Webの負荷テストとモニタリングは今後のECに不可欠
パフォーマンス管理製品のマーキュリー副社長に聞く
2000/8/10
マーキュリー・インタラクティブ(Mercury Interactive Ltd.)社は1997年に設立されたテスティングツールベンダ。この市場の50%以上のシェアを誇る。現在、本社のある米国、イスラエルをはじめ、世界40ヶ国以上でビジネスを展開中だ。来日した副社長のユリ・アグモン(Uri Agmon)氏に話を聞いた。
――御社の製品とビジネスについて教えてほしい
アグモン氏 テスティングとモニタリングのツールの開発と販売を行っている。テスティング・ツールには、ファンクションをテストする「WinRunner」、アプリケーションの稼動を調べる「TestDirector」、そして負荷を調べるエミュレータ「LoadRunner」がある。特に負荷テストは、ここ2年、実ビジネスでのインターネット利用により急成長中の分野だ。ミッションクリティカルな世界では、トランザクションに耐えきれないシステムはビジネスに支障をきたす。ほんのわずかのあいだのシステムダウンを、カスタマーやビジネスパートナーは待ってはくれない。99%では不充分。事前にテストを行えばより100%に近づくことができる。
モニタリングツールは新しい市場。テスティングを終え実稼動に入ったあとも、トランザクションを管理する必要があると判断して「Topaz」を開発し、提供を開始した。このツールの導入により、ITマネジャーやシステム管理者の負担は軽減され、システムダウンの際の復旧もす早く行える。特徴は、ユーザの立場からWebサイトを監視する点。他社製品はルータ、サーバなどのパフォーマンスを監視するものが多いが、わが社の製品を用いれば、カスタマーが、あるWebサイトで商品を購入するのに何秒かかるのか、といったことが分かる。このような情報こそIT管理者が必要としているものだ。
顧客には世界最大の電子取引所ナスダックを運営するNasdaq-Amex Market Groupがある。1日平均1200万件のヒットがあり、多いときは2000万件を記録することもあるという。同社はテスティング製品とモニタリングの製品を導入して、システムの安定した運用を続けている。
99年度の売上は1.87億ドルで、2000年度の第2四半期の売上げは6940万ドルを記録した。日本でも2倍の成長率で伸びている。
――世界的にインターネット上でのECが注目されているが
アグモン氏 現在、売上げの75%を占める分野がインターネット上のECに関する製品。BtoBを中心としたビジネスの伸びに応じて、われわれのモニタリングツールの需要が増すと考えられる。今後もこの分野に注力していくが、わが社では特に、“アプリケーション・パフォーマンス・マネジメント”と呼んでいる。テスティングも引き続き堅調な伸びを示めすと予測している。ユーザーのメリットとして、テスティング製品に関しては、自社のサイトの運用に自信を与える。モニタリングに関してはサイトのユーザビリティの向上につながり、それが他社サイトとの差別化に結びつく。
――販売戦略についてはどうか?
アグモン氏 さまざまな顧客の形態に応じたソリューションを提供するため、パッケージ販売だけでなく、負荷テストとモニタリングに関してはホスティング・サービス、“e-サービス”を開始した。テストの規模に応じて細かな価格設定を行っている。
直販だけでなく、日本IBMやNTTデータなどSIやコンサルティング会社などと幅広い代理店契約を結んでいる。また、日本でも今年の3月からWeb上での販売を開始した。また、プライベート・レベリングといって、サードパーティにホスティングサービスの“e-サービス”を行う権利を与えるプログラムも用意した。
米国では米Tivoli Systemsとアライアンスを結び、Tivoliのアプリケーションパフォーマンスマネジメント製品に「Topaz」を組み込んで販売している。現在、ASP、ISP、AribaやBroadVisionなどのWebアプリケーションベンダ、BEA SystemsやSilver Streamなどのアプリケーションサーバベンダとパートナーシップを結んでいる。今後もパートナー戦略を進めて行く。
――今後の課題は?
アグモン氏 市場としては、ワイヤレスWebアプリケーション分野。本日(8月9日)、ワイヤレスアプリケーション向けのソリューションを発表したばかりだ。今後、PCから携帯電話、携帯通信機器に移行することは確実で、わが社としてもそのニーズに応えていく。WAP(ワイヤレス・アプリケーション・プロトコル)やiモードに対応し、端末とゲートウェイ間、ゲートウェイとコンテンツプロバイダ間でのファンクションと負荷テストを実現する。また、来月にはリアルタイムモニタリングツールも用意する予定だ。すでにNokia社をはじめ数社と協力関係を結んだ。
機能ではモニタリングツールに関して強化を図る。現在のモニタリングツールでは、どのセクションで問題が生じているのかの確認はできるが、将来的にはピンポイントで、具体的な個所を知らせるサービスを実現したい。最終的にその個所を自動的に直してくれる技術を提供できればいいが。
――日本市場をどう見る?
アグモン氏 日本にオフィスを構えたのは1997年。市場を理解するのに1年を要した。大きな市場性の違いとして、日本ではテスティングの重要性の認識が低い印象を受けた。開発者は自分たちの手で完璧な製品を作り上げることを目指しているようで、例えば多くの日本企業がQA(Quality Assurance:品質管理)部門を持たないことが端的にそれを示している。また、パフォーマンステスティングについても、認識が低いと感じる。世界を相手にビジネスを行う上で、サービスが停止する時間があることは信用の低下につながる。日本ではこれから先、このニーズが高まると予測しており、製品だけでなく、わが社の体制も整える。現在の35名のスタッフを抱えているが、大阪にもオフィスを設ける予定だ。
日本での顧客には、金融各社のほかブリジストン、ニフティ、証券会社のオンライントレードなどがある。また、ソニーがAIBOの申し込みをWebで受け付けたとき、1回目に負荷オーバーとなりシステムダウンした。2回目以降、わが社のテスティング製品を用いて大量トランザクションに耐え得るシステムを維持した。
日本は重要な市場。これからもセミナーなどを通して、テスティングやモニタリングの必要性とわが社の認知度を高めていきたい。
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Mercury Interactive Ltd.
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