XML関連仕様の動向を隔月お届け!
W3C/XML Watch - 8月版

XMLキー管理仕様(XKMS 2.0)が勧告に昇格

加山恵美
2005/8/16

 6月は「XMLキー管理仕様(XKMS 2.0)」とそのバインディングが勧告になりました。あらためてセキュリティ関連のXML仕様を整理してみます。またジャストシステムから発表されたXMLツールについても取り上げます。

6〜7月の勧告、勧告案、勧告候補

 それではW3Cの動向を見ていきましょう。勧告は6月に2本、勧告案は6月と7月に1本ずつ、勧告候補は6月に1本ありました。

 6月に勧告となったXKMSは2つのサービスから成り立っています。鍵情報の取得や検証を行うX-KISSと、鍵情報の登録管理を行うX-KRSSです。「XKMSバインディング」ではSOAPでXKMSが行えるように規定されています。XKMS関連仕様により、Webサービスにて公開鍵基盤(PKI)を使用できるようになります。なお大ざっぱにいうと、PKIに関する仕様には今回のXKMSのほかにXML EncryptionXML-Signatureがあります。そしてXML-SignatureをSAMLやXACMLが利用するといったように、セキュリティ技術は相互に関連性があります。

6〜7月のドラフトとノート

 ドラフトはラストコール付きが6月と7月で3本ずつで合わせて6本、ラストコールなしが6月に11本と7月に4本で合わせて15本、トータルで21本ありました。

 ラストコールがあるのは、「XQuery 1.0とXPath 2.0の正式なセマンティック」「CSS 2.1」「CCXML 1.0」「XLink 1.1」「RDF向けSPARQLクエリ言語」「XSL 1.1」です。

 ラストコールなしでは、15本のうち新出が3本ありました。まずは「Webコンテンツアクセシビリティ・ガイドライン 2.0 チェックリスト」です。これは名前のとおり、ガイドラインに沿っているか確認するためのリストです。同じタイトルで2本ありますが、画面レイアウトが違う2種類のバージョンが用意されています。もう1つの「SCXML」は、UMLで記法が定義されているハレル状態表(Harel State Tables)とCCMLを基にした実行環境に、XMLで記述された汎用的なステート・マシン(state-machine)を提供するものです。VoiceXML 3.0やCCXML 2.0、またオーサリング言語内で使用される制御言語の候補とされています。

 ノートは6月に1本のみでした。

人間にやさしいXMLの使い方

 日本発の新しいXMLのブランドになりそうです。ジャストシステムは昨年11月にXML文書を扱うソフトウェアアーキテクチャ「xfy technology」を発表し、今年6月28日にはその技術に基づく最初の製品「xfy Basic Edition 1.0」ほかの開発ツールを発表しました。その後も着実に開発を進め、8月1日からはxfy Basic Edition 1.0などのBETA R3が公開されています。今年10月には製品版が出荷される予定です。

 さてこのxfyとは? まずベースとなるxfy technologyがあり、そのソフトウェアアーキテクチャを土台に「xfy 〜」と名の付く製品が提供されます。現時点では、「xfy Basic Edition」「xfy Developer's Toolkit」「xfy View Designer」の3つの製品が準備されているところです。どの製品もJavaでできており、データはXML文書となります。基本となるxfy Basic EditionはXML文書の作成や編集、またアプリケーションの実行、さらにアプリケーション開発基盤が統合された環境です。これを支える開発ツールとなるのが、xfy Developer's Toolkitとxfy View Designerです。前者はサンプルやデバッガ、後者はGUIでXMLスキーマや画面作成ができます。

 xfy Basic Editionを見ると文書や図を編集できてワープロのようでもあり、帳票などのフォームを作成できて開発ツールのようでもあり、作成されたフォームはアプリケーションのように動作します。一見実現していることには目新しさを感じませんが、実はXML文書でこうした機能を実現する製品はこれまでありませんでした。この製品の特徴は統合しているというだけではなく、GUI環境でXML文書を操作できてしまうということです。逆にいえばこれまでXML文書というとシステム間の連携で流れるデータとして使われることが多く、人間がワープロ感覚で扱えるデータではありませんでした。

 しかしxfy製品ではタグを書くことなくXHTMLやSVGを自由自在に操作できて、それがXMLのコンパウンド・ドキュメントとして生成されます。オーサリングツールでもありますがワープロ文書ではなくXML文書だからこそ、柔軟かつ豊富に機能を実装することも容易になると期待できます。xfy製品を見ているとXMLとは「文書」だったことをあらためて思い起こされました。米国で披露されたときにはXMLの父であるティム・ブレイ氏も目を疑い感激したそうです。一気にXML文書が人間に近くなりそうです。

XBRLとNewsMLがJISに

 XBRLNewsMLJIS(日本工業規格)として制定されました。XBRLは財務報告用の情報を作成・流通・利用できるように標準化したもので、最新版の2.1が採用されました。NewsMLはニュースの報道情報をXML形式で記述するものです。もともとはIPTCが標準化しましたが、日本では日本新聞協会が中心になって普及が進められています。それぞれのJIS仕様を確認するには、JISサイトの「JIS検索」からJIS番号または規格名称を入力すれば検索できます。

JISX7206 拡張可能な事業報告言語
Extensible Business Reporting Language (XBRL) 2.1
JISX7201 ニュース用マーク付け言語
News Markup Language (NewsML)

 最後にXMLコンソーシアムの話題をお届けしましょう。XMLコンソーシアムが会員向けに発行しているメールマガジンの抜粋版が一般公開されるようになりました。ここから活動が垣間見えるかもしれません。

 ではまた再来月、お会いしましょう。


バックナンバー

2001年
 ・ 7月版 「XMLBase、XML Linkが勧告に」
 ・ 8月版 「リファレンスブラウザAmaya 5.1が登場したけれど」
 ・ 9月版 「MITが停電! そしてマルチメディア言語SMIL」
 ・ 10月版 「XMLの改定仕様はブルーベリー」
 ・ 11月版 「W3C Dayが待ち遠しい」
 ・ 12月版 「慶應大学で次世代Webに触れる」
2002年
 ・ 1月版 「XML 1.1、XSLT 2.0のドラフトついに登場!」
 ・ 2月版 「Webサービスアクティビティが発足」
 ・ 3月版 「XMLが4歳の誕生日を迎えました」
 ・ 4月版 「XMLを作った人たちが殿堂入りの栄誉!」
 ・ 5月版 「P3Pが勧告、そして怒とうの文書公開」
 ・ 6月版 「XML文書の正規化新仕様と、W3Cインタロップツアー」
 ・ 7月版 「SOAP 1.2のドラフトが発表」
 ・ 8月版 「4つのXPointerのドラフト、WSDL 1.2も登場」
 ・ 9月版 「ロゼッタネットとUCCが合併、XMLマスターに上級資格」
 ・ 10月版 「具体的な技術論へ移るセマンティックWeb」
 ・ 11月版 「XML 1.1が勧告候補、特許問題はついに決着か」
 ・ 12月版 「DOM2関連がもうすぐ完結、Webアーキテクチャも登場」
2003年
 ・ 1月版 「この1年でW3C勧告になったのは7つの仕様」
 ・ 2月版 「Webサービスの『振り付けグループ』が発足」
 ・ 3月版 「旅行業界がXML化へ、MSからは『InfoPath』が登場」
 ・ 4月版 「混迷の続くXPointerはついに落着?」
 ・ 5月版 「Webサービスの実験成功。WS-Iからは互換性ツール」
 ・ 6月版 「あいまいな部分を排除したSOAP 1.2、PNGはISO標準へ」
 ・ 7月版 「MITのW3Cオフィスはもうすぐ引っ越し、国連がebXMLを承認」
 ・ 8月版 「Webサービスが日本のAmazonからも利用可能に」
 ・ 9月版 「IEの特許侵害判決でW3Cが緊急会合」
 ・ 10月版 「IEの特許侵害判決がWebに与える影響は?」
 ・ 11月版 「IE特許問題で、W3Cが米国特許庁へ再審査を請求」
 ・ 12月版 「OfficeのXMLスキーマ公開、XML 1.1は勧告間近」
2004年
 ・ 1月版 「セマンティックWebに向けた動きが活発に」
 ・ 2月版 「日本人による標準技術発信が進むOASIS」
 ・ 3月版 「ついにXML 1.1が勧告へ、影響を受けるのは?」
 ・ 4月版 「XML Schema、3年ぶりの改訂が迫る」
 ・ 5月版 「Webサービス・セキュリティ v1.0、待望のOASIS標準に」
 ・ 6月版 「TravelXMLのWebサービス実証実験デモが成功」
 ・ 8月版 「SOAPメッセージ最適化をめぐる仕様が活発化」
 ・ 10月版 「W3Cの設立10周年を祝う記念祝賀イベント開催」
 ・ 12月版 「年の瀬に、WebとW3Cの功績に思いを馳せる」
2005年
 ・ 2月版 「XMLマスター資格試験が6月にリニューアル」
 ・ 4月版 「WS-Security 2004の日本語訳をXMLコンソーシアムが公開」
 ・ 6月版 「“愛・地球博”でビュンビュンWebサービス」
 ・ 8月版 「XMLキー管理仕様(XKMS 2.0)が勧告に昇格」
 ・ 10月版 「QAフレームワーク:仕様ガイドラインが勧告に昇格」


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