Insider's Eye: Windows 2000のデバイス ドライバを探るなぜWindows NTを使わないのか元麻布春男 |
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製品前のプレリリース版しかない現時点で、Windows 2000に興味を持っている人の多くは、おそらくすでにWindows NTを使っているユーザー、それも日常的に利用しているユーザーだろう。ところが筆者は、いまだにWindows 98を使い続けている。というより、サーバを除いてほとんどWindows 98ばかりだ。なぜ、Windows 2000の前身であるWindows NTを使っていないのか。これはよく聞かれる質問だ。この辺りの事情をちょっと説明しておこう。
筆者の仕事のうち大半は、PCのハードウェアに関するものである。ハードウェアにもいろいろあるが、中でもグラフィックス カードやサウンド カードといったクライアントPC向けのものが多くを占めている。こうしたハードウェアの評価を行うのに適したプラットフォームは何かというと、それは(少なくとも現状は)Windows 98だ。特にエンジニアリング サンプルの段階にあるこうしたハードウェアに添付されているドライバは、ことごとくWindows 9x用のものであり、Windows NT用のドライバがこうしたベータ状態のハードウェアに添付されていることはほとんどない。仮にWindows NT 4.0用のドライバがサポートされていたとしても、DirectXをフルサポートしていないWindows NT 4.0では、ドライバがサポートしているハードウェアの機能はごく一部であることが多い。とすると結局、ハードウェアを評価するという観点からは、Windows NTはふさわしくないプラットフォームということになってしまう。
こういうと、評価用のマシンはWindows 9xだとしても、原稿を書く仕事用マシンまでWindows 9xにする必要はないではないか、という反論が返ってくることが多い。確かにそれはそうなのだが、普段から使っていないプラットフォームを実験環境にするというのは、いろいろと不都合も多いのだ。サンプル段階のハードウェアは、ときに不安定なことが多いのだが、どのへんの調子が悪そうか、どこを変更すれば動きそうか、といった感覚的な部分は、常時使っているOSでないとなかなかピンとこない。といった理由から、「サンプルのカードに添付されるデバイス ドライバがWindows NTになったら、いつでも乗り換えます」というのが、Windows 98を使い続ける理由についての筆者の公式見解なのだ。
NTを使わない理由はデバイスサポートにある
だが、正直に言うと、これまで何回か仕事マシンのOSをWindows NTにしようと思ったことはある。思っただけでなく、実際にテストしたことさえある。だが、いずれの場合も、筆者はWindows NTより、リソースがじゃじゃ漏れで、1〜2日に1度は再起動が避けられないWindows 9xを仕事マシン用のOSとして選び続けてきた。
この最大の理由は、筆者が使おうとするすべてのデバイスが、Windows NT上で完全にサポートされていたためしがない、ということだ。どのデバイスが問題になるのかは、その時々で異なるが、おおむねマルチメディア系が危ない。ながら族である筆者の仕事環境は、音楽CDやMP3は言うに及ばず、テレビやDVDビデオの再生も可能でなければならない。さすがに本気でハマってはマズイのだが、音楽CDの代わりに音楽系のDVDビデオを再生することは、それほど珍しいことではなくなっている。最近でこそWindows NT上でDVDビデオを見ることは不可能ではなくなった(Ver 1.2、R-4以降のWinDVDなど)が、そもそもWindows NTはこうしたマルチメディア関係のサポートが得意ではない。実際、ドルビー デジタルのマルチ チャネル再生(マルチ スピーカ対応のデコード、あるいはS/PDIFによるパススルー)は、たぶんまだWindows NT上では実現していないのではないかと思う。
ビデオキャプチャにしても、Windows NTでできないわけではないのだが、「本気で編集します」みたいなものが多く、筆者の用途に合わない。筆者は、単にビデオデッキ代わりにちょっと録画したり、テロップを静止画でキャプチャしたりしたいだけなのだ。用が済んだら、こうしたファイルはさっさと消してしまうし、編集することなどまったくない。そんな目的のために、数十万円もするような高価なキャプチャ カードを買うつもりはないし、ましてやワークエリア用にRAIDボリュームを用意するなんて気はさらさらないのである。
筆者の仕事用マシン(OSはWindows 98)で[デバイス マネージャ]を表示させたところ |
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要するに、筆者がWindows NTを使わないできた最大の理由は、デバイスサポートにあるわけだ。しかし、Windows NTのデバイスサポートの問題の本質は、今まで述べてきたような、あるデバイスが動くとか動かないといった次元では捉えられないものがある。ことデバイスサポートという点において、Windows NTはある意味、見込みがないOSなのである。「見込みがない」などというと、おそらく大勢いるであろうNTユーザーから猛反発を受けるだろうが、少なくとも筆者にとってはそうなのだからしかたない。では何をもって見込みがないと言っているのかを説明したい。
現在ハードウェアは、すべからくリソースをダイナミックに管理する方向に向かっている。パワー マネージメントにしてもプラグ アンド プレイにしても、要はハードウェア リソースのダイナミック管理である。必要な時だけシステム メモリを使うという点で、AGPもまたダイナミックなリソース管理を行うテクノロジだといえる。だが悲しいことに、Windows NTにはこうしたメカニズムを扱うための枠組がない。
それではどうするかというと、とりあえずUSBのように、使わなくても何とかなるものはサポートをあきらめる。AGPのように全機能のサポートが無理でも、最小限動くようにする必要があるものについては、Service Packでパッチを当てて、デバイス ドライバで何とかしてもらう。乱暴な言い方をすれば、新しい機能が動く最小限の改良で大きくなったデバイスドライバが通るように、Service Packで大き目の穴をこじ開けておく、といった感じだ。
もちろん、こうした手法でもシステムは動く。しかし、これでは新しいテクノロジが登場するたびに、パッチ当てを余儀なくされる。それは終りのない作業であり、安定性を重視するというWindows NTのうたい文句と矛盾するやり方だ。これが筆者がWindows NTを見込みがない、という所以(ゆえん)である。
逆にWindows NTを安定させたいなら、新しいハードウェアなど使わなければよい。AGPなんてWindows NTにとってはほとんどメリットがないのだから、使わなければいいのである。その気になれば、Windows NTを安定して稼動させることは十分可能だと思うし、実際にそうして利用しているユーザーも多いことだろう。だが、それは筆者が望むところではない。筆者の商売はハードウェア系のライターなのである。というわけで、最近は仕事上の必要がない限り、Windows NTを触ることはなくなっていた(サーバを直接触る機会も、年に1〜2度程度しかない)。
Windows 2000は期待に応えてくれるのか?
そんな筆者にとってWindows 2000は、久しぶりに仕事マシン用のOSとして試してみようかという気になる存在だ。少なくともWindows 2000は、ダイナミックなリソース管理を行うACPIなどの枠組みが提供されている。賛否両論があるのかもしれないが、マルチメディア関連も含め、ほぼすべてのデバイス ドライバ レイヤがKernelモードに入ったため、DirectXのフルサポートが可能になった。これにより、Windows NTの弱点であったマルチメディア デバイスのサポートが充実する可能性がある。現在提供されているWindows 2000 RC2版でも、IEEE 1394やDVD-ROMドライブのサポートという点では、Windows 98を上回り、おそらく市場で最も進んだOSとなっている(ただし、IEEE 1394サポートは現状でベストであっても、理想的なサポートからは程遠い。これについては機会があれば改めて取り上げたい)。Windows NT 4.0と違って、「見込み」はありそうなのである。
もちろん、見込みがあることと、実際の製品が見込みに応えてくれることとは別だ。Windows 2000はすでに生産段階に入ったとのニュースが流れたばかりだが、まだそれを使ったことがない以上、製品としてのWindows 2000が筆者の期待に応えてくれるかどうかは分からない。それでも、ひょっとしたら応えてくれるのではないか、という期待はある。また、基本的な枠組みが用意されているということは、たとえ最初の製品が駄目でも、サードパーティによるドライバ サポートの充実により、期待に応えてくれるようになるかもしれない。その可能性のないWindows NT 4.0に対し、Windows 2000については、けっこう期待しているのだ。今は、この期待が製品発売前だけのはかないものにならないよう、ただただ願うばかりである。
INDEX | ||
第1回
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なぜWindows 2000を使わないのか | |
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WDMは何が変わったのか(1/2) | ||
WDMは何が変わったのか(2/2) | ||
WDMの理想とするところ | ||
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