Notesの産みの親の極秘プロジェクト

2000/10/26
(10/23/00、 12:01 p.m ET) By Barbara Darrow、 TechWeb News

 Groove Networksは10月24日、最高機密扱いで3年前から開発を進めてきた技術を披露する。しかし、一部の詳細は既に漏れ始めていた。

予想通りコラボレーション製品?

 情報筋によると、Lotus NotesのクリエーターであるRay Ozzie氏が設立したGroove Networksは、カスタマーサポート、オンライン学習、およびコラボレーションを楽にすべくWebと各種クライアントデバイスと回線を活用する「Groove」と呼ばれるソフトウェアを発売する予定だという。

 この計画に詳しいあるアナリストは、機密保持契約の期限が切れていないことに気づかずに、「多数のインフラを含んだ、非常に範囲が広く、奥行きもあるプロジェクトだ」と口走ってしまった。

 情報筋によると、同社はソフトウェアクライアントとインフラを提供し、異なる場所にいる人々の間だけでなく、異なるベンダーのソフトウェアアプリケーションの間でも共同作業を楽にすることに貢献するという。

 Grooveから詳細な説明を聞いた2人目の人物は、「こう考えるとよいだろう。DominoやExchangeといったコラボレーションソリューションの問題は、これらが前後関係の状況が加味されないコラボレーションだということだ。つまり、SAPアプリケーションを使っていてサードパーティーのベンダーに需要予測の問題を相談する場合、現在は使っているアプリケーションから電子メール環境に切り替えなければならない。だが、SAP上で軽いものが動作していれば、その必要はなくなる」と語った。この人物も、同社に近い人々、もしくは詳しい説明を受けたほかの数十人同様、名前を明かしてくれなかった。

 Groove Networksが米国特許商標庁に提出した書類によると、同社は「国際コンピュータネットワークを経由するメッセージ、データ、およびソフトウェアの電子ストレージ」のほか「個人間非同期コミュニケーションや、情報を共有するサードパーティーソフトウェアプログラム、コンピュータサーバ/プロセッサ、およびユーザーの間のコラボレーションを促進並びに調整するために利用するソフトウェア」の開発を進めているという。この申請書類にはほかにも、「教育サービス、すなわち、ライブおよびオンラインのセミナーやコンピュータ方面のトレーニングの実施」という明確な記述がある。

 同社のスポークスマンによると、2年前に提出されたこれらのドキュメントを深読みし過ぎないでもらいたいという。しかし、同社の説明を聞き、この書類に目を通した複数の情報筋によると、これらの抜粋部分から「ほぼ全体像が見える」という。このスポークスマンはそれ以上のコメントを控えた。

 詮索好きな目から自社の完成前のビジネス内容を守るため、熱心な努力を続けるGroove Networksは、昨年の1月にエネルギー効率の高いマイクロプロセッサをついに披露したTransmeta以来、おそらく最大となる産業機密を保持していると見られる。

Cruesoe以来のビックニュース

 そのTransmetaのLinus Torvalds氏同様、Ozzie氏にもデベロッパーや企業ITの中に崇拝者がいる。ライバルを賞賛することのないMicrosoft会長のBill Gates氏でさえも、Ozzie氏を世界最高のデベロッパーの1人と呼んだことがある。Ozzie氏はLotusで、秘密プロジェクトによってNotesを開発した人物だ。同製品は後に、Excelが1-2-3に取って代わってスプレッドシートの販売数トップに立った際にLotusを救うことになった。その後、MicrosoftもNotes迎撃製品(まずMicrosoft Mail、そしてExchange Server)を発売したが、これが真のライバルになるまでには数年と数回のアップデートが必要だった。

 Ozzie氏は昨年行ったインタビューの中で、Groove Networksを非公開企業にしておくことで、ウォールストリートの期待に束縛されず、自らのタイムテーブルに従って作業を進めることができる、と語った。当時同氏は、コミュニケーションやコラボレーションを技術を使って楽にすることが自分の目標だ、というコメントを残している。

 同氏は昨年、「私の活力の元は技術全般だ。PCは測り知れないほどパワフルであり、ワイヤレスやテレコムも普及しつつある。私が思うに、われわれは技術の時代にいるのだと思う。新しい電話機の処理能力は限られており、メモリにも制約があるが、5年も経てばワイヤレスネットワークは全く違ったものになるだろう」と語った。

 Ozzie氏が1997年の秋にLotusを去り、この新しいベンチャー事業を起こしたとき、多くの人々は同氏が(グループウェアというカテゴリーを定義した)NotesをWeb向けに生まれ変わらせるのだろうと推測した。当初、Notesは独自の技術だったが、Lotusは数年前から業界標準のインターネットプロトコルで動作するよう書き直し中だ。

 しかし、新しいGrooveがWeb向けだとするのは重荷を課すようなものだ。この計画に詳しいまた別の人物は、「これはむしろ、SametimeやNetMeetingを強化したものだ」と語った。Lotus SametimeやMicrosoft NetMeetingは、インターネット上でリアルタイム会議、アプリケーション共有、およびホワイトボードを可能にするソフトウェア製品だ。

 Ozzie氏の古くからの友人で元上司でもあるTrellix Networksの共同創立者でCTO(最高技術責任者)のDan Bricklin氏は、Groove製品の詳細を明かしてくれなかったが、このチームは非常に難しい問題と、その解決方法に取り組んだ、と語った。Bricklin氏によると、その結果として生まれた技術は「多くの問題に深く対応したので、コンシューマーからも企業からも、多くの関心を得られるだろう」という。

 詳細な説明を聞いたというあるアナリストは意見を異にする。彼は、「彼らが今やっていることはWhite Pine、CuseeMe、Net Meeting、インスタントメッセージングなど既に対応している製品がある」と語った。

 このアナリストを含み、人々は、この技術がピア・ツー・ピアのネットワーキングに大きく依存するという、かなり前から推測されていたものであることを正式に認めた。Ozzie氏自らが今秋の初めにこの話題に関する討論会に出席し、これらの噂に火を付けている。

 しかしあるアナリストは、大半のピア・ツー・ピア製品同様に、「人々がお互いを発見するのを支援する存在情報やディレクトリから、データバックアップまで」あらゆる点でサーバに依存するようになる、と語った。

 このアナリストをはじめとする複数に言わせれば、ピア・ツー・ピアは絶対的な言葉ではなく、Napsterでさえもユーザーがお互いを発見するのを支援するためにサーバを活用しているとなる。「必ずと言ってよいほど、ノード間のリンクをセットアップする仲裁人が必要だ」とこのアナリストは言う。

 Hurwitz Groupの社長、Judith Hurwitz氏は、このプロジェクトの詳細な説明は聞いていないが、カスタマーサービス/関係管理関連で興味深い側面があるものと推測しているという。「ピア・ツー・ピアを活用して、カスタマーサービスを改善したり、カスタマーが求める、もしくは必要とする情報や知識ベースを直接提供できるようビジネスルールで包むことができれば、これはパワフルな製品になるだろう」(Hurwitz氏)

 さらにこれは、影響は少ないが重要な問題、つまり製品やサービスに対する対価の支払いといった日常の作業を解決できるかもしれない。例えば「Web経由で本を購入したい場合、最初の数章を読んで、もし気にいれば“はい”と指定するところがあり、これがクレジットカードの承認につながり、残りの部分がダウンロードできるようになるようなシステム」(Hurwitz氏)  

 1つだけ全員が同意するのは、Ozzie氏とその会社は、このプロジェクトを極秘にしておいた間、めざましい仕事をしたということだ。

 Trellixの社長で元Lotus幹部のDon Bulens氏は、「Rayから学ぶことが多いだろう」と語った。

 だが、この沈黙には代償が伴った。観測筋によると、Web時間で3年を費やした同社は、その間に人々がOzzie氏とその功績を忘れ、同社が何をしようと気にしなくなるという危険を冒しているという。

 投資会社、RAM Partnersの無限責任社員、Jeff Matthews氏は、「Peter Framptonのようなものだ。彼のことを知っている人などほとんどいない」と語った。

[英文記事]
Groove Gets It On

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