Windows Server 2003は.NET時代に向けた大きな一歩?

小川 誉久

2003/05/08


 2003年4月25日、新世代のサーバ向けWindows OS、Windows Server 2003が米国で発表された。この発表会において、Windows Server 2003のテーマとして使われたコピーは、“Do more with less.”。翻訳すれば「ちょっとでもっと」となるだろうか。これは「Windows Server 2003を導入することで、機能や処理性能の向上、TCO削減、セキュリティの向上などにより、投資を大幅に超えるリターンが得られる」という意味らしい。もう少し噛み砕いていえば、「不況でIT予算が絞られてお困りでしょうが、Windows Server 2003は、その少ない予算を効果的に生かせるOSです」というメッセージだ。世界経済低迷の影響で、IT投資が未曾有の逆風にさらされる中で旅立つWindowsサーバOSに向けて、Microsoftの幹部たちが熟考した結果であろうこのテーマには、なかなかに味わい深いものがある。

 ともあれ、Windows Server 2003英語版は発売された。日本版は、この6月にも発表されるとうわさされている(マイクロソフトからの正式なアナウンスは現時点ではまだない)。

 Windows Server 2003の改良ポイントは数え切れないほどだ。製品前のRC1バージョンのものだが、これらについては以前に公開した記事でリストアップしたので興味がある方は参照されたい(Windows Server 2003完全ガイド 新機能・改良機能一覧)。これだけ微に入り細にわたって改良されているのだから、個々のユーザー環境や用途によって、Windows Server 2003の評価はそれぞれ変わってくるはずだ。しかし細かいことはともかく、Windowsユーザーとしてズバリ気になるのは、Windows Server 2003によって何が変わるのか? ということだろう。

 マイクロソフト自身がWindows Server 2003を紹介するときはもちろん、コンピュータ関連メディアがこの新OSを取り上げるとき、必ずうたうポイントの1つは「.NETに対応した初のWindows OS」ということだ。今回はこの点について考えてみたい。

 「.NET対応」という目でWindows Server 2003を眺めると、まずは次のような特徴を挙げることができる。

  • .NET Framework 1.1を標準搭載:.NET対応プログラムを実行するための.NET Frameworkランタイム(の最新版)が最初からOSに組み込まれており、追加インストールすることなく、.NET対応プログラムを実行できる。

  • UDDIサーバ機能:UDDI(Universal Description, Discovery and Integration)は、未知のWebサービスを検索可能にするしくみ。これにより、Windows Server 2003をUDDIサーバとして機能させることができる。

 新機能というわけではないが、新規設計によって、従来から飛躍的に処理性能や信頼性が向上した(とマイクロソフトは主張している)ことから、次の点も加えてよいだろう。

  • IIS 6.0:新規設計のアプリケーション・サーバ。処理性能や信頼性を大幅に向上しており、特にASP.NETを利用したWebアプリケーション開発で大きな効果を発揮する。

 Windows Server 2003の「.NET対応」は、大きくはこの3点だと考えてよいと思う。

 とはいうものの、さらに将来バージョンのWindowsとして開発が進むLonghorn(ロングホーン)やBlackcomb(ブラッコム。いずれも開発コード名)では、.NET FrameworkとOSがさらに深く融合するとされるが、少なくとも現状のWindows Server 2003では、.NET Frameworkのランタイムがデフォルトでインストールされているにすぎない。つまりOSと.NET Frameworkの統合レベルという点では、これまでのWindows 2000やWindows XPに.NET Frameworkランタイムを追加インストールしたのと大して変わらないということだ。さらにUDDIサーバを使うのはごく一部のユーザーだろうし、IIS 6.0も.NETならではというわけではない。

 「Windows Server 2003の登場で.NET時代の幕が開ける」と期待していた読者の中には、「何だその程度か」とがっかりされた向きがあるかもしれない。しかし私は思う。.NET Frameworkランタイムが有無をいわさず標準インストールされていることこそ重要なのではないかと。

 情報システムの可用性やTCOを気にするWindows管理者にとって、従来の.NET Frameworkランタイムは、できればインストールしないで済ませたい存在であった。まず第1に、品質や信頼性以前の問題として、すでに稼働しているシステムに対し、構成を大きく変える(大きく変えると思われる)ようなアドオン・ソフトウェアは、できることなら追加したくないと考えるのは、システムの可用性に責任を持つ人間として自然なことである。

 第2に、.NET Frameworkランタイムを追加インストールすると、いやがうえにも.NET Frameworkのバージョン管理という面倒に巻き込まれる。これまで.NET Frameworkのランタイムとして、初期バージョンのVer.1.0が公開された後、Ver.1.0用のSP1とSP2が公開された。また数えるほどではあるが、.NET Framework向けのセキュリティFixも公開されている。進歩の激しい分野では仕方ないことだが、.NET Framework対応ソフトウェアの中には、古いバージョンの.NET Frameworkランタイムでは正しく機能しないものがある。システム管理者は、OSに組み込まれた.NET Frameworkのランタイム・バージョンを把握しておく必要がある。

 つまりWindows管理者にとってこれまでの.NET Frameworkランタイムは、かなりの面倒と冒険を覚悟しなければ使えないソフトウェア・プラットフォームであったわけだ。こうしたマイナス・ポイントを差し引いてもなお、.NET対応ソフトウェアの導入にメリットが感じられる場合に初めて、.NETテクノロジ・ベースのシステム開発が前進することになる。

 Windows Server 2003に標準で.NET Frameworkランタイムがインストールされることは、こうしたマイナス・ポイントを低減することになるだろう。Windows Server 2003の導入実績は、.NET Frameworkラインタイムがどれだけ実行されるかにかかわらず、.NET Frameworkの実績としても評価されるはずだ(少なくとも、「あっても邪魔にならないものだ」という認識は広まるだろう)。

 .NET FrameworkがOSに包含されることで、将来の修正プログラム管理もOSとセットで対応できるようになるはずである。Windows XP SP1には.NET Frameworkランタイムは組み込まれなかったが、当然ながら将来のWindows Server 2003向けのService Packには、.NET Frameworkの最新版(もしあれば)や、.NET Framework向けのHotFix(もしあれば)も含まれるはずだ。

 まったくもって技術上のハードルではない。しかしWindows Server 2003の登場により、多くのWindows管理者にとって.NET Frameworkがぐっと身近な存在になることは間違いない。このことこそ、「.NET時代に向けた大きな一歩」になると私は見ているのだが、どうだろうか。End of Article


小川 誉久(おがわ よしひさ)
株式会社デジタルアドバンテージ 代表取締役社長。東京農工大学 工学部 材料システム工学科卒。'86年 カシオ計算機株式会社 入社、オフコン向けのBASICインタープリタの開発、Cコンパイラのメンテナンスなどを行う。'89年 株式会社アスキー 出版局 第一書籍編集部入社、書籍編集者を経て、月刊スーパーアスキーの創刊に参画。'94年月刊スーパーアスキー デスク、'95年 同副編集長、'97年 同編集長に就任。'98年 月刊スーパーアスキーの休刊を機に株式会社アスキーを退職、デジタルアドバンテージを設立した。現Windows Server Insiderエディター。

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