[Tech・Ed 2000]Microsoft.NETの開発環境をデモ

2000/7/27

 マイクロソフトが主催する開発者向けのカンファレンス「Tech・Ed 2000 Yokohama」が、パシフィコ横浜にて7月26日より開催された。

 今年6月下旬〜7月上旬にマイクロソフトが米国で開催したカンファレンス「Forum 2000」「PDC(Professional Developer Conference)」では、「Microsoft.NET」を中心とした戦略の大転換を発表したこともあり、今回のTech・Edでは、この新しいフレームワークと関連製品の説明が全体のウェイトの多くを占めていたといえる。特に.NET戦略が発表されてから、日本では初のカンファレンスなこともあり、来場者の関心も高かったようだ。

 というのも、これまでの国内での情報は、あくまで同社のサイトや各メディアのニュースで報道されるレベルの内容であり、概論ばかりで雲をつかむような面が多かった。ところが、今回のTech・Edは、開発者にとって自らの業務に関連する具体的な情報を入手できる場となったからだ。

 基調講演に続くゼネラルセッションでは、一般ユーザーやメディア向けの情報ではなく、開発者がもっとも気になる「.NETの従来の開発モデルとの相違部分」「.NETの構造や開発環境」などについて具体的に解説が行われた。

  • プラットフォームがWindows以外の機器(PDAや携帯、インターネット端末など)にも広がり、必ずしもWin32 APIを意識する必要がない
  • データやファイルの取り扱いはファイルシステムやプロトコルに依存したものから、XMLによるデータストアへ
  • サービス(アプリケーション)と実行環境や実装技術を分離

 などのように、.NETではWindows以外のプラットフォームのサポートや、業界標準であるXMLへの積極的な取り組み、SOAP(Simple Object Access Protocol)の提案など、新たな概念が加わり、開発環境がより複雑化するように思えてくる。ところがWeb開発という点では、従来の開発環境により改良を加えることで、むしろ容易にさえなっているという。

 まず、コンポーネントの作成において従来のCOMで必要だったIUnknownやIDispatchといったような面倒な定義は必要なくなり、ネットワークの同期・非同期を意識しないプログラミングモデル、必要なプロパティの追加のみでサービスを作成できるフレームワークなどが提供されるという。壇上では「Visual Studio.NET」上でC#やASP+を用いて実際にアプリケーションを構築していくデモを実演、Web対応アプリケーションを従来の開発環境よりも簡単に記述できることを強調していた。

 同社では、これらのプログラミング環境への移行は段階的に行っていくものとし、新しいプログラミングのフレームワークであるBase ClassesとWin32 APIの併用をはじめ、新旧コードの混在や、同一サーバ上でのASPとASP+の動作が可能など、柔軟性をもった開発環境を用意していくつもりだ。

 基調講演が終了した26日の午後からは、「ソリューション」「ナレッジマネジメント」などの各ジャンルに分かれ、同日発表のニュースリリースにも登場したMicrosoft BackOffice 2000や.NET開発ツールなど、個別の製品やテクノロジーにフォーカスしたセッションが行われた。ただ全体を見渡す限り、開発ツール等の製品こそ出揃っているものの、新たな概念であるためか基本となる部分のテクノロジー解説がメインで、一般への認知はこれからといった印象が強い。

「『.NET』がいまひとつ理解されにくいのは、開発のベースとなるテクノロジーの解説ばかりで、実際にそこで構築されるアプリケーションの姿が見えないから」とゼネラルセッションのスピーチの中でマイクロソフト シニアテクニカルエバンジェリストの萩野正義氏が語るように、フレームワーク中心の解説から一歩踏み込んだ魅力的な開発環境を開発者に向けて提示できるかが、今後の.NET普及のカギを握っているに違いない。

Tech・Ed会場に展示されていた、NECのItanium×16wayサーバを用いた64bit Windows 2000のスケーラビリティのデモ 来場者には各々1枚ずつスマートカードが配られており、会場に設置されたWindows 2000マシンを利用する際のログオン認証で使用する

[関連リンク]
Tech・Ed 2000のページ
「Microsoft .NET Enterprise Serversを2000年末より提供開始」のニュース

情報をお寄せください:



@ITメールマガジン 新着情報やスタッフのコラムがメールで届きます(無料)