モバイルPentium III (mobile pentium 3)
【モバイル・ペンティアム・スリー】
インテルのモバイルPC向けx86プロセッサ。「モバイルPentium II」の後継として1999年10月26日に登場した。デスクトップPC向けx86プロセッサである「Pentium III」とソフトウェア・モデルやマイクロアーキテクチャはほぼ同じだが、モバイルPCに搭載するために消費電力や発熱を抑える設計がなされている。コアの開発コード名は「Coppermine(カッパーマイン)」である。
モバイルPentium IIIが搭載されているのは、主にハイエンドやメインストリームのノートPCである。バリュー/エントリ・クラスのノートPCには、下位モデルのモバイルCeleronが使われている。
モバイルPentium IIIの基本的な仕様は以下のとおりだ。
項目 | 内容 |
マイクロアーキテクチャ | P6アーキテクチャ |
コアのクロック周波数 | 400MHz〜1GHz |
FSBのクロック周波数 | 100MHz |
1次キャッシュ | 命令:16Kbytes/データ:16Kbytesの合計32Kbytesをコアに統合 |
2次キャッシュ | 256Kbytesをコアに統合 |
製造プロセス | 0.18μm |
トランジスタ数 | 約2800万個 |
パッケージ | BGA2、Micro-PGA2 |
SIMD命令 | MMX、ストリーミングSIMD拡張命令(Streaming SIMD Extension) |
モバイルPentium IIIの主な仕様 |
前世代のモバイルPentium IIと比べると、モバイルPentium IIIでは機能やパフォーマンス、チップの占有面積、消費電力など全体にわたって改良が施されている。機能面では、Pentium IIIのストリーミングSIMD拡張命令(Streaming SIMD Extension)とプロセッサ・シリアル・ナンバという機能を、モバイルPC向けx86プロセッサとして初めて装備したのが特徴である。また内蔵の2次キャッシュは、256Kbytesという容量こそ変わっていないものの、内部転送レートやキャッシュのヒット率を向上させる改良が施されている。さらに、FSBは66MHzから100MHzに高速化された。パッケージは、表面実装用の「BGA2」とソケットに装着可能な「Micro-PGA2」に一新され、容積が限られるモバイルPCにとって重要な占有面積も、Pentium IIに比べ約20%低減されている。
モバイルPentium III(Micro-PGA2パッケージ) これはソケットに装着できるパッケージ。写真提供:Intel |
モバイルPCにとって重要な消費電力の低減については、「SpeedStepテクノロジ」と呼ばれる省電力技術が新たに実装された。これは、バッテリ駆動時にプロセッサのクロック周波数と動作電圧の両方を下げることで、消費電力を低減してバッテリ駆動時間を延長する、という技術だ。当初のモバイルPentium IIIではSpeedStepテクノロジはサポートされておらず、2001年1月19日発表のモバイルPentium III-600MHz/650MHzから実装されるようになった。SpeedStepテクノロジ対応のモバイルPentium IIIの場合、表示されているクロック周波数はAC電源利用時の最大値であり、それとは別にバッテリ利用時でのクロック周波数も規定されている。たとえばモバイルPentium III-1GHzの場合、AC電源利用時では1GHz、バッテリ利用時では700MHzで駆動される。
またインテルは、消費電力や発熱量をさらに低減した「低電圧版モバイルPentium III」と「超低電圧版モバイルPentium III」という製品もラインアップしている。その名のとおり、これらは、より低い電圧で動作可能なモバイルPentium IIIの1種であり、アーキテクチャは共通である。動作電圧が低いほど消費電力も発熱も減るため、ケース容積が小さく放熱の難しいPCにもこうしたプロセッサを搭載できる。実際、低電圧版や超低電圧版のモバイルPentium IIIは、通常のモバイルPentium IIIの発熱に耐えきれない薄型ノートPCやサブノートPCに数多く採用されている。
すでにモバイルPentium IIIの後継製品として、2001年7月31日に「モバイルPentium III-M」が登場している。
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