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内部統制の過去・現在・未来(1)

内部統制1年目の総括をしよう

原幹
株式会社クレタ・アソシエイツ
2010/2/16

日本の内部統制報告制度が初年度を終えた。そもそも日本の同制度はどのような内容で、どう運営されてきたのか。今後のIFRS適用にも影響を与える日本の内部統制報告制度の現状の総括と制度の定着、継続的な改善を探る(→記事要約<Page 3>へ)

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 日本の内部統制報告制度(いわゆるJ-SOX)は2009年3月度の決算で大半の上場企業が最初の年度を終え、1つの踊り場を迎えた。この内部統制報告制度、制度の面や実務の面、さらにはITの面でユーザー企業に多大な影響をもたらしたわけだが、制度の趣旨にかんがみて企業側の対応は期待された姿になったのだろうか? 内部統制報告制度の次のステージに向けて、現状の総括と今後の展望を俯瞰(ふかん)する。

日本の内部統制報告制度の概要と特徴、歴史

 日本の内部統制報告制度の柱は、大きく金融商品取引法(金商法)・会社法・東証など取引所による規制の3つに分かれる。ここでは金融商品取引法と会社法について触れる。

金融商品取引法における内部統制報告制度

 企業の会計不祥事に端を発した内部統制報告制度の整備は、米国で先行して2004年より実施されたサーベインス・オックスリー法(通称SOX法)の適用を機に一気に加速した。日本においても2006年6月に旧証券取引法一部が改正され、金融商品取引法(金商法)が施行されたことで、金融庁を中心に新たな制度の構築が進んだ。

 2007年1月31日に金融庁の企業会計審議会が公開した「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準並びに財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準の設定について(意見書)」(金融庁の公表資料)が、実質的に日本の内部統制報告制度の拠り所として広く認められるようになった。いわゆる「内部統制基準」「内部統制実施基準」の制定である。

 そこでは「財務報告に係る内部統制」すなわち、決算書類を作り上げるプロセスにおける「重要な欠陥」がないかどうかに焦点が当てられた。

 「内部統制基準」の特徴は、内部統制のフレームワークとして広く認知されている「COSOフレームワーク」に大胆な改訂を加えたことにある。COSOフレームワークとは、1992年に米国のトレッドウェイ委員会組織委員会(COSO)が策定した内部統制のフレームワークであり、実質的な標準として広く利用されている。

 具体的には、次のような改訂を加えた。

「国際化」を目指して……「資産の保全」という目的を追加
「最新化」を目指して……「ITへの対応」という基本的要素を追加

 そして、金融商品取引法における内部統制報告制度においては、具体的には次の2つの文書が成果物とされる。

「内部統制報告書」(経営者が自社の内部統制について評価した結果について表明する文書)
「内部統制監査報告書」(経営者が評価した内部統制報告書の内容について、重要な虚偽がないかどうか監査した結果を外部監査人が表明する文書)

会社法における内部統制報告制度

 一方の会社法では、業務執行者(代表取締役、取締役)に対する善良な管理者としての注意義務(善管注意義務)の一環として、内部統制の整備義務が課されるようになった。具体的には、大会社(資本金5億円以上、負債200億円以上)において取締役会が内部統制の体制整備について「決定」することを義務付けており、ここでの内部統制は財務報告に限定せず、会社業務全般が対象となる。

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