インドオフショアではどの契約形態がお得?
2008/12/15
インドオフショア開発における契約形態における長所/短所
では次に契約形態における長所/短所について述べていきましょう。
■開発請負契約型
○長所
開発請負契約型の長所は、事前に作業範囲やスケジュール、費用をインドのITベンダに確約させることができる点です。
また、インドITベンダの特徴として、「顧客は契約に則ったうえで最大限に奉仕する対象である」と考える傾向が強いです。従って、“契約で確約したことを是が非でも守る”という意識も強いです。そのような理由から、日本企業がインドITベンダを管理するうえでは、確約したことがよい材料となります。
○短所
一方の短所として、仕様変更&考慮不足が発生した際の調整が困難を極めます。
明らかな仕様変更の場合は、追加費用という形でお互い納得できると思います。
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しかし、グレー領域での仕様変更が発生した場合、日本企業同士のような調整は不可能と考えた方がよいでしょう。仮に調整できたとしても、調整に必要以上の工数を投じるだけです。「顧客は契約に則ったうえで最大限に奉仕する対象である」が「神ではない」というインドITベンダの考え方があるからです。
また、都度の開発請負契約では、仕事がない期間が生じやすく、その場合インドオフショア側はいったんチーム解散となります。
そのためインド側に業務知識を蓄えることが難しくなり、長期戦略的なインドオフショアを考慮する場合の短所となります。また、インド技術者はプロフェショナル志向が強く、「自身の技術を衰えさせないために開発を常に行っていたい」と思う技術者が多いのです。従って、次に実施するプロジェクトが見えない場合は、心理的不安の原因となり人材流出につながります。
当然ながら、開発請負契約型とする場合は、見積もりのために仕様を明確にする必要があります。不明確の場合に予算確保目的などで見積もりをインド側に要求すれば、インドのITベンダから見てもオフショア開発というリスクに加え、不明確なリスクが潜在することが十分推測できるため、多大なリスク係数が見積もりに乗ってくる可能性があります。
■開発委任契約型
○長所
開発委任契約型の長所は、コアとなる中心メンバーを長期間確保でき、専任にすることができる点です。そして、プロジェクト当初は範囲を絞るなどして、(第1回参照)段階的で長期戦略的なインドオフショア開発が可能となります。
○短所
しかし、短所として、ある一定期間で発注する仕事量(人月)の最低保証を行うため、仕事がなくても一定の支払いが発生します。
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ショッピングモール内部。都市部ではこのような複合施設の建設が次々と進んでいる。ITエンジニアたちは、週末にはこのような場所に出かけているようだ |
また、優秀な人材の安定的な確保が目的ではありますが、一方でインドでは人材流動率が高いという事実があります。担当者が変更になる場合、必要引き継ぎ期間(同費用内で旧担当者と新担当者を一緒に勤務させる必要期間)、引き継ぎ方法も事前に協議して契約に組み込んでおくことが重要です。
また、極端にいえば、インドオフショア側がダラダラ仕事をしていても、一定の支払いが発生します。従って、生産効率を共有する方法を事前に協議しておくことも重要です。例えば、インドオフショア開発ではファンクションポイント法が浸透しているため、単位FP値当たりの作業時間などを定期的に計測し、共有していく方法などがあります。
■混同契約型
混同契約型においては、上記に述べた開発請負契約型と開発委任契約型の、両方の長所/短所を併せ持っています。一般的に、全体作業工数が不明確な上位工程では、開発委任契約型とし、仕様が明確になった時点で開発請負契約型とする形態となります。多段階契約となるため、あまり小規模案件には不向きであり、大規模案件向きといえます。
◇
上記のように、それぞれ契約形態に応じて長所/短所があります。
そもそもオフショア開発はリスクがあるものだと筆者は考えますので、プロジェクトの特性に応じて、契約形態でリスク管理していくことは非常に重要だと思います。
また日本企業の中には、「開発請負契約型ではなく、開発委任契約型で押してくるベンダは、システムインテグレーション能力が低い」と思われるかもしれません。しかし、上記の開発請負契約型の短所が多数当てはまるようであれば、開発委任契約型とした方が、結果として成功するケースは多いです。
参考文献
- 「ソフトウエア開発モデル契約の解説」(PDF) JEITA ソリューションサービス事業委員会/2008年
- 『インドオフショアリング-広がる米国との協業』 JETRO編・著/2008年2月
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