米Allaire、アプリケーションサーバJRun 3.0日本語版を出荷

2000/10/21

 JRun 3.0は、米Allaire社が今年6月に出荷を開始したJ2EEを完全にサポートするアプリケーションサーバである。もともとこのJRunは、Live Softwareによって開発、販売されていた定評あるサーブレットエンジンがベースとなっている。米Allaire社は、Live Softwareの買収によってサーバサイドJavaのテクノロジーを手に入れ、さらに今年1月にも、EJBサーバを持つValto Systems社も買収することで、JRunをEJB1.1に対応させた。それがJRun 3.0である。

 JRun 3.0は、国内ではこれまでも英語版を入手可能だったが、10月24日にようやく日本語版が出荷となる。今回のバージョンにはJRun 3.0 Developer Editionが無償で用意される。開発用途に特化された製品で、無期限で3クライアントアクセスライセンス付きが開発用に使用できる。これはすでにダウンローダブルになっており、いつでも試用が可能だ。JRun 3.0は、国内ではシリウスが総代理店をつとめ、サポートを行っていく予定だ。

 価格は、Professional版(1CPU)が19万8千円〜。Enterprise版(1CPU)が120万円〜。開発者向けのDeveloper Editionは前述通り無償で提供される。

 @ITでは、日本国内のリリースに合わせて来日した米Allaireのプロダクトマーケティング部マネージャのダン・マーフィー(Dan Murphy)氏、国内のマーケティングを担当するシリウス ネットビジネス営業部 営業部 部長代理 松永智氏に、JRun 3.0が目指す市場と製品の特徴について聞いた。

■J2EE完全準拠のJavaアプリケーションサーバ
 従来までサーブレットエンジンとして定評のあったJRun 3.0だが、EJB 1.1を完全サポートすることによって本格的なJavaアプリケーションサーバとしての製品の性格を持ったことになる。ただ、JRun 3.0は「WebSphereやWebLogicといった大手DBベンダーのアプリケーションサーバとはうまくすみ分けを行っていきたい」(米Allaire ダン・マーフィー氏)という。「ユーザーの規模は問わないが、システムサイズでは小・中規模な市場をターゲットにしていきたい。WebSphereやWebLogicなどが最もクリティカルなエンタープライズ市場を狙っているのに対し、我々はマスエンタープライズを目指す」(ダン・マーフィー氏)。

米Allaire ダン・マーフィー(Dan Murphy)氏

 小・中規模をターゲットとするとは言え、JTA 1.0(Java Transaction API)対応のトランザクションサーバ機能をもち、JMS 1.0(Java Message Service)仕様に準拠したメッセージサーバも装備している。これはEJBによって構築されているためEJBから直接メッセージの送受信ができるだけでなく、EJBが非同期メッセージを受信することも可能にするという。

 また、Allaire ClusterCATSを使用したWebクラスタを構成することが可能となっている。Allaireのクラスタ技術の大きな特徴は、シスコのLocal Directorを使いサーバの負荷状況をより正確に把握できることだ。シスコと米Allaireはクラスタリング技術において提携関係にあり、今後もAllaireのサーバ製品との協調を図っていくという。

■最大の売りは「Ease To Use」
Allaireが今回のJRun 3.0で最も売りにしているのは「Ease To Use(使いやすさ)だ。アプリケーションサーバではサーバサイドの複雑な設定が敷居を高くしているが、JRun 3.0ではJMC(JRun Management Console)によって容易な管理を可能にしている」(ダン・マーフィー氏)。JMC(画面1)はWebブラウザからリモートでサーバを管理できるツールである。

画面1      (画面をクリックすると拡大します)

たとえばJDBCの設定やプーリングの設定など、本来であれば複雑な設定をGUIベースで簡単に設定できる(画面2)。その他、外部Webサーバとの接続やEJBのデプロイなども、すべてウィザードで可能だ。一方、慣れたエンジニアのためにはコマンドやプロパティファイルの設定という手段も提供されている。

画面2      (画面をクリックすると拡大します)

■JRun Studio 3.0
Ease To Useのもう1つの大きな理由が「JRun Studio 3.0」の提供だ。JRun Studioはデバッグの難しいサーブレット、JSPに対して対話型のリモートデバック機能を提供している。また、JSPについてはJSP 1.1の拡張タグに準拠した20種類のJRun Custom Tag Liraryが用意され、生産性の向上を図っている。また、<sql>タグに埋め込むSQL文を自動生成する機能も付属する(画面3)

画面3    (画面をクリックすると拡大します)

その他には、すべてのJSPのタグに、属性値を見られるダイアログがポップアップで表示されたり、HTMLに対するコード支援機能もある。

株式会社シリウス ネットビジネス事業部 営業部 部長代理 松永智氏

 サーバサイドのデバック機能は、InpriseのJBuider 4も対応するなど、いま注目の分野である。デバック機能の完成度に期待の大きいJRun Studioだが、残念ながら出荷はJRunと同時ではない。「JRun Studioの動作には、JRun のサービスパック1が必要。JRun Studioの出荷はサービスパックが出た後になるため、国内では年末くらいの出荷になる」(シリウス ネットビジネス事業部 営業部 部長代理 松永智氏)という。

 もう1つの大きな特徴はWMLへの対応である。WMLはWAPサービスのコンテンツ記述に使われる言語である。AllaireはColdFusionでもWMLに対応しているが、今後大きな市場になると予測される携帯コンテンツ市場にも目を向けている。

■JRunのめざすマーケットとアドバンテージ
JRunは非常に価格の安い製品である。Professional版(1CPU)で19万8千円、Enterprise版(1CPU)でも120万円と低価格だ。「低コストに導入できる点も他社製品に対するアドバンテージ」(ダン・マーフィー氏)。

 国内でのこれまでのJRunの販売実績は「今期で約1200本を販売した。現在では月に100本のぺースで売れている」(松永氏)という。「来期の目標は2500〜3000本と見ています」(松永氏)。

 米国での実績は「Q3で約3万本を出荷した。フリーダウンロードのDevelpoer Editionでは半年間で約15万本のダウンロードを記録している」(ダン・マーフィー氏)という。また、米国からレポートされてくる日本人による米国サイトからのDeveloper Editionのダウンロード本数は「先月の実績で1週間あたり約300本を記録している」(松永氏)という。

 ところで、米Allaireといえば、どちらかというとWeb構築のRADツールでは世界的に圧倒的なシェアを誇るColdFusionで知名度が高い。JRunの米国でのマーケットはColdFusionユーザーが引き継いだものなのだろうか。回答は「No」だという。「米国におけるJRunとColdFusionのユーザーが重なる比率はおよそ5%」(ダン・マーフィー氏)。

 だが、今後「米AllaireはColdFusionとJRunの統合を進めていく。ColdFusionはプレゼンテーションは強いがビジネスロジックはやはり弱い。しばらくはJRunと補完し合う製品として存在するが、将来的には統合する」(ダン・マーフィー氏)予定だという。

 大手DBベンダーへのアドバンテージとしてダン・マーフィー氏は「IBMはJ2EEの最新バージョンに常に遅れて対応している。我々はEJB 2.0βに対応したJRunをすでに稼動させており、今後は常に最新のJavaに対応した製品を世に送る予定だ」と言う。さらに同氏は「今後、ビジネスロジックの記述はEJBにどんどんシフトするだろう。EJBへの積極的な対応が非常に重要だ」とも語った。

 もう一方での米Allaireの面白い動きとして、同社はノキア、エリクソンのJava搭載次世代携帯電話へJRunを提供する予定がある。IBMやBEA Systems、Oracleといったデータベース専業ベンダーに対して、はじめからWeb構築に特化した製品開発を行ってきた同社であるだけに、非常に興味深い動きが多い。今後のJRunとColdFusionの製品展開がどうなるかが注目される。

(宮下知起)

■Edition機能比較表

機能 Professional Enterprise Developer
JavaServer Pages 1.1
Java Servlet API 2.2
Enterprise JavaBeans 1.1  
メッセージサーバー(JMS 1.0)  
トランザクションサーバー(JTA 1.0)  
Webクラスタ    


[関連リンク]
株式会社シリウス
Allaire Corporation

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