運用 1.SQL Server 2005のエディション構成デジタルアドバンテージ 小川 誉久2005/12/16 |
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マイクロソフトは、SQL Server 2005にExpress、Workgroup、Standard、Enterpriseという4つのエディションを用意した。このうちExpressは教育機関や個人レベルの使用を想定した無償版、Workgroupは小規模システム向け、Standardは中〜大規模システム向け、Enterpriseはデータウェア・ハウス利用などの大規模ミッション・クリティカル・システム向けエディションである。
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このうち従来にはなく、SQL Server 2005から追加されたのは、無償版のExpressだ。これまでは、SQL Server 2000のエンジンを使用した無償版のMSDE 2000(SQL Server 2000 Desktop Engine)というものが提供されていたが、今回はこれをSQL Serverのラインアップに組み込み、SQL Serverスケーラビリティの入り口となる製品であることを明示した。
MSDEで提供されていたのはデータベース・エンジンのみで、GUIベースの管理ツールが提供されないという制限があったが、今回SQL Server 2005 Express Editionでは、簡易版ながらManagement Studio Expressと呼ばれるGUI管理ツールが提供されることになった(MSDEの詳細については関連記事を参照)。ただし原稿執筆時点では、Management Studio Expressは開発途中で、追ってダウンロード提供するということだ。
以下に、SQL Server 2005の各エディションと、主要な機能の比較を示す。
製品 |
Express Edition
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Workgroup Edition
|
Standard Edition
|
Enterprise Edition
|
価格*1 |
無料
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51万8000円*2/9万4800円*3
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105万円*2/31万3000円*3
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447万円*2/227万円*4
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CPU制限 |
1
|
1〜2
|
1〜4
|
制限なし
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メモリ制限 |
1Gbytesまで
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3Gbytesまで
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制限なし*5
|
制限なし*5
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データベース最大容量 |
4Gbytesまで
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制限なし
|
制限なし
|
制限なし
|
64bitネイティブ・サポート |
×*6
|
×*6
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○
|
○
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データベース・エンジン | ||||
自動チューニング |
○
|
○
|
○
|
○
|
T-SQL拡張 |
○
|
○
|
○
|
○
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CLR/.NET統合 |
○
|
○
|
○
|
○
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ネイティブXML対応 |
○
|
○
|
○
|
○
|
サービス・ブローカー対応 |
サブスクライバのみ
|
○
|
○
|
○
|
バックアップログ配布 |
×
|
○
|
○
|
○
|
フルテキスト検索 |
×
|
○
|
○
|
○
|
Webサービス(HTTPエンドポイント) |
×
|
○
|
○
|
○
|
データベース・ミラーリング |
×
|
×
|
○*7
|
○
|
フェールオーバー・クラスタリング |
×
|
×
|
○*8
|
○
|
パーティショニング |
×
|
×
|
×
|
○
|
Hot Add Memory(メモリの動的追加) |
×
|
×
|
×
|
○*9
|
管理ツール | ||||
Management Studio |
×*10
|
○
|
○
|
○
|
Analysis Services | ||||
分析サービス |
×
|
×
|
○
|
○
|
データウェア・ハウジング |
×
|
×
|
○
|
○
|
データ・マイニング |
×
|
×
|
○
|
○
|
Reporting Services | ||||
レポーティング |
シンプル
|
ベーシック
|
スタンダード
|
アドバンスト
|
Notification Services | ||||
通知サービス |
×
|
×
|
○
|
○
|
Integration Services | ||||
インポート/エクスポート・ウィザード |
×
|
○
|
○
|
○
|
統合サービス(基本変換*11) |
×
|
×
|
○
|
○
|
統合サービス(高度な変換*12) |
×
|
×
|
×
|
○
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レプリケーション | ||||
マージ・レプリケーション |
サブスクライバのみ
|
25サブスクライバまでのパブリッシュ
|
制限なし
|
制限なし
|
トランザクショナル・レプリケーション |
サブスクライバのみ
|
5サブスクライバまでのパブリッシュ
|
制限なし
|
制限なし
|
Oracleレプリケーション |
×
|
×
|
×
|
○
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SQL Server 2005エディション別主要機能比較 | ||||
*1:いずれもパッケージ版の推定小売価格。詳細はマイクロソフトの発表資料を参照。 *2:プロセッサ・ライセンス(Select レベルA)。 *3:サーバ・ライセンス+5クライアント・アクセス・ライセンス。 *4:サーバ・ライセンス+25クライアント・アクセス・ライセンス。 *5:OSがサポートする最大容量まで。 *6:WOW(Windows on Windows)を使用し、64bit環境で実行することは可能。 *7:一部機能制限あり。 *8:2ノードのみサポート。 *9:Windows Server 2003, Enterprise またはDatacenter Editionと、対応したハードウェアが必要。32bitのSQL ServerではAWEを有効にする必要がある。 *10:Management Studio Express(シンプルな管理ツール)をダウンロード提供。 *11:グラフィカルな抽出、変換、ロード(ETL)機能。 *12:データ・マイニング、テキスト・マイニング、データ・クレンジング機能を含む。 |
データサイズの制限はあるが、かなり使えるExpress Edition
気になるExpress Editionだが、メモリ制限(1Gbytesまで)にせよ、データベース最大容量(4Gbytes)にせよ、教育機関や個人利用ばかりでなく、ビジネス・アプリケーション用のデータ・ストレージとしても十分利用可能な機能を持っている。MSDEのデータベース最大容量は基本的に2Gbytesであった(SharePoint Portal Serverに付属するMSDEは4Gbytesに拡張されていた)。この水準でも、MSDEはデータ・ストレージ・エンジンとして会計ソフトウェアにバンドルされるなどしていた。今回のExpress Editionでは、一律4Gbytesに拡張されており、無償版といえどもかなりの用途に使えるものと思われる。前述したとおり、簡易版なれどExpressには管理ツール(Management Studio Express Manager)も提供される。
Express Editionは、MySQLやPostgreSQLといったオープン・ソース製品に対抗するための製品と位置づけられることも多いが、それだけではない。マイクロソフトは、同社のミドルウェア製品群(BizTalk Server、Microsoft Operation Manager:MOM、SharePoint Portal Server、Host Integration Serverなど)のデータ・ストレージ・エンジンとしてSQL Server(MSDE)を積極的に活用しており、これらの製品には、無償版のMSDEがバンドルされたり、MSDEと組み合わせて使うことが前提とされたりしている。今後発表されるこれらの製品のバージョンアップ版では、データベース・エンジンとしてSQL Server 2005 Express Editionを積極的に利用することになるだろう。もちろんストレージへの要求がExpressのスケールを越えたときには、より上位版に移行することになる。
結論からいえば、データベース最大容量と管理ツールの問題さえ障害にならなければ、Expressはかなり幅広い用途に利用可能である。これらの制限が問題になったときには、廉価版のWorkgroup Editionに移行すればよい。
中規模クラスのアプリケーションに幅広く使えるWorkgroup Edition
マイクロソフトは、SQL Server 2000のエントリ向け製品として、2005年2月にWorkgroup Editionをラインアップに追加した。一説によれば、これは、それに先だってオラクルが発表したOracle 10gの低価格版パッケージに対抗して発売されたものだとされる。このWorkgroup EditionはSQL Server 2005でも引き継がれた。
Express Editionと比較したWorkgroup Editionの大きな特長は、データベース最大容量に制限がないことである。また管理ツールとしてフル機能版のManagement Studioが提供されることは、特に管理工数を削減したいユーザーにとって重要なポイントになるだろう。これ以外にも、フルテキスト検索やWebサービス対応(HTTPエンドポイント対応)機能もサポートされており、小〜中規模クラスのアプリケーション用データ・ストレージに耐える水準にある。
Workgroup Editionにするか、上位のStandard Editionにするかの選択は、データベース・ミラーリングやフェールオーバー・クラスタリングといった可用性向上のための機能が必要かどうかで分かれる。メンテンナンスにせよ不意のトラブルにせよ、わずかの時間でもデータベース・サービスを停止したくないというなら、Standard Edition以上を選択する必要がある。逆にいえば、社内利用などで、比較的いつでもサービスを停止できるような用途なら、Workgroup Editionでもあまり問題はない。
可用性が必要ならStandard Edition
Express/Workgroup EditionとStandard Editionの違いに注目すると、マルチプロセッサ・サポートが向上し(最大4個まで)、メモリ制限が「制限なし」となっていることに加え、64bitネイティブ・サポートが追加されている。中〜大規模なデータベースで、より高いパフォーマンス・スケラービリティが求められる用途では、Standard Editionが視野に入ってくる。当然システムが大規模になれば、サービス停止が及ぼす影響も大きくなるので、前述した可用性支援機能も重要になってくるだろう。
もう1つ、Standard Editionでは、分析サービスやデータウェア・ハウジング、データ・マイニングといったBI(Business Intelligence)支援機能が追加される点にも注目する必要がある。多数のデータベース・トランザクションから、ビジネスの動向を素早くつかみ、意志決定につなげたいと考えるなら、Standard Edition以上を検討すべきだ。具体的には、コマース・サイトや、ERP(Enterprise Resource Planning)、EDI(Electronic Data Interchange)などのアプリケーション用途がこれに当てはまるだろう。
スケーラビリティ重視ならEnterprise Edition
その名のとおりEnterprise Editionは、サポートされるプロセッサ数が無制限になるなど、最大のスケーラビリティを持つ大規模システム向けの製品である。ミッション・クリティカルな大規模データベース・システムを停止することなく運用し、大量のトランザクションを負荷の大小によらず遅延なく処理し、BIなどの複雑な分析処理を実行する必要があるなら、Enterprise Editionを選択することになる。
Enterprise Editionでは、SQL Server 2005の強化機能の1つであるデータベースのパーティショニングがサポートされる。詳細は別稿に譲るが、これは、論理的には1つのデータベースを物理的に複数に分割し、異なるロケーションに配置できるようにする機能である。この際のロケーションには、同一サーバの異なるストレージ・デバイスでもよいし(「ローカル・パーティショニング」と呼ばれる)、ネットワーク上の異なるサーバ・ストレージでもよい(「分散パーティショニング」と呼ばれる)。このパーティショニング機能を有効活用することにより、大規模なデータベースの処理性能を劇的に向上させることが可能になる。一般にデータベースは、Webサーバのように複数のサーバでクラスタを構成し、スケールアウトにより負荷分散するのは困難である。データベースは、データ全体の一貫性を維持のために、分散を進めると同期の負荷が増大してしまうからだ。このためデータベースの性能向上は、コンピュータ自体の処理能力を向上させるスケールアップによって達成するのが一般的だった。
しかし今回追加されたパーティショニング機能をうまく使えば、データベースの一貫性を維持しながら、物理的なハードディスクやサーバを分散させることで、効果的な負荷分散(同時実行)が可能になり、データベースのスループットを向上できる。例えば、BIなどの分析処理では、データベースに対する大量のクエリ(読み出し)が発生することになるが、パーティショニングにより負荷分散することで、複数のクエリを物理的に同時実行し、データを高速に集計するなどが可能になるだろう。
■
次回は、SQL Server 2005の管理者向け新機能、拡張機能について、代表的なところをピックアップしてご紹介する予定である。
INDEX | ||
[運用]IT Proから見たSQL Server 2005 | ||
第1回 SQL Server 2005の概要 | ||
1.SQL Server 2005のエディション構成 | ||
運用 |
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