Insider's Eye見えてきたWindowsシステム管理の将来(前編)(1)―― 管理製品の新ブランド戦略Systems Centerを徹底解析 ―― Peter Pawlak2005/07/07 Copyright (C) 2005, Redmond Communications Inc. and Mediaselect Inc. |
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本記事は、(株)メディアセレクトが発行する月刊誌『Directions on Microsoft日本語版』 2005年7月号 p.14の「Microsoft管理製品の新ブランド戦略Systems Centerを徹底解析」を、許可を得て転載したものです。同誌に関する詳しい情報は、本記事の最後に掲載しています。 |
UNIXやLinuxベンダとの差別化を図り、主力製品のさらなる拡販を狙うMicrosoftは、Windows Server Systemへの管理機能の統合化を加速しつつある。ところが同社は、アプリケーションを含むすべてのシステム・コンポーネントに管理機能を組み込むという長期的プラン、Dynamic Systems Initiative(DSI)が掲げるビジョンに向け、現行の製品および技術を今後どう展開していくのか、いまだ明確に説明することができずに苦しんでいる。そうした中、2005年に数多く登場する管理製品は、どのような役割や機能を持っているのか。Microsoftが取り組む管理技術の最新動向を追う。
進化するシステム管理戦略
Microsoftの管理製品、技術に関する戦略は、ここ数年の間、わずかながら進化している。
Microsoftは2003年、システム管理戦略を開示したとき、アプリケーション開発者に対して、設計段階から製品に管理機能を組み込むよう求めた。後付けの“ボルト・オン”管理は効率的でないと考えたからだ。2003年の戦略は、開発者たちに次の2つのことを要請した。1つは、外部の管理ソフトウェアがキャッチできるイベントやパフォーマンス値を示すモニタ機能をアプリケーションに用意すること。もう1つは、そのデータを解釈したり、アプリケーションの稼働状況を監視するITオペレーション要員の負担を軽減するオペレーショナル・モデルやヘルス・モデルを構築することだ。Dynamic Systems Initiativeと呼ばれる包括的なプロジェクトは、これらの目標を達成するために必要なモデル、ツール、製品の開発をガイドするものとなる。
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2004年春、同社はサーバ・モニタリング製品のMicrosoft Operations Manager(MOM)をよりパワフルかつユビキタスにする野心的な計画を発表するとともに、Windows Server System製品向けMOM管理パック(Management Pack:システム・コンポーネントの稼働状況を監視するためのルールとスクリプトのセット。以下MPと略記)の開発を、MOMチームの担当から各製品グループの担当にシフトした(Microsoftは後日、このシフトをCommon Engineering Criteria 2005仕様の中で正式化した)。ただし、DSI計画の詳細について、新たに追加されたものはない。
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Microsoftはまた、多様な管理製品群をSystems Centerと呼ぶ単一の製品に統合する計画を発表した。当初はMOMとSystems Management Server(SMS)のスイートだが、将来バージョンは共通の管理データベースを使って単一製品に統合する。しかしMicrosoftは、この製品のDSIにおける役割や統合化によって生まれるメリットについては明確にしなかった。
Systems Centerを中核に管理製品を統合
2005年4月のMicrosoft Management Summit(MMS)で、Microsoftは自社の管理戦略と製品計画のさらなる変更と詳細を明らかにした。
■Systems Centerはブランド名に
MicrosoftがSystems Centerを発表した後、SMSとMOMという根本的に異なる製品を統合させることによって生じる不格好な設計と移行に伴う数々の問題から、顧客の多くは統合管理製品にあまり大きな価値を見いださなかった。それを受けてMicrosoftは、従来型の統合管理製品モデルから、いわゆる連携モデルへとハンドルを切った。同社は、MOMとSMSをそれぞれ独自のSQL
Serverデータベースを持つ個別の製品として維持したまま、双方のデータを分析、レポートする第3の製品として、Reporting Managerを提供する計画だ。
これにより「Systems Center」という名称は、「Office」やHPの「OpenView」と同様、Microsoftの管理製品全体に与えられる1つのブランド名となる。そのほかの製品も同社の管理ポートフォリオに追加されるが、いずれも個別の製品であると同時に、既存のMicrosoft技術と標準に可能な限り準拠し、相互に連携できるように設計される。
■管理戦略の主要素を仮想化
Microsoftは2003年、Connectixの買収で仮想マシン(VM)技術を取得したとき、主に2つの市場をターゲットとした。1つは、複数の環境をエミュレートする必要がある開発者やテスタ。もう1つは、VMを利用してWindows
NT 4.0をゲストOSとして実行するWindows Server 2003サーバ上に、NT 4.0ベースのアプリケーションを統合したいと考えている企業だ。
ところが同社はその後、このVM技術で、より戦略的かつ野心的な目標を定めた。仮想化は今後、システム管理のキー・プラットフォームとして位置付けられることになる。2005年のMMSで、CEOのSteve Ballmer氏は仮想化について、「業界とMicrosoftが最も強い興味を持ち、取り組んでいるトピックである」と強調、「今後、Microsoftから数多くの革新技術が生まれるだろう」と語った。同氏はまた、現在のVirtual Server製品がMicrosoftの管理製品で管理可能であることを確認するとともに、Microsoftが将来のDSI技術で仮想化を完全サポートすることも明言した。仮想化により、アプリケーションとOSを実行中の物理ハードウェアから切り離せるようになるため、アプリケーションを別のホスト・サーバへほとんど、あるいはまったくダウンタイムなしに移動、複製することが可能になる。また仮想化を利用すれば、アプリケーション・サーバをハードウェア固有のシステム・イメージに縛られずに拡張することも可能だ。
■異機種環境の管理に乗り出す
MicrosoftはDSIをWindowsオンリーの管理戦略として構築しているが(少なくとも当面)、現在、Apple、Linux、UNIXシステムなど、非Microsoftアプリケーションについても、たとえベストでなくても、十分対応可能な管理製品を目指して開発中だ。
同社は、いずれ自社の管理製品をCAのUnicenterやHP OpenView、IBMのTivoliなどと競合させたいと考えている。Microsoftは今後も、これらのプラットフォームやアプリケーション向けのエージェント、あるいはMOM MPの開発をパートナーに依存する計画だが、同時にMOM、SMS、そしてVirtual Serverで、こうした非Microsoft環境の管理に必要な機能と標準をサポートしていく。例えば、同社はOSや管理製品の将来バージョンでWS-Management Webサービス・プロトコルをフルサポートし、非Microsoftのプラットフォームや管理製品と管理データをやりとりできるようにする考えだ。
システム管理製品が抱える課題
Microsoftはシステム管理戦略の詳細を明らかにしたが、次のような問題や懸念もいくつか残っている。
■開発ツールの不備
DSIは、アプリケーション開発者が最初から製品に管理機能を組み込むことを前提としている。しかし、それを支援するいかなる製品もツールも、いまだにMicrosoftは出荷していない(MOM
2005にはSDKが用意されているが、MOMと統合する製品開発に利用できるツールは提供されていても、管理アプリケーションの開発ツールやガイドラインはない)。そうした状況はVisual
Studio 2005 Team Systemのリリースで、ようやく終わろうとしている。この製品には、ソフトウェア・デザイナーやITシステム・アーキテクトが、要求項目を検討したり、コラボレートしたりできる“デザインタイム・バリデーション”と呼ばれるVisioに似たツールが含まれている。このプロセスは、プロダクション・システムでオフにされるポートに通信を依存する、といった設計上の問題や不適切な仮定を、コードを記述する前に開発者同士でチェックするためのものだ。
もっとも、この最初のステップも、DSI本来のビジョンには到底及ばない。同社は今後、開発者向けの管理ツールを徐々に拡充する計画だ。Visual Studio 2005の後継製品(コード名:Orcas)はDSIサポートをさらに強化し、MOMの次期リリースはアプリケーション用のMOM MPを開発するための一連のオーサリング・ツールを搭載するはずだ。ただ残念なことに、こうしたツールが登場するまであと2年は待たなければならず、Microsoft以外の環境で広く導入されるまでには、さらにそれから数年を要するだろう。
■いくつかの管理要素が欠落
Microsoftは、管理ツールや管理技術をMicrosoft Operations Framework(MOF)で モデル化しようとした。MOFは、ITサービス管理およびファシリティ・プランニングのベスト・プラクティスに関する包括的ドキュメンテーションとして、IT業界に広く受け入れられている「IT
Infrastructure Library(ITIL)」をベースとするIT運用プロセス・ガイドラインだ。
しかし、MOF/ITILプロセスの自動化をアシストするMicrosoftのツール・ラインアップには、いくつかギャップが残されている。Microsoftは、SMSを構成および変更管理(CCM)製品として位置付けているが、実際にはCCMのほんの一部の機能を提供しているにすぎない。SMSはソフトウェアのインストール、パッチ、アンインストールが可能で、PCハードウェアの変更を検出し、ハードウェアとソフトウェアの変更をログできるが、管理者によるアプリケーション構成の変更といった構成管理をトラッキングする機能はない。また、変更を行った個人ユーザーのIDのログ機能も用意していない。
Microsoftはまた、問題や資産をトラッキングするソリューションも提供していない。SMSはある程度、PCハードウェアを管理できるが、プリンタやモニタなどのデバイスはトラッキングできない。また、購入コストや減価償却、サポート契約といった非技術的情報をトラッキングする機能は欠落している。同社はこれまで、問題トラッキングにはBMCのRemedy、資産管理にはPeregrineやPS'Softなど、顧客にサードパーティ・ソリューションを推奨してきた。しかし、今回のMMSではエンタープライズ・マネジメント担当副社長のKirill Tatarinov氏が、問題トラッキングにMicrosoft Business Solutions Customer Relationship Management製品を利用する顧客について研究していることを明らかにし、将来的にそうした目的で同製品を用いる可能性を示唆した。
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