[製品レビュー]
Windows Server 2008 Foundation

1.Foundationの位置付けと特長

デジタルアドバンテージ 島田 広道
2009/09/09

Windows Server 2008 Foundationの位置付け

Windows Server 2008の基礎知識

 Windows Server 2008 Foundationは、ユーザー数15名以下の小規模システム向けのエントリ・サーバ用OSで、(Webエディションを除く)従来の汎用サーバ向けエディションでは最下位だったWindows Server 2008 Standard(以下、単にStandard)のさらに下位に位置付けられる。Standardに比べて機能制限(詳細は後述)はあるものの、それはStandardがEnterpriseに比べて、例えばクラスタ構成に対応していない、物理プロセッサが半分の4基までしか利用できない、といったラインアップ上の機能制限と本質的に変わらない。Foundationは特殊なエディションではなく、その名が示すとおりWindows Server 2008ファミリに加わった新たな一員なのだ。実際、Active Directoryやグループ・ポリシー、IIS 7.0、ターミナル・サービス、リモート・アクセス、DHCP/DNSサーバといったWindows Server 2008の役割や機能が、Foundationでは標準で利用できる。

 ではWindows Server 2008ファミリを含むWindows Server全体の中では、Foundationはどのように位置付けられるのだろうか。Windows Serverは、Exchange Serverなどのサーバ・アプリケーションがセットになっている統合サーバと、サーバ・アプリケーションはなく基本的な役割や機能のみが同梱されている汎用サーバに大別される。このうちFoundationを含むWindows Server 2008は後者に分類される。この中でユーザー数、すなわち規模で分類すると、Foundationはユーザー数15名以下が対象となり、それ以上はStandardまたはEnterpriseがカバーする。

Windows Server全体におけるFoundationの位置付け
マイクロソフトの発表資料から抜粋した(Foundationに合わせて300名以上の大企業は省略している)。「統合サーバ」とはExchange Serverなどのサーバ・アプリケーションが最初からインストールされているもの。逆に「汎用サーバ」には基本的な役割や機能のみが同梱されており、サーバ・アプリケーションは別途インストールする。この中でユーザー数、すなわち規模がFoundationと同じなのは、個人向けのWindows Home Serverだけである。

 このように、同じ15名以下の小規模システムでFoundationと競合する可能性があるのはWindows Home Server(以下、WHS)だけである。WHSはもともと個人向け製品だが、標準装備のクライアントPC自動バックアップ機能が企業でも便利なことから、小規模システム向けサーバにプレインストールされている例がある。しかしFoundationと比べると、Active Directoryおよびグループ・ポリシーによるユーザーやクライアントPCの管理ができないほか、サーバ・アプリケーションを追加して利用することも想定されていない。クライアントの管理コストを削減するという観点では、こうした企業向けに培われてきたWindows Serverの機能がある分、WHSよりFoundationの方が適している。

サーバ・マシンとセットで10万円以下の価格を実現

 Foundationの特長として第一に挙げるべきは、その低価格である。

プレインストールされたサーバ込みで7万〜8万円台
 Foundationは単体では販売されず、サーバ・マシンへのプレインストールまたはバンドルにて提供されるので、価格もサーバ・マシンとセットで表される。次の表は、Foundationをプレインストールしたサーバ・マシンの価格例である(2009年9月8日に、なるべく安価になるようにカスタマイズして見積もりした結果)。このように、サーバ・マシンとセットでも7万〜8万円台という低価格を実現している。

ベンダ 製品名 価格例(税込) 基本的なスペック
デル PowerEdge T105 7万6050円 クアッドコアAMD Opteron 1354-2.20GHz/メモリ2Gbytes/HDD 160Gbytes×1台
日本ヒューレット・パッカード ProLiant ML115 G5 8万850円 AMD Athlon LE 1640B-2.70GHz/メモリ1Gbytes/HDD 160Gbytes×1台
富士通 PRIMERGY TX100 S1 7万9800円 Intel Celeron 430-1.80GHz/メモリ1Gbytes/HDD 160Gbytes×1台
Foundationをプレインストールしたサーバ・マシンの価格例(2009年9月8日調査)
2009年9月8日に各ベンダの直販Webサイトで調査した。具体的には、プロセッサは選択できる中で最も安価なものを選び、メイン・メモリやハードディスクの仕様は可能な限りそろえて、そのほかのオプション(RAIDなど)は排除してなるべく安価になるようにカスタマイズをした見積もり結果である(ただしデルのPowerEdge T105のみ、メイン・メモリ容量に1Gbytesを選択できなかったので下限の2Gbytesとしている)。価格にはサーバ本体とFoundationの分が含まれているが、7万円台から8万円強にとどまっていることが分かる。

 上表を調べたのと同じ直販Webサイトにおいて、同じプレインストールという土俵でStandardと価格を比べたところ、Foundationとはおおよそ5万〜7万円程度の差があった(5CAL付きのStandardの場合。CALについてはすぐ後で説明する)。サーバ・マシン単体の価格が4万〜6万円程度であることを考えると、特に予算の限られる小規模システムでは、この価格差は無視できないだろう。

デルPowerEdge T105のプレインストールOSの選択画面(2009年9月8日調査)
2009年9月8日にデルの直販Webサイトで、PowerEdge T105の構成をカスタマイズしているときに表示された画面から抜粋した。もちろん、これは本機における価格設定であり、ほかの製品やベンダでも同じ価格とは限らない。
Foundationのプレインストールをやめると2万6250円、価格が下がる。つまりFoundationの「価格」が2万6250円と換算できる。
この6万3000円がStandard(5CAL付き)とFoundationの価格差になる。
一世代前のWindows Server 2003 R2 Standardも、Windows Server 2008 Standardと同じ6万3000円がかかる。

CALも不要
 Foundationのコストについては、もう1つ、「CAL(クライアント・アクセス・ライセンス)」が不要という大きなメリットがある。ここでいうCALとは、Windows Serverに接続するクライアントごとに購入しなければならないライセンスのことだ。つまりWindows Serverを利用するには、OSだけではなくCALのコストも計上する必要がある。Windows Server 2008におけるCALの概要については、次のマイクロソフトの解説ページを参照していただきたい。

 Foundationを除くWindows Server 2008用のCALの価格は、5CALのパックだと実売で2万〜3万円ほどする(2009年9月上旬に複数のショップで確認)。例えば、プレインストールでよくある5CAL付きのWindows Server 2008 Standardに5CAL×2パックを加えて計15CAL(15ユーザー)で利用する場合、前述のOS本体価格を合わせると、FoundationとStandardの価格差は9万〜13万円に広がり、ますます無視できなくなる。

 ただし、すべての状況でFoundationにCALが不要というわけではない。まずFoundation標準装備のサーバ機能のうち、ターミナル・サービスを利用する場合はその専用CALを購入する必要がある。ターミナル・サービスとは、サーバにインストールしたOfficeなどのアプリケーションをクライアントPCからリモート・デスクトップ接続で共有利用できるサービスのこと。簡単にいえば、Foundation標準装備のファイル共有やプリンタ共有、DNSサーバ、DHCPサーバ、Webサーバなどを利用してもCALは不要だが、ターミナル・サービスは例外ということだ(管理用リモート・デスクトップ接続には、ターミナル・サービス用CALは不要)。

 また、マイクロソフト製サーバ・アプリケーションにCALが必要な場合がある。こうしたアプリケーションをFoundationにインストールした場合、そのアプリケーション用CALを購入しなければならない。このように「FoundationにCALは不要」ということは、すべての場合に当てはまるわけではないので注意したい。

低価格と引き換えの制限

 以上のようなFoundationのコスト・メリットは、もちろん何の犠牲もなく実現されているわけではない。それと引き換えに、Foundationの機能には下表のような制限が課されている。

  Windows Server 2008 Foundation Windows Server 2008 Standard
ユーザー数 15ユーザー 無制限
Active Directoryユーザー・アカウント数 15アカウント 無制限
プロセッサ・アーキテクチャ 64bitのみ 32bit/64bit
物理プロセッサの最大ソケット数 1基 4基
最大メイン・メモリ容量 8Gbytes 32Gbytes
Server Core構成 ×
Hyper-Vによる仮想化(仮想インスタンス数) × ○(1)
SMB−ファイル/プリンタ共有プロトコル(最大接続数) ○(30) ○(無制限)
RRAS−リモート・アクセス・サービス(最大接続数) ○(50) ○(250)
ターミナル・サービス・ゲートウェイ(最大接続数) ○(50) ○(250)
Standardと比較したときのFoundationの制限や機能差
最も重要なのは、ユーザー数が最大15名に制限されている点だろう。またHyper-VとServer Core構成はまったく利用できない。そのほかの機能は利用できるものの、容量や個数、接続数などがStandardより少ない。

 以下では、上表の各項目について、その影響を測ってみよう。

ユーザー数は最大15名まで
 最もユーザーに影響があるのは、ユーザー数の制限だろう。ワークグループ構成でもActive Directoryでも、ユーザー数は最大15名に制限されている。これは、Foundationをサーバとして利用できるユーザーすなわち「人」が15名までであり、かつ、管理者やゲストなどのアカウントを除くユーザー・アカウントも最大15個に制限されることを意味する。次のページによれば、複数のユーザーで1つのユーザー・アカウントを共有することも禁止されている。

 この制限を超えてもエラーなどは発生しないが、もちろん制限の範囲内で正しく利用しなければならない。

 なお、Active Directoryについては、Foundationを既存のActive Directoryに追加することは推奨されていない。そもそもライセンス上、Foundationのユーザーは、Foundation上に構築されたActive Directoryのユーザー・アカウントか、ワークグループ構成時のローカル・ユーザー・アカウントだけが利用可能で、既存のActive Directoryのユーザー・アカウントは使えない。つまり、実質的に既存のActive Directoryへ追加する意味はほとんどない。例えば、一部署に導入したFoundationを全社規模のActive Directoryに統合したいなら、FoundationをStandardへアップグレードしてから追加することになる(FoundationはStandardだけにアップグレード可能になる予定。執筆時点でアップグレード価格は未定)。

仮想化はホストもゲストOSも不可

Windows OSに標準搭載された仮想化機能「Hyper-V」

 FoundationはHyper-Vによる仮想化のホストとしても、また仮想OS(ゲストOS)としても利用できない。もっともFoundationは明らかに、サーバのない拠点に初めて導入されるサーバOSと想定されており、そのとおりに利用するなら導入時点で仮想化機能は不要といえる(仮想化すべきサーバも仮想化のホスト・サーバもないはずだから)。

プロセッサやメモリの制限はアプリケーション次第
 プロセッサ・ソケット数やメモリ容量の上限は、利用するサーバ・アプリケーション次第ではパフォーマンスに影響を与える可能性はあるものの、同時利用ユーザー数が15名までなので、大きな問題にはなりにくいだろう。パフォーマンスが必要なら、マルチコア・プロセッサ搭載サーバを選ぶことも可能だ。

 プロセッサ・アーキテクチャが64bitのみという点は、Foundationは既存サーバにインストールできず、新規サーバにプレインストールまたはバンドルされて出荷されるので実質問題はない。さらにいえば、Windows Server 2008の後継であるWindows Server 2008 R2では、Foundation以外のエディションも64bit版のみで32bit版は提供されない。

SMB接続数の制限はクライアントPCの台数による

基礎から学ぶWindowsネットワーク 第20回 ファイル共有プロトコルSMB/CIFS(その1)

 SMBはファイル/プリンタ共有などに使われるWindows標準のプロトコルのことで、Foundationでは最大30接続に制限される。30接続を超えるとエラーが発生し、接続に失敗してしまう。

 大ざっぱにいえば、1台のサーバのファイル共有に対して30台のPCからアクセスすると、おおよそ30接続が発生する。SMBでは、特定PCからの特定ユーザーによる接続が1接続としてカウントされるため、複数のユーザーによる1台のPCの同時利用がない限り、通常は30接続=30台ということになる(実際には、1台当たり複数のSMB接続が生じることもあるので、ちょうど「30接続」とは限らない)。

 つまり、ユーザー数が最大の15名として全ユーザーがそれぞれ2台のクライアントPCを使ってFoundation上のファイル共有をアクセスすると、この制限に抵触する恐れはある。逆にいえば、同時に使用されるPCの台数が30台もなければ、重大な制限ではないということだ。なお、Foundationに接続するPCの台数に制限はない。

RRASやターミナル・サービス・ゲートウェイは実質的に制限なし

Windows Server 2008の基礎知識 第9回 ターミナル・サービスによるクライアントの仮想化(中編) 3. 安全で使いやすいリモート接続を実現するTSゲートウェイ

 リモート・アクセス・サービス(RRAS)はVPNやダイヤルアップによるリモートからのアクセスなどに、またターミナル・サービス・ゲートウェイは社外から社内へのリモート・デスクトップ接続にそれぞれ利用される。どちらもユーザー数の3倍以上の同時接続が可能なので、この上限の影響を受ける可能性は低いだろう。

 以上のようにユーザー数15名以下という前提だと、使い勝手を大きく左右する制限は決して多くはない。もし制限に抵触する可能性がある場合は、Standard以上のエディションを検討すべきだろう。


 INDEX
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  1.Foundationの位置付けと特長
    2.PHPベースの無償Webアプリケーションも利用可能

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