Insider's Eye「Longhorn」の出荷は2006年?
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Michael Cherry |
本記事は、(株)メディアセレクトが発行する月刊誌「Directions on Microsoft日本語版」 2002年11月15日号 p.15の同名の記事を許可を得て転載したものです。同誌に関する詳しい情報は、本記事の最後に掲載しています。 |
MicrosoftはまだWindows .NET Serverすら出荷していないが、同社の幹部はコードネーム「Longhorn」と呼ばれるWindowsの将来バージョンのリリースについて、さまざまな発言を繰り返している。
Longhornの機能はまだ完全には決まっていないが、同バージョンではファイルシステムやグラフィックスシステムなど、Windowsの主要部分の再設計が予定されている。そのため、新バージョンのリリースに合わせて導入計画を立てようという顧客やパートナーは、Longhornがどのようなものになるのか、そしてリリースはいつになるのかについて、注意深く観察しておく必要がある。また、暫定バージョンのWindowsが、2004年末か2005年の早い時期にリリースされる可能性も考えられる。
Longhornの重要性
Microsoftのチーフ・ソフトウェア・アーキテクト、Bill Gates氏は2002年7月、アナリスト向けの年次説明会において次のように語っている。
「Longhornでは、データの格納、表示、操作方法がアプリケーション、Webサービス、OSレベルで緊密に統合される。LonghornはIT関連の企業ユーザーにとって、過去最大の飛躍的前進となるはずだ」
Microsoft幹部の説明によると、Longhornでは以下の項目との関連で、Windowsのコードベースに大幅な変更や追加が施されるもようだ。
- ファイルシステムは、SQL Serverチームが開発中のYukon(=次期SQL Serverの開発コードネーム)データベース・エンジンをベースとするものに刷新される。
- 「Palladium」というコードネームで呼ばれる新しいソフトをベースにセキュリティが改善される(新しいハードも必要となる。詳しくは、Directions on Microsoft日本語版2002年8月15日号の「ベールを脱いだPalladium計画――信頼できるコンピューティングの基盤を提供へ」および「Insider's Eye―コンピュータの信頼性を根底から変えるPalladium(パラジウム)とは何か?」を参照)。
- グラフィックス・サブシステムの改善。3Dグラフィックスを活用する新システムにより、テキストとグラフィックスの表示が大幅に改善される。
さらに、MicrosoftのPlatforms Group副社長のAllchin氏は2002年9月、Windows .NET Serverの開発者会議において、「Longhornの目標はWindowsのクライアント/サーバ版のリリースを再び同期化させることだ」と語っている。
現行のクライアント/サーバであるWindows XPとWindows .NET Serverは、開発が同時にスタートし、当初は「Whistler」(コードネーム)として単体でリリースされる予定だった。結局、MicrosoftはWindows XPを先に出荷し、Windows 9xとWindows Meを撤退させ、その間にサーバ版の開発を続行した。
必然的に、Longhornの開発スケジュールや機能セットは、ソフトおよびハードベンダーに大きな影響を及ぼす。例えば、バックアップソフトを開発している企業であれば、Yukonベースのファイルシステムをサポートする新バージョンを計画する必要がある。チップ、BIOS、オーディオ・メーカーであれば、自社の設計をPalladiumに対応させる必要がある。
また企業ユーザーにとっても、Longhornは自社システムのライフサイクルにおける重要なポイントだ。例えば、顧客はLonghornの新機能がどの程度、新しいハードに依存するのかを知る必要がある。さらに重要なのは、Software Assuranceなどの年間ライセンス・プランを検討している顧客にとって、Longhornがそうしたプランの期限より先にリリースされるかどうかが重要な問題となる(Microsoftの製品のライフサイクルに関する最新の情報は、Directions on Microsoft日本語版 2002年11月15日号 p.47「サポートライフサイクルの新しい指針」内の図「ビジネスおよび開発ソフトのサポートライフサイクル」参照)。
スケジュールは不確実
Longhornのリリースについて、Allchin氏とBusiness Solutions Group副社長のDoug Burgum氏は、早ければ2005年ごろだという。しかし、この見通しは甘すぎるのではないだろうか。Windows部門はこれまで、Windows .NET Serverのようなメジャー・アップグレードの設計、開発、テストに40カ月を要している(次の図「Windowsの開発スケジュール」参照)。
Windowsの開発スケジュール |
これまでMicrosoftはWindowsのメジャー・リリースの設計、開発、テストに約40カ月を費やしている。この図は、Windowsのいくつかのバージョンの開発期間を示したものだ。開発期間とは、あるバージョンのRTM(製造工程へのリリース)から次のRTMまでの期間を指す。例えば、Windows 2000の開発は1995年遅くに始まり、製品は42カ月後に出荷された。その時点がWindows XPと.NET Serverのサイクルの開始点となる。 2002年末にリリースが予定されるWindows .NET Serverの開発は、37カ月かかったことになる(編注:この予定はさらに遅れ、現在では2003年4月以降になるとされている。「Insider's Eye―Windows .NET Server 2003の発売は2003年4月」参照)。Windows XPは当初、Windows .NET Serverとともにリリースされる予定だったが、22カ月の開発作業の後、Microsoftはクライアント版のみを先にリリースした。 サービスパックのリリース予測はさらに難しい。なぜなら、そのタイミングはMicrosoftが修正すべきと判断した製品やセキュリティ関連のバグの数によって決まるからだ。ただし、Windowsの各バージョンに関しては、少なくとも1年に1回はサービスパックが提供されることになりそうだ。こうしたサービスパックの存在も、Windowsのメジャー・リリースの開発時間に影響を及ぼす。また、セキュリティを重視した開発作業の実現を目指して、Microsoftが2002年初頭に2カ月かけて実施したコードレビューのように、再びコーディング作業が停止する事態が起こらないとも限らない。 |
Longhornの予備的な開発作業はすでに始まっているようだ。しかし、Windows .NET Serverの開発、テスト作業(現在、リリース候補から最終出荷コードへの移行段階にある)に、依然として相当のリソースが当てられていることからすれば、その影響はLonghornの実際の設計、開発、テストサイクルにも及んでいると考えるのが当然だろう。
また、エンジニアリングチームは3つのバージョンのWindowsに関して、サービスパックを構築、テストする必要がある。さらに、ファイルシステムを含むLonghornの主要コンポーネントの多くは、SQL Serverチームなどの別グループの作業に依存している。こうした事情がリリーススケジュールの予測を一層困難にしているのだ。
仮に、Windows .NET Serverのリリース予定時期(2003年初め)に40カ月をプラスすると、Windowsの次のメジャー・アップグレードは2006年初頭になると予想される。
Longhornやそのスケジュールに関する議論は、大々的に宣伝されながら、結局、リリースされずに終わった「Cairo」というコードネームのWindows NTバージョンを思い起こさせる。Cairoに予定されていたActive Directoryなどの技術は、その後、Windows 2000やWindows XP、Windows .NET Serverなどに組み込まれたが、Microsoftは結局、Cairo向けに計画していた機能をすべて搭載するフルバージョンのOSはリリースしなかった。
暫定版の可能性も?
Cairoの歴史は、Microsoftによる代替プランの可能性を示唆している。その代替プランとは、2006年以前にWindowsの暫定バージョンとして、Longhornの一部機能をリリースするというものだ。
暫定バージョンをリリースすれば、Windowsの着実な収益性を維持すると同時に、Windows XPのアップグレード権を購入した顧客に対しても、期限切れの前にアップデート版を提供できる。また、Linuxやそれに付随するGNOMEやKDEといったグラフィックス環境が急速に新機能を拡充していることを考えれば、そうした競合システムに足並みを揃えるという意味でも暫定リリースは有効なはずだ。
ただし、暫定リリースとはいえ、開発にはそれなりの時間を要する。Windows 2000とWindows XPのリリース時期からすると、暫定リリースの準備には20カ月ほどかかることが予想できる。そうなると、暫定版のリリースは2004年遅くか2005年早くということになる。
ロードマップ情報はPDCで
Microsoftが完全なロードマップを発表するまで、顧客やパートナーはProfessional Developers' Conference(PDC)でWindowsのロードマップ情報が提供されるのを待つしかない。このカンファレンスは年次ではなく、Microsoftが戦略的な技術に関して、顧客やパートナーに知らせるべき何か重要な情報がある場合にのみ開催される。Longhorn向けにそうしたカンファレンスが開催されるまで、Microsoftの顧客やパートナーは、Longhornの機能セットやリリーススケジュールに依存する大規模な動きは避けた方が賢明かもしれない。
Directions on Microsoft日本語版 本記事は、(株)メディアセレクトが発行するマイクロソフト技術戦略情報誌「Directions on Microsoft日本語版」から、同社の許可を得て内容を転載したものです。Directions on Microsoftは、同社のWebサイトより定期購読の申込みができます。 |
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