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「IFRS人材」の育て方(2)

これから確保すべきは「グローバル経理人材」

野村直秀
アクセンチュア株式会社
2010/1/12

IFRSが導入された際、経理部門は組織としてどのような対応が必要になるのか? IFRS時代に求められる経理組織や経理人材の姿について考えてみよう。(→記事要約<Page 3 >へ)

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グローバル人材としての経理人材の確保

 これまでも、日本企業の海外子会社には優秀な経理人材が在籍しています。しかし、より魅力的なキャリアを求めて別の企業(多くは欧米の企業)に転職してしまう例が多いのも事実です。現地の責任者(多くの場合は日本人)からの信頼も厚く、それなりの処遇を受けていても優秀な人材を維持できなかった要因はなんでしょうか。日本語や日本企業流の意思決定の手法が原因といわれる場合もありますが、当該人材をグループ全体で活用する人事的な仕組みが不透明である点が大きいと思います。

 日本企業でも、優秀な現地採用の社員を当該現地法人の幹部に起用したり、日本を含む他国の拠点の責任者に任命したりする例も散見されるようになってきました。しかしこのようなキャリアに関する透明度の高い制度を制定している例は非常に限られていると思います。優秀な現地採用社員は、現地の日本人責任者の推薦などを受け、日本人マネジメント層に認知されてはじめて新しいポジションを提示されるケースが多いのではないでしょうか? 優秀な現地社員が経験上、このようなルートを知っていたとしても、自分のキャリアの目標やプロセスを、日本人マネジメント層の認知という不透明なものに依存するのは非常に勇気のいることだと思います。

 やはり、グローバルの人材を登用する制度を制定し、それを周知させることが優秀な現地社員をグループ内で長期的に確保・維持できる方策です。今後、各国現地法人の経理部門を含めたグローバルな経理体制を維持・高度化するためには、欠くことができない基盤だと考えます。

筆者プロフィール

野村 直秀(のむら なおひで)
アクセンチュア株式会社
経営コンサルティング本部 財務・経営管理 グループ統括
エグゼクティブ・パートナー 公認会計士
アーサーアンダーセン公認会計士共同事務所、朝日アーサーアンダーセン株式会社、KPMGコンサルティングを経て、2006年にアクセンチュア入社。大手メーカーの決算早期化プロジェクトや大手金融機関の内部統制強化プロジェクトなどを担当。共著書に「内部統制マネジメント」など。IFRSフォーラムで「IFRSと経営」を執筆。アクセンチュアのIFRSチームを率いる(Webサイト

要約

 IFRSが導入された際には、経理部門は組織としてどのような対応が必要になるのか。今回は求められる経理組織や経理人材の姿について考えてみる。

 日本企業では、連結財務諸表作成のための各種調整仕訳を本社経理部門が一括処理する体制を採用していたケースが多い。しかし、今後IFRS基準での連結財務諸表の作成が義務付けられることになると、現地会計基準(日本基準を含む)との調整仕訳及び注記情報の作成工数の増加や作成期間の長期化が想定され、日本本社経理部門での集中処理が難しくなるケースが増えるといわれている。

 欧米のグローバル企業では、日本企業と同様に本社集中型の連結決算業務体制を維持している企業もあるが、多くは、親会社が求める経理処理ルール(IFRS等)に基づいた連結パッケージの作成を国内外の子会社に義務付け、本社での連結処理は集計・相殺処理及び報告書作成業務などに限定しているケースが多い。

 また、各子会社における経理業務の負担軽減、及び効率化を図るためにクロスボーダーのシェアード・サービス・センター(SSC)を地域ごとに設立したり、より一層の効率化と経営の自由度の確保を進めるために当該業務をアウトソーシング(BPO)する企業も多い。

 日本企業も、欧米のハイパフォーマンス企業の対応策を参考にグループ全体の経理業務体制の最適化を目指し、SSCやBPOも選択肢として新たな経営環境に応じた体制を構築していくことが必要と考えられる。

 現在のような厳しい環境の中で日本企業が勝ち抜いていくためには、経理部門も新しい状況に対応して高度化する必要がある。従来の日本企業の本社経理部門は、ほぼ100%日本人社員で構成されていた。今後はグループ全体の競争力強化のために世界各国から広く人材を確保する必要があり、本社の経理部門もインターナショナル化が求められる。“グローバル・スタンダード”としてのIFRSが、グループ内の経理的な意味での“共通言語”として活用できる基盤は整いつつある。

 グループ内の優秀な経理担当者が本社経理業務の一端を担うことも十分可能だ。国際的に事業展開している日本企業では、研究開発部門や製造部門、及び営業部門などの主要な幹部社員が外国人であるケースも増えてきており、経理部門も同様の変革が必要となってきている。また、日本人の経理部門社員自身もこのようなグローバルな経理人材とのコラボレーションを通じて、より視野の広い見識を確保し、グループの中でのより高度な役割を担える素地を養うことが可能となる。

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