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公認会計士・高田直芳 大不況に克つサバイバル経営戦略(7)

“ユニクロ独り勝ち”の死角をあえて問う!

高田直芳
公認会計士
2010/10/14

今回は「独り勝ち」と呼ばれる企業の代表格で、カジュアル衣料品店「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングを取り上げる。最高益更新中で絶好調の同社には、本当に死角がないのだろうか?(ダイヤモンド・オンライン記事を転載、初出2009年5月8日)

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ヒット商品連発のファストリだが
実は夏季にヒットを出せない

 死角を明確に知るためのもう一つの指標が、タカダ-デフレーターだ。第5回コラムでは、シャープ、ソニー、東芝の分析に用いて、各社のパニック度を明らかにしてきた。〔図表5〕は、今回ファストリについて描いたものである。

  これを見ると、黒い線で描いた対前年同月増減率が穏やかに推移しているのに対し、青い線で描いたタカダ-デフレーターは、毎年11月期(9月~11月)にそのパニック度が上昇していることがわかる。

〔図表5〕ファストリのタカダ-デフレーター

 〔図表5〕のタカダ-デフレーターを漫然と眺めた場合、季節的な周期性を表わしているように錯覚してしまいそうだが、そうではない。タカダ-デフレーターは“季節変動”というノイズを消去して、各期における固有のパニック度を炙り出す指標である点に、注意して欲しい。

 この波を季節的な変動だと思い込んで増産体制を築いてしまうと、翌期に過剰在庫を抱えて四苦八苦するのは、第5回コラムの電機メーカーのケースで証明した通りだ。

 現在、企業の多くが業績悪化で苦しんでいるが、それは「マクロ経済レベルでの不況のせいというよりも、各社における(ミクロ経済レベルでの)需要予測に誤りがあったせいではないか」と筆者は推測している。タカダ-デフレーターは、そうした企業に警鐘を鳴らす指標である。

 〔図表5〕のタカダデフレーターのパニック度を見てわかるように、ファストリの場合、秋物商戦(9月~11月)において毎年、ブームを巻き起こしていることがわかる。もちろん「よい意味で」だ。

 その一方で、8月期(6月~8月)は毎年、パニック度がマイナスになっている。〔図表2〕に描かれている実際売上高(黒い線)は、ナギの海を巡航速度で進んでいるかに見えたが、実際は「夏物商戦に弱い」ということなのだろう。

 以上の結果、2通りの解釈ができる。

 1つは、「ファストリは9月から11月に一大ブームを起こすほどのヒット商品を生む力を持っている」ということである。実際私も、寒風が吹きすさぶ冬場に愛犬“クメハチ”を連れて散歩をするとき、同社の保温肌着「ヒートテック」には随分とお世話になった。

 もう1つは、春夏秋冬を通してヒット商品を連発するのは、ファストリといえども難しいということである。これは、裏を返せば「カリスマ性などの“推進力”を失ったとき、秋物商戦においても失速するリスクを抱えている」とも言える。

推進力を失うと窒息しかねない
ファストリは、マグロと同じ?

 このコラムを書いているときに、「やはり現場を確かめよう」ということで、小山市内にあるユニクロを訪れた。同社には申し訳ないことだが、店内に入ったとき、以前東京の葛西臨海水族園で見た「クロマグロの回遊」を思い出した。クロマグロは泳ぐことによって口から海水を取り込み、呼吸する。「推進力」を失ったら、窒息してしまう生き物だ。

 ここから先は余談だが、「ユニクロをマグロに見立てる」など、バチ当たりな想像をしたことの間接的な因果応報だったのだろうか、車で自宅に帰る途中に速度違反を犯し、反則キップを切られてしまった。

 運転免許を取得して30年。無事故無違反でゴールド免許を保持し続けて来た不敗神話が、崩壊した瞬間である。

 警察官に指示されるまま反則キップへ署名捺印しているときに筆者が思い出したのは、いまから3年前の事件。「ビジネス・ホテル・チェーンの東横インが、身体障害者用の客室を行政検査が終わった後に会議室などに不法改造していた」という、あの事件である。

 当時の社長の言い分は、確か「時速60キロ制限の道を、67から68キロで走っても、まぁ、いいんじゃないかと思っていた」というものであった。もちろん、その後世論のバッシングを浴びて、平身低頭していたのは言うまでもない。

 むろん、筆者の場合は「まぁ、いいんじゃないか」という感覚でアクセルを踏んでいたわけではない。されど、ルール違反を犯したことは、潔く認めなければならない。その足で近くにあった金融機関へ行き、即座に反則金を納めることにした。

 「こんな疫病神など、1秒たりとも付き合いたくはない」というのが、正直な気持ちだったからだ。一瞬、「これは損金にならないなあ」と考えたのは、専門家としての悲しい習性か……。

 窓口で領収書を受け取ったとき、定額給付金相当額を、このような形で費消(←消費ではない)するとは思いもよらなかった。「このおカネがあれば、ユニクロで何が買えただろう」と、少しばかり後悔した。

 この後悔の念こそが、管理会計の世界でしばしば登場する「機会損失/opportunity loss」という概念なのである。

筆者プロフィール

高田 直芳(たかだ なおよし)
公認会計士、公認会計士試験委員/原価計算&管理会計論担当

1959年生まれ。栃木県在住。都市銀行勤務を経て92年に公認会計士2次試験合格。09年12月より公認会計士試験委員(原価計算&管理会計論担当)。「高田直芳の実践会計講座」シリーズをはじめ、経営分析や管理会計に関する著書多数。ホームページ「会計雑学講座」では原価計算ソフトの無償公開を行う。

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