連載
SE ハジメくん物語
―　新米SEのActive Directory導入奮闘記　―

【第4話】SE ハジメくんの挫折、そして古杉部長の変貌(後編)（3）

はい、小野ですが。

古杉です。仕事中悪いね。

お休み中だと聞いてましたが、どうかしましたか？

みんなの信望が厚い小野君におりいって相談があるんだ。この電話があったことは内緒にしておいてほしいんだが、ちょっとだけ相談に乗ってくれないか？

私でお役に立てるのであれば構いませんが……。

ありがとう。さっそくだが……。

どう思う？ 俺はどうしたらいいんだろう？

私には難しいご質問ですね。でも、やるしかないでしょう。それではまず、私がみんなに、古杉部長がみんなの悪口を聞いていたことをリークします。

駄目だよ、そんなの。みんなが萎縮して何もできなくなるから。

いいえ、そこを隠してしまうということは、古杉部長の本音を隠すことと同じだと思います。それから、明日の朝は全員出席の会議を開きましょう。もちろん主催者は古杉部長です。

それで？

そこで1度だけ謝ってください。いままでみんなの本音に気付かなかったことを。後は無理をせずにいつもの古杉部長でいいですよ。古杉部長は私におっしゃいましたよね。ここはみんな仲良しだと。

確かにいったが、いつもどおりでいいとは思わんが……。

明日だけいい顔をするということですか？

絶対にそんなことではない！

でしたらいつもどおりでいいんですよ。みんなも古杉部長のことを嫌いじゃないですし、古杉部長らしさを無理に抑えたら、今度は古杉部長がおかしくなっちゃいますよ。

そうか、分かった。君のいうとおりにしよう。

ただ1つだけ。これは私からのお願いなんですが……。

うむ、何かな？

みんなの前でハジメくんを褒めてもらえないかと。「気付かせてくれてありがとう」ってそれだけでいいですから。

みんな集まってるな。

みんなゴメン。

え？

何も知らなかった。自分のこともお前たちのことも。これからは一緒によいシステムを作ろう。

？

思い出したんだよ。昔、俺も上司にいったことがある。もっと自由にやらせろって、俺がやったらもっとよくなるって。だから、みんなにもっと自由にやってほしいんだ。昔を懐かしむんじゃなくて、これからは新しいことにいろいろチャレンジしよう。仕事は忙しくなるかもしれんが、もう1度みんなと出直したい。

古杉部長、この前は本当にすいませんでした。私にできることがあれば何でもいってください。頑張りますから。

ありがとう、でも俺がいって何かをするんじゃなくて、自分からその何かを見つけてほしいんだ。なあ、ハジメくん。

細井課長、小野さんのいうとおりだ。わがままばかりいっていた私をうまく受け流して、みんながやりやすいように仕事の道筋を作ってくれたのは君だったな。俺は一番の右腕を、自分の思うように使うことばかり考えていた。これからは細井課長らしいチーム作りをしてくれ。

これからみんなでいいシステムを作ろう！ ただし、いままで怠けていた分、忙しくなるよ。

はい！