スタートを切った車載システムの覇権争い

2000/10/19
(10/16/00, 9:41 p.m ET) By Antone Gonsalves, TechWeb News

 コンピュータ大手各社の間では、今後発展する車載コンピューティング市場におけるポジション争いがはじまっている。

Sun、GMの子会社と提携

 Sun Microsystemsは10月16日、車載コンピュータシステムを稼働するJavaベースのプラットフォーム構築に向けた共同開発分野でOnStar(General Motorsの車載技術事業部)と提携することを発表した。

 この発表は、Microsoftが同社の「Windows CE for Automotive」ソフトウェアの第3バージョンを公開した翌日に行われた。今月初めには、Palmと自動車用品サプライヤーのDelphi Automotiveが、車内でのインターネットサービス提供に関する提携を進めている。

 Sunの自動車戦略マーケティングマネジャー、Jim Destefano氏によると、このJava技術はSunのJava 2 Micro Editionプラットフォームがベースとなるが、車載ソフトウェア専用の新しいAPIが組み込まれることになるという。例えば、このアプリケーションには車のエンジンやタイヤの空気圧などのメカニズムに関する情報を監視したり表示したりするダッシュボードユーザーインタフェースとセーフティシステムが含まれる。

 Destefano氏がミシガン州デトロイトで開催されているConvergence 2000カンファレンスで明らかにしたところによると、Java自動車用プラットフォームはOnStarアプリケーションを動作させることになるが、あくまでも目標はどの車載アプリケーションでも動かせる標準環境を開発することだという。

 GMがJavaのクロスプラットフォーム機能に関心を示していることから、OnStarの技術はほかの自動車メーカーのシステムにも移植することができる。OnStarはトヨタのLexus事業部の2001年モデル、そしてホンダのAcura事業部の2002年モデルのオプションとして既に計画されている。

 「OnStarもわれわれ自身も自動車業界全体のことを思って、これが可能かぎりオープンになるよう開発を進めており、自動車メーカーもサプライヤーも、何かに活用できるものとなることを期待している」(Destefano氏)

携帯機器との連携も――注目のテレマティックス

 当然ながら、Sunにとっての最大のライバルMicrosoftも、同社のWindows CEとCar.Netプラットフォームがナビゲーションシステム、通信、およびエンターテイメントの各サービスといった自動車関連技術を運用するための業界標準になることを期待している。

 両社は、2006年までに新車全体の50%近く、そして高級車の90%に搭載されるとアナリストが予測するこの分野の技術でのリードをとろうと必死だ。

 SunとMicrosoftは両社のプラットフォームを携帯電話やPDAにまで拡張する計画だ。例えば、携帯電話を使って車のカギを開けたり、エンジンをかけたり、インターネットにアクセスすることもできる。この通信技術と電子機器の組み合わせはテレマティックス(telematics=telecommunication technology + electronics)と呼ばれている。

 IBMとIntelも10月16日に、テレマティックスアプリケーション用の標準ベースの開発および導入環境で協力することを発表した。IBMは同社のJavaアプリケーション開発ツール「VisualAge Micro Edition」を提供し、Intelは同社のマイクロチップアーキテクチャ「XScale」で寄与する。

 Palm、Delphi、およびMayfield Fund(シリコンバレーのベンチャー投資会社)は、MobileAriaという新会社設立を計画している。車のカップフォルダに装着するデバイスを使って移動中に電子メール、最新ニュース、およびデジタルエンターテイメントなどのワイヤレスサービスを提供することになるという。価格面の詳細は明らかにされていないが、関係者によると、同デバイスは最高500ドルで販売され、 1カ月10ドルから50ドルで提供されているPalmオーガナイザーよりも低価格でサービスが販売されるという。

サービス内容か価格か

 Current Analysisの業界アナリスト、Eddie Hold氏によると、車載コンピュータ市場は黎明期にあり、明らかに有力な企業というものはないのだそうだ。「チャンスは誰にでも公平にある。参加者は、当分は現実のものとならない夢を追いかけることになる」(Hold氏)

 Hold氏によると、業界は既存のネットワークよりも多くのデータを転送できるよう帯域幅を拡大し、ドライバーが毎月の使用料を支払うのを厭わないような魅力的なサービスを開発する必要があるという。

 一方で、これらの企業にとっての第一歩は、各社のプラットフォームをとにかく多くの車に搭載することになる。

 今会計年度中に目標とする100万人の加入者を達成すると見込んでいるOnStarは、ナビゲーションシステムと、電子メールや株価情報などの各種サービスにアクセスするための音声駆動式のインターネットシステムを発売している。同システムは自動ロードサイド救急支援機能を搭載するほか、盗難車をトラッキングする機能もある。

 アナリストの予測にもかかわらず、消費者は、システムの追加分と毎月の使用料からなる車載PC分の上乗せ価格をあまり支払いたくないと感じているようだ。登場から4年後の今も、Windows CEの搭載車数はわずか数千台に過ぎない。

 果敢な立ち上げ計画を明らかにしながら、GMはシステムをもう少し洗練する必要があるとしてCadillacコンピュータのデビューを今秋から来年に延期した。GMは消費者の関心が少しでも高まればと、コンピュータの機能を通常2000ドル程度で販売されるナビゲーションシステムに無償で追加することを明らかにしている。

[英文記事]
This Java Won't Stain Your Upholstery

[関連リンク]
米サンの発表記事
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