SpeedStepテクノロジ (speed step technology)
【スピード・ステップ・テクノロジ】
インテルのノートPC用プロセッサ「モバイルPentium III」シリーズで採用された動作クロック周波数と動作電圧の両方を同時に切り替える省電力技術。2001年1月19日に発表されたモバイルPentium III-600MHz/650MHzに初めて搭載された。開発コード名は「Geyserville(ガイザービル)」。
SpeedStepテクノロジは、プロセッサに「Maximum Performance Mode」と「Battery Optimized Performance Mode」の2種類の動作モードを規定し、動作クロック周波数と動作電圧を切り替えることを可能にしている。一般に動作クロック周波数と動作電圧の両方を下げれば、性能は下がるが消費電力を下げることができる。特に、消費電力は動作電圧の二乗に比例するため、動作電圧を切り替えることは消費電力の削減に大きく貢献する。AC電源で駆動している場合は、プロセッサを最大クロック周波数で動かし、バッテリ駆動時には動作クロック周波数と動作電圧を下げることで、消費電力を抑え、バッテリによる駆動時間を長くすることができる。これにより、AC電源使用時にはデスクトップPC並の性能を発揮し、携帯時には長時間のバッテリ駆動を可能にする。
具体的には、モバイルPentium III-700MHzの場合、システムがAC電源に接続されていないときは、動作クロック周波数を550MHzに自動的に落とすと同時に、プロセッサの動作電圧を1.6Vから1.35Vに下げる。再び、システムをAC電源に接続すると、プロセッサは自動的にクロックをピーク周波数の700MHzに戻し、動作電圧を1.6Vに引き上げる。このとき、プロセッサはいったん「スリープモード」に移行してから、動作クロック周波数と動作電圧を切り替える。その後、再びシステムを「アクティブモード(通常の状態)」に戻すことで、指定されたモードに移行する。インテルによれば、この切り替えにかかる時間は約0.5ミリ秒で、実行中のアプリケーションに影響を与えることはないという。
SpeedStepテクノロジの動作モードは、システムがAC電源かバッテリ駆動かを自動的に認識して変更される。また、インテルから提供されるユーティリティ(SpeedStepテクノロジ採用のノートPCに付属する)により、動作モードを手動で変更することも可能だ。たとえば、AC電源のないところでDVDビデオの再生を行うような場合、「Battery Optimized Performance Mode」から、ユーティリティを使って「Maximum Performance Mode」に変更することで、スムースな再生が行える。もちろん、この方法で再度「Battery Optimized Performance Mode」に戻すことも可能だ。
SpeedStepテクノロジと同様な省電力技術は、ほかのプロセッサ・ベンダも開発・実用化している。例えば、Transmetaのx86互換プロセッサ「Crusoe(クルーソー) TM5x00」シリーズに組み込まれている「LongRun」という省電力技術は、動作電圧を0.05V刻み、動作クロック周波数を33MHz単位で動的に変更する。またAMDも、モバイルAthlon 4やモバイルDuronに、「PowerNow!テクノロジ」と呼ばれる同種の省電力技術を組み込んでいる。
インテルは、SpeedStepをベースにした拡張版SpeedStepテクノロジを2001年7月に公表している。この技術では、バッテリで駆動している最中でも、ソフトウェアの要求に応じて自動的に最高性能のモードに切り替わるように改良された。
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