XML & Web Services 第9回 読者調査結果発表 〜 XMLとWebサービスの活用状況は? 〜 小柴 豊 アットマーク・アイティ マーケティングサービス担当 2003/5/23 |
ご存じのとおり、@IT XML eXpert eXchangeフォーラムは、この4月からXML & Web Servicesフォーラムへリニューアルした。そこでリニューアルを記念(?)して、あらためてXMLやWebサービスの活用状況を明らかにすべく、9回目となる読者調査を実施した。今日的なXML/Webサービスの用途や課題とは何か、本稿ではその結果を紹介しよう。
■XML/Webサービス活用状況
まずはフォーラム読者がXMLやWebサービスを現在どの程度業務で活用しているのかを尋ねたところ、活用率(すでに活用している)は、XMLが全体の32%、Webサービスがその半分の16%となった(グラフ1)。ちなみにフォーラム創設直後の2000年8月に行った調査では、XML活用率が14%であったことを考えると、約2年半の間にじわじわと浸透が進んでいることがわかる。この普及速度を上げるためには、今後どのような動きが必要なのだろうか。XML活用形態として注目されるWebサービスに絞って、検証してみよう。
グラフ1 XML/Webサービスの活用状況(N=410) |
■Webサービス活用の阻害要因は?
上記でWebサービスを「活用する予定はない」と答えた121人に、その理由を尋ねた結果が、グラフ2だ。該当者の過半数が、「Webサービスの有効な用途が不明確」と指摘した。読者から寄せられたコメントを見ても、
- “有効な利用方法が分からないため、経営層に提案できない。ただ、雑誌などでよく目にするため、知らなければ、という意識だけが空回りしている”
といった意見が多かった。確かにWebサービスに関する情報内容を振り返ると、華やかなコンセプト提示や規格動向/実装方法といった技術情報に比べ、地に足のついた用途提案は少ないように思われる。経済停滞が長引く今日、目新しさだけで投資に結び付かないのは道理だ。Webサービス普及を目指すベンダ各社には、規格標準化などの活動に加え、同技術を活用したベスト・プラクティスの積極的な公開が望まれるだろう。
グラフ2 Webサービス活用の阻害要因(3つまでの複数回答 n=121) |
■XML/Webサービス:現在の主用途はコンテンツ管理と1対1接続
では現在XMLやWebサービスを活用している読者の用途とは、どのようなものなのだろうか? グラフ3の青棒グラフを見ると、「社内外のWebコンテンツ管理」および「企業内アプリケーションのPoint-to-Point接続」が、ほぼ同率でトップに挙げられた。Webコンテンツ管理は、基幹系業務と違って非定型データが主であり、XSLTなどによる柔軟なデータ処理が効果的なためXMLのメリットが分かりやすい分野だ。また企業内アプリケーションのPoint-to-Point接続は、UDDIを使う必要もなく、シンプルなWebサービス構築の“足掛かり”として適切な用途といえる。現在の適用事例からは、意欲的な読者が自らXMLやWebサービスの用途を開拓している様子がうかがえる。
一方、読者が今後予定/検討している用途を見ると、「企業内の複数システム統合」のポイントが、ひときわ高くなっている(グラフ3 黄棒)。この分野には“EAIツール”と呼ばれる(一般的に高価な)専用ソフトウェアも存在しているが、プライベートUDDIによるWebサービスでこれを実現することで、経営者を説得できるような投資対効果の証明ができるかどうかが注目される。
グラフ3 XML/Webサービスの用途(複数回答) |
■XML/Webサービス関連ツール利用状況
さて後半では、XMLやWebサービスによるシステムを構築するための、各種ツールの利用状況をチェックしていこう。
まず大まかな製品分野別のツール利用状況を尋ねた結果が、グラフ4だ。読者が現在利用しているツールでは、「Webアプリケーションサーバ」および「XML/Webサービス対応の開発ツール」のポイントが高くなった(青棒)。これらは通常のWebアプリケーション構築に用いられる製品やその機能拡張版が多いため、比較的導入しやすいものといえそうだ。
また読者が“今後利用したい”ツールを見ると、「ネイティブXMLデータベース」や「帳票開発/出力ツール」など、さまざまな分野の製品に興味を持っていることが分かる(黄棒)。XMLやWebサービスによるシステム構築が進むことは、関連する各種ツール市場の需要喚起につながるものと思われる。
グラフ4 XML/Webサービス関連ツール利用状況(複数回答) |
■XML/Webサービス開発ツール利用意向
次にXML/Webサービス関連の具体的な製品利用意向を、開発ツールおよびデータベースの両分野で見てみよう。
まずXML/Webサービス開発ツールについて、読者が今後(今後とも)利用したいものを尋ねた結果、「Apache SOAP」「Apache AXIS」および「Microsoft .NET Framework/Visual Studio .NET」への利用意向が上位に挙げられた(グラフ5)。いうまでもなく前二者はJava開発用ツール、後者は.NET開発用ツールの代表製品であるが、両者への興味が拮抗(きっこう)していることからは、特定プラットフォームにとらわれないXML/Webサービス開発を志す、エンジニアのオープンな姿勢がうかがえる。
グラフ5 XML/Webサービス開発ツール利用意向(複数回答 n=328) |
■XML/Webサービス用データベース利用意向
続いてXML/Webサービスシステムに用いるデータベース製品について読者の利用意向を尋ねたところ、RDBMS市場のリーダー「Oracle」が、この分野でもトップに挙げられた(グラフ6)。Oracleは既存システムにおける高いシェアに加えてXMLサポートを強化しており、2002年にリリースした「Oracle9i Database Release 2」では、XMLデータをネイティブに格納/検索するOracle XML DBを搭載している。またOracleに次いで、オープンソースのネイティブXMLデータベース「Apache Xindice」の利用意向が高い点にも注目される。前述のApache SOAP/AXISやアプリケーションサーバのTomcatなどを組み合わせることで、オープンソースによるXML/Webサービス環境を構築することができるからだ。
グラフ6 XML/Webサービス用データベース利用意向(複数回答 n=328) |
以上、現在のXML/Webサービス活用状況と各種ツールの利用意向を見てきたが、実業務への活用度が高まるにつれ、状況も変わっていくだろう。今後も定点的に、これら基礎データの変遷に注目していきたい。
■調査概要
- 調査方法:XML & Web Servicesフォーラムからリンクした Webアンケート
- 調査期間:2003年3月17日〜4月18日
- 回答件数:410件
- QAフレームワーク:仕様ガイドラインが勧告に昇格 (2005/10/21)
データベースの急速なXML対応に後押しされてか、9月に入って「XQuery」や「XPath」に関係したドラフトが一気に11本も更新された - XML勧告を記述するXMLspecとは何か (2005/10/12)
「XML 1.0勧告」はXMLspec DTDで記述され、XSLTによって生成されている。これはXMLが本当に役立っている具体的な証である - 文字符号化方式にまつわるジレンマ (2005/9/13)
文字符号化方式(UTF-8、シフトJISなど)を自動検出するには、ニワトリと卵の関係にあるジレンマを解消する仕組みが必要となる - XMLキー管理仕様(XKMS 2.0)が勧告に昇格 (2005/8/16)
セキュリティ関連のXML仕様に進展あり。また、日本発の新しいXMLソフトウェアアーキテクチャ「xfy technology」の詳細も紹介する
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