品の必要システム構成。 | ||||
*1:Web Editionについては日本語版RC1未提供につき、英語版RC1にて確認。 *2:Datacenter Editionについては、マイクロソフトが公開しているレビューアーズ・ガイドにて確認 |
Windowsサーバ新時代はくるのか?
Windows .NET Server 2003の最終的な製品の発売時期は不明である。しかしさまざまな情報を総合すると、2003年初頭から中旬ごろとする情報が有力なようだ。
なお、Windows .NET Server 2003の技術情報については、マイクロソフトが大量のホワイト・ペーパーを発行しているので参考にされたい。
以下本稿では、Windows .NET Serverの新機能や機能改良点を一覧にし、ごく簡単な説明を加える。これまでに、Windows .NET Server 2003は、安心して使えるサーバOSとして機能するために、多数の新機能追加、機能改良がなされていると述べた。以下の表は、それらを具体的に示す材料となるだろう。
また冒頭で述べたとおり、この「Windows .NET Server 2003完全ガイド」では、これらの新機能/機能改良点の中から重要なものに注目して、さらに掘り下げて解説を行っていく予定である。Windows .NET Server 2003によって、Windowsサーバの評価はどう変わるのか? Windowsサーバ新時代はやってくるのか? 皆さんとともにその要点を検証していきたいと思う。
INDEX | ||
[特集]Windows Server 2003完全ガイド | ||
1.新機能/改良機能一覧(1) | ||
2.新機能/改良機能一覧(2) | ||
3.新機能/改良機能一覧(3) | ||
4.新機能/改良機能一覧(4) | ||
Windows Server 2003完全ガイド |
- Azure Web Appsの中を「コンソール」や「シェル」でのぞいてみる (2017/7/27)
AzureのWeb Appsはどのような仕組みで動いているのか、オンプレミスのWindows OSと何が違うのか、などをちょっと探訪してみよう - Azure Storage ExplorerでStorageを手軽に操作する (2017/7/24)
エクスプローラのような感覚でAzure Storageにアクセスできる無償ツール「Azure Storage Explorer」。いざというときに使えるよう、事前にセットアップしておこう - Win 10でキーボード配列が誤認識された場合の対処 (2017/7/21)
キーボード配列が異なる言語に誤認識された場合の対処方法を紹介。英語キーボードが日本語配列として認識された場合などは、正しいキー配列に設定し直そう - Azure Web AppsでWordPressをインストールしてみる (2017/7/20)
これまでのIaaSに続き、Azureの大きな特徴といえるPaaSサービス、Azure App Serviceを試してみた! まずはWordPressをインストールしてみる
|
|