半導体の父、ジャック・キルビー氏来日

2000/9/29

 テキサス・インスツルメンツ(TI)の顧問ジャック・キルビー(Jack Kilby)博士が来日、9月28日、都内で会見を行った。

 キルビー氏は、1958年にICを発明し、半導体の父とも言われる人物。新入社員だったキルビー氏が発明したICはトランジスタ1つのシンプルなもので、現在、米国スミソニアン博物館に所蔵されている。このICが今日の、低価格、高性能、ハイスピードなシステムLSIをはじめとしたあらゆるIC開発の基本になっているのだ。

 キルビー氏は冒頭で「成田空港でたくさんの人が携帯電話を片手に話をしているのを見て、それがごく自然であることに感銘を受けた」と述べてスピーチをはじめた。

ジャック・キルビー氏 73歳
大切なことは「粘り強さ」という

 今でこそ繁栄しているIC技術だが、これまでの道のりは決して平坦なものではなかったという。一時期、材料がコスト高のため将来性が危ぶまれ、回路設計者は職を失う危機に面した。70年代に入りインテルが口火を切り、薄利多売で大量生産するようになった。そして、今の安価なPCや携帯電話など、ICのもたらした技術による革命がある。「業界の本質は変化するもの。われわれは変化に合わせるしかない。前進するにあたり、新しい技術を望む顧客からの激励の言葉に大きく支えられた」と振りかえる。

 「(自分の発明は)池に小石を投げるようなもので、どのように波が広がっていくのか予想もつかなかった」(キルビー氏)。 キルビー氏は最初の発明を「熟考の末にふと浮かんだ、ほんの小さな、簡単なソリューションだった」と語る。「最初の小石が投げられて40年後、どんな波及効果を及ぼしているのか、確かめに日本に来ている」と述べた後、90年以降、半導体分野の主導が日本から米国に移ったことについて「日本人が創造性、競争力を失ったわけではないと信じている」と言及した。

 先日、ICは米国郵政公社の発行する、20世紀の偉業や流行、人物をたたえる記念切手の60年代シリーズに選ばれた。現在の情報技術時代の基礎を築いた一人は、自分の発明の成果と発展を静かに見守っている。

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日本テキサス・インスツルメンツのホームページ

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