[製品レビュー] 2.PHPベースの無償Webアプリケーションも利用可能デジタルアドバンテージ 島田 広道2009/09/09 |
|
サーバ・アプリケーションはPHPベースのフリーウェアにも期待
冒頭で触れたように、小規模システムにWindows Serverを導入する理由の1つは、サーバ・アプリケーションの利用である。Foundationのアプリケーション・ロゴの要件は従来のWindows Server 2008と同じである。しかし、次のページによると、マイクロソフト製品ではFoundation対応のサーバ・アプリケーションはまだ多くはない。
2009年9月上旬の時点で対応しているのは、SQL Server 2008 Standard/Workgroup/Expressシリーズのほかは、Forefront Client Security SP1とWindows SharePoint Services 3.0 SP2に限られる。Exchange ServerやSharePoint Serverなどは対応していない(マイクロソフトによれば、Exchange Serverなど上記ページにないサーバ・アプリケーションにはFoundationで動作するものもあるが、推奨しないとのこと)。
一方、サードパーティ製アプリケーションについては、次のページのように、すでにFoundation対応製品がリリースされているものの、やはりまだ製品数は多くはないようだ。
|
こうした状況でFoundationでも利用できるサーバ・アプリケーションとしては、PHP対応の無償Webアプリケーションにも期待が掛かる。PHPとはオープンソース・ソフトウェア(OSS)のスクリプト言語の一種で、同じOSSのLinuxやApache(Webサーバ)などと併用してWebアプリケーション環境でよく使われており、対応アプリケーションも多い。
マイクロソフトは近年、このPHPをWindows Serverで利用できるように力を注いでいる。まず、PHP開発で著名なZend Technologiesと提携して、Windows Server上でのPHPの安定性や速度の改善を図ってきた。例えばPHPなどが利用するCGIのパフォーマンスを高めるために、FastCGIと呼ばれるIIS用モジュールが開発され、Windows Server 2008などで利用できるようになった。Windows Server 2008のIIS 7.0ではPHPをサポートしている。
また、マイクロソフトは2008年と2009年に、「インストールマニアックス」というWindows Server 2008+ISSにどれだけ多くのOSSをインストールできるか、というコンテストを開催した。
その入賞者のブログ(次のリンク)には、インストールできたOSSが70本以上リストアップされている。その多くはPHPベースの無償アプリケーションである。次のリンクのサイト自体も著名なPHPアプリケーションであるWordPressやPukiWikiで動作している。
- Install Maniax Blog(Takashi氏によるWordPressサイト)
- インストールマニアックス出張所(jkudo氏によるPukiWikiサイト)
※インストールした各アプリケーションが実際に動作しているデモ・サイトを閲覧できる
このように、さまざまな無償のPHPアプリケーションがWindows Serverで利用できるようになってきている。もちろんFoundationでも、従来のWindows Server 2008と同じくIIS 7.0によるWebサーバ機能は標準装備しており、PHPも利用できる。また前述のFoundationの制限でも、利用できないHyper-VやServer CoreはPHPの必須要件ではない。そのほかの制限も、15ユーザー以下という環境であれば、PHPに影響しないと考えられる。
Foundationの低価格をより生かすソリューションとして、PHPベースの無償WebアプリケーションをFoundationにインストールして利用することが期待できそうだ。
【コラム】Windows Server 2008プレインストール・サーバ デル PowerEdge T105 |
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
本稿のために、デルのタワー型エントリ・サーバ「PowerEdge T105」のWindows Server 2008プレインストール・モデルを借用し、実際にFoundationを試用してみた。
PowerEdge T105が対象とするのは、小規模な企業あるいは大企業の部署といった小規模システムで、Foundationの対象規模と合致している。物理プロセッサ・ソケットは1つで、メイン・メモリ容量は最大8Gbytesという点も、Foundationと同じだ。プロセッサにはクアッドコアすなわち4つのプロセッサ・コアを内蔵した高性能のものを選べるので、例えば負荷の大きいサーバ・アプリケーションを利用したりする場合にはありがたい。 そのほかのスペックは、ハードディスクは2台まで、ネットワークがギガビット・イーサネット×1系統のみ、また電源ユニットは1台のみと、このクラスとしては一般的である。
さてFoundationの使用感だが、ひと言でいえばWindows Server 2008 Standardとの違いを感じられない。Foundation独自のユーティリティはなく、管理ツールも変わらない(Hyper-Vの役割がインストールできない点は異なる)。試しにシングル・フォレスト/シングル・ドメインのActive Directoryをインストールしてドメイン・コントローラにしてみたが、従来のWindows Server 2008と同じ手順でインストールできた。このように使い勝手が従来と同じことはメリットともとらえられる。従来のWindows Server 2008のノウハウ(書籍やWebサイトなどを含む)がそのままFoundationにも適用できるからだ。
|
Windows Server 2008 R2でもFoundationが提供予定
|
すでにWindows Server 2008の後継であるWindows Server 2008 R2が発表されており、企業向けの出荷が始まっている。そのWindows Server 2008 R2でもFoundationエディションがラインアップされることが決まっている(執筆時点でプレインストール・マシンの出荷は始まっていない)。気になるFoundationの機能制限だが、次のページを見る限り、従来のWindows Server 2008と比べて大幅な変更はない。
- Windows Server 2008 R2 エディションの違い(マイクロソフト)
これによれば、Windows Server 2008 R2で新たに追加されたプライベート・ネットワークへのアクセス機能「DirectAccess」が、Foundationでは利用できない。そのほか、Hyper-VとServer Core構成が利用できないなどの点は、従来のWindows Server 2008と変わらない。
ユーザー数が最大15名までという制限も同じだが、次のページによれば、Windows Server 2008 R2 Foundationでは、ユーザー・アカウント数が15個を超えた場合に警告が表示され、10日以内に修正しないとサーバがシャットダウンされるとのことだ。
- Windows Server 2008 R2 Foundation(Microsoft)
※「Expected Behavior」の項を参照。
プレインストール・マシンの価格については、Windows Server 2008 R2が従来のWindows Server 2008の後継であることから、別々の価格設定がされることは考えにくく、価格帯は従来と変わらないと予想される。
◆
Foundationをプレインストールしたサーバ・マシンは、予算が厳しく限られている小規模システムでも、従来のWindows Serverより導入しやすくなっている。サーバ・アプリケーションの拡充は発展途上だが、従来のWindows Server 2008と同じくPHPがサポートされるので、無償のWebアプリケーションの利用という道が開けている。ユーザー数が15名以下で、管理者がWindowsに慣れている環境で、サーバ・アプリケーションの利用も視野に入れているのであれば、Foundationは検討に値するサーバOSといえる。
INDEX | ||
[製品レビュー] | ||
Windows Server 2008 Foundation | ||
1.Foundationの位置付けと特長 | ||
2.PHPベースの無償Webアプリケーションも利用可能 | ||
- Azure Web Appsの中を「コンソール」や「シェル」でのぞいてみる (2017/7/27)
AzureのWeb Appsはどのような仕組みで動いているのか、オンプレミスのWindows OSと何が違うのか、などをちょっと探訪してみよう - Azure Storage ExplorerでStorageを手軽に操作する (2017/7/24)
エクスプローラのような感覚でAzure Storageにアクセスできる無償ツール「Azure Storage Explorer」。いざというときに使えるよう、事前にセットアップしておこう - Win 10でキーボード配列が誤認識された場合の対処 (2017/7/21)
キーボード配列が異なる言語に誤認識された場合の対処方法を紹介。英語キーボードが日本語配列として認識された場合などは、正しいキー配列に設定し直そう - Azure Web AppsでWordPressをインストールしてみる (2017/7/20)
これまでのIaaSに続き、Azureの大きな特徴といえるPaaSサービス、Azure App Serviceを試してみた! まずはWordPressをインストールしてみる
|
|