コンファレンスが充実、秋のLinuxWorld Expo開催

2000/11/1

事例紹介には多くの来場者が詰め掛け、立ち見が出るほどの盛況ぶりだった

 毎年春に開催されているLinuxWorld Expo/Tokyo。しかし、今年からは出展者たちの要望によって、秋にも「LinuxWorld Conference & Demo/Tokyo」(以下LinuxWorld C&D)が10月31日と11月1日の2日間にわたって開かれることになった。

 春のExpoが展示会中心であるのに対し、LinuxWorld C&Dはその名のとおりカンファレンスおよび新製品発表を中心とするなど、若干性格を異にしている点に特徴がある。では、初日である10月31日のリポートをお伝えしよう。

豪華な顔ぶれの揃った基調公演

 まず基調講演の場に姿を現したのは、日本アイ・ビー・エム代表取締役社長の大歳卓麻氏である。大歳氏はENIACに始まるコンピュータの歴史を振り返りながら、IT化を「産業革命に匹敵する」と評価。そして、これからは「いつでも使えること」(連続可用性・拡張性)、「誰でも簡単に使えること」(標準化準拠・可汎性)、「安心して使えること」(高品質・安定稼動)がより重要であると語った。

日本アイ・ビー・エムの大歳氏は、「e-businessは当社が言い始めた言葉。昔のIBMなら商標をとっていた(笑)」と言って会場の笑いをさそった

 また、ピーター・F・ドラッカーの「変化はコントロールできない。できるのはその先頭に立つことだけだ」という言葉をもじって、「Linuxの流れは止められない。止められないのなら先頭に立つ」とし、これからもIBMがLinuxにコミットしていくことをアピールした。その具体例として、全サーバのLinux対応、ソフトウェア製品のLinux対応、Linuxサポートセンターの開設、ディストリビュータやオープンソースコミュニティとの協業を進めていくと約束した。

 続いて舞台に上がったのは、米国TurboLinuxのPresident & CEO、T. Paul Thomas氏だった。Thomas氏はいまだに続くオープンソース企業の収益性に対する疑問に対し、「顧客の要求をつかんで優れた製品を作れば、これから利益が上がる」と語った。また、同氏はLinuxを津波に例え、「この津波は始まったばかりだ。そして、まずサーバを飲み込んだ」としてサーバ市場でのLinuxの成功を強調した

「マイクロソフトを否定するつもりはないが、1社に依存しすぎるのは危険だ」と語る米国TurboLinuxのThomas氏

 今後のLinuxについては、「統一されたLinux OSの実現が重要」であることを繰り返した。「Linuxのソースコードが分裂するのでは? という懸念を市場から払拭する必要がある」とし、そのためには大手ディストリビュータは競争しながら統一のために協力しなければならないと訴えた。

 こうした状況の中で、TurboLinuxはデータベースソリューションやスーパーコンピューティングなどの分野でLinuxに付加価値を提供する。そして2004年にはRDBMSの分野でWindows NT/2000を超えるかもしれないとの展望を語った。

 午後にはハードメーカーおよびディストリビュータらによる「最新ビジネス・ソリューション事例」というセッションが行われた。IBMや富士通、ターボリナックス、レッドハットなどによるLinux導入事例が次々と紹介され、Linuxの導入が着実に広がっていることを印象付けた。また、Alphaで先行するコンパックとIA-64 Linuxを推進するヒューレット・パッカードは、それぞれ64ビットLinuxへの取り組みを紹介し、ハイエンド市場におけるLinuxの可能性を示していた。

SGIのヒューマノイド型ロボット「ピノ」推定コストは数千万円という

Linuxの今と未来を見せる展示会場

 今年5月よりLinux路線に大きく傾倒した日本SGIでは、サーバ「SGI 1450」や「SGI 1200」などを展示し、ストリーミングや受発注業務のデモンストレーションを行った。IA-64とLinuxの組み合わせをベースとして、拡張性とコンテンツ中心のサービスを実現するクラスタリング技術をキーワードに、対応製品を広げていく。1Uの薄型サーバをまもなく投入する予定だ。また、「Originシリーズ」で用いられている独自開発アーキテクチャ、ccNUMAを採用した製品も計画中だという。同社企画推進部Linuxソリューション推進部部長の高澤真治氏は「ccNUMAアーキテクチャとCG(コンピュータ・グラフィックス)で差別化を図る」とLinux市場にかける意気込みを語る。

 同社の展示ブースでは、ガラス・ケースに入れられたロボット「ピノ」も登場した。今年8月にロボカップの公式スポンサーになったSGIは、スポンサー料金1億円とLinux中心の技術支援の提供を開始した。ロボカップは、2050年にヒューマノイド型ロボットがその年のワールドカップで優勝した人間チームと試合をして勝つことを目標に、非営利法人のロボカップ国際委員会が研究を続けているプロジェクト。

 現在、チェアマンである北野宏明氏のもと、世界35カ国の参加団体が、ボールを蹴る、ぶつからないようによける、などのサッカーの試合で想定される動作をシュミレーションするプログラムを、LinuxをOSに開発中だ。毎年開催の世界大会では、大会後に各参加団体がプログラムのソースコードを公開しあい、向上を図っている。

 展示ブース会場には他に、この秋日本に本格進出したVA LINUX SYSTEMS ジャパン、バーテックス リンク、NECなど50社が出展。VA LINUX SYSTEMS ジャパンは、オープンソースサイト「SourceForge」などの活動で米国Linux市場では古参のVA LINUX SYSTEMSの日本子会社。1U型Webサーバ「VA Linux 1220」などの主力製品のほか、新製品のNASサーバ「VA Linux 9205」を展示した。

NECの「AzusA」 4CPUのユニットを前面、背面に2個ずつ搭載した

 NECではItanium16ウェイサーバ「AzusA」がお目見えし、注目を集めた。IA-64 Linuxプロジェクトへ参加しているNECの自信作で、最大で128個の64ビットのPCIスロット構成が可能。

(編集局 中澤勇、末岡洋子) 

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