XML eXpert eXchange
第7回 読者調査結果発表

〜 Webサービス開発の現状はどうなっている?  〜


小柴 豊
@IT マーケティングサービス担当
2002/8/27

 XMLを用いたインターネットベースの分散アプリケーション構築技術「Webサービス」は、不況感の漂うIT業界の“A New Hope(新たな希望)”として注目されている。多くのソフトウェア製品が新機能の目玉としてWebサービス対応をうたい、連日のように関連仕様の標準化動向がニュースとなっている。しかし、果たしてシステム開発の現場では、どの程度Webサービスへの取り組みが進んでいるのだろうか? XML eXpert eXchangeフォーラムが実施した第7回読者調査の結果から、その現状をレポートしよう。

Webサービス開発状況:読者の4人に1人が開発を始めている

 最初に読者のWebサービス開発状況から見てみよう。現在、業務としてWebサービスやWebサービスを組み合わせたシステムを開発しているのは、回答者全体の24%であった(図1)。また「研究/実験用のWebサービスを開発している」が18%、「今後6カ月以内にWebサービス開発に取り組む予定がある」が13%となり、予定どおりにいけば2002年内に読者の約半数はWebサービス開発にかかわることになりそうだ。

図1 Webサービス開発状況(N=274)

 ここからは、Webサービス開発者および6カ月以内の開発予定者にフォーカスして、その開発実態や予定を詳しく見ていこう。

Webサービス開発用途:まずは社内連携から始めよう

 ひとくちにWebサービスといっても、その適用範囲は幅広い。そこでWebサービス開発者/開発予定者に現時点での開発用途を聞いたところ、約5割が「企業内アプリケーションの連携/統合」を選択する結果となった(図2)。Webサービスの入門書などの事例では“動的疎結合に基づく新たなBtoC/BtoBモデル”といった華やかな言葉が並ぶが、現実の開発現場では、「社内バックエンド連携」という、地味ながらも実用的な分野からWebサービスの浸透が進みそうだ

図2 Webサービス開発用途 (WS開発者/開発予定者 n=150)

情報ニーズから見える、現在のWebサービスのカタチ

 次にWebサービス開発に当たって、読者が現在必要としている知識やスキルの内容について見てみよう。基礎から応用までさまざまなレベルの選択肢を提示した結果、「SOAP/UDDI/WSDLなど要素技術の基礎」と同時に、「SOAPによるXMLデータ通信の実践方法」への情報ニーズが高くなっている図3)。読者からは“概念段階と実践部分をつなげるような実践基礎みたいな情報がもっと欲しいです”(受託開発ソフト業/SE)とのコメントもあり、エンジニアのWebサービスへの接し方が知識収集段階から実践段階へ移行しつつあることを感じさせる。

 また上記2点に加え、「Webサービスの設計/モデリング方法」の学習意欲も高くなっている。Webサービスはオブジェクト指向/コンポーネント指向の発展形である“サービス指向ソフトウェア開発”を実現する技術だが、その利点を生かすためにも、新たな分析/設計方法の必要性が認識されているのだろう。

 一方、「プライベートUDDIを使った企業内システム連携方法」のポイントが低位(13%)にとどまった点も興味深い。図2で見たように現在Webサービスの主用途が社内連携であるにもかかわらず、当項目への反応が鈍いことから考えると、現在読者が開発しているWebサービスは“UDDIを使用しない(Point-to-Pointの)SOAP-RPC”形態が多いものと思われる。

図3 WS開発で学びたい知識/スキル(WS開発者/開発予定者 n=150)

Webサービス開発/実行環境:“Java&オープンソース”が現在の主流

 後半では読者のWebサービス開発/実行環境について、その現状と今後の利用予定を見ていこう。

 まず、Webサービスをどのプラットフォーム上で開発しているか尋ねた結果、Webサービス開発者/予定者の66%が「Java環境」、35%が「Microsoft .NET環境」を選択しており、現状ではJava環境によるWebサービス開発が最も進んでいるようだ(図4)。

図4 Webサービス開発プラットフォーム (WS開発者/開発予定者 n=150)

 次にWebサービスの開発ツールについて、読者の現在の利用状況と今後の利用予定を見てみよう(図5)。まず現状では、オープンソースの「Apache SOAP」利用率が最も高くなっており、マイクロソフトの「.NET Framework SDK」「Visual Studio .NET」がそれに続く結果となっている。今後の予定では、上記3製品に加えてサン・マイクロシステムズの「Java Web Services Developer Pack」、Apache SOAP後継の「AXIS」、IBM「WebSphere Studio Application Developer」などの利用意向も上がっている。

図5 Webサービス開発ツール利用状況/利用意向

 続いてWebサービスの実行環境についても、現在の利用状況と今後の利用予定を確認しておこう(図6)。現状では、こちらも開発ツール同様オープンソースのApache「Tomcat」が最も広く利用されている。また商用のJ2EEアプリケーションサーバでは、IBM「WebSphere Application Server」のポイントがほかを一歩リードしている。2002年3月に実施した第5回Java Solution読者調査(掲載は2002年5月)では、アプリケーションサーバとしてのWebSphereとWebLogicの利用率はほぼ等しかったが、Webサービスという領域に限ってみると、仕様策定からツール提供までいち早く積極的に対応したIBMの製品にアドバンテージがあるようだ。とはいえ今後の利用予定を見るとWebSphere/WebLogic/Oracle9i ASのポイントは接近しており、アプリケーションサーバ市場は、Webサービス実行環境をめぐってより激しい競争が繰り広げられるものと思われる。

図6 Webサービス実行環境利用状況/利用意向

調査概要

  • 調査方法:XML eXpert eXchangeフォーラムからリンクした Webアンケート
  • 調査期間:2002年6月10日〜7月12日
  • 回答数:274件
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