プライバシー擁護団体、Amazon.comを攻撃

2000/12/6
Dec 4, 2000(3:16 PM)By Mary Mosquera & Barbara Darrow, TechWeb News

 大西洋をまたいだ2つの国のプライバシー擁護団体は12月4日、プライバシーに関するAmazon.comのポリシーを調査するよう両国政府に対して圧力をかけた。

 大西洋の西側、アメリカ合衆国では、ワシントンD.C.のElectronic Privacy Information Center(EPIC)とニュージャージー州に本部を置くプライバシー権利擁護組織のJunkbustersが連邦通商委員会(FTC)に対し、9月にAmazon.comが個人顧客情報を公表できるよう自社のプライバシーポリシーを変更したことで米国のカスタマーを欺く行為に至ったかどうか調査するよう求めた。

 一方、東側では、イギリスのロンドンにある人権擁護団体のPrivacy Internationalが英国データ保護委員会に対し、Amazonがデータ保護法に従うまで同社の英国事業所によるカスタマーデータの処理を停止するよう求めた。

 Junkbusters.comの社長、Jason Catlett氏は、「Amazonは大西洋の両端で問題に直面している」と語った。

 Privacy Internationalのディレクター、Simon Davies氏によると、Amazonは、英国の同社カスタマーに対して、自社の持つカスタマーの全情報を開示し、要求があればこれを削除するという義務を含むヨーロッパのデータ法に違反しているという。Davies氏自身も自分の情報の提供を求めたが、その要求に対し提供を受けられなかった。プライバシー擁護者によると、この事実は完全な違反行為だという。

 現行法に対するさらに厳しい準拠を強制する動きは、数百万人のカスタマーが年末のクリスマスシーズンに向けてオンラインショッピングをするこの時期とタイミングが重なった。数人の擁護者によると、この買い物騒動中に、個人情報が悪意を持つ連中の手に渡るリスクが高いという。

 EPICの事務局長のMarc Rotenberg氏は、FTCに宛てた書簡の中で、「米国および英国は消費者の権利を保護する法律を確立している。われわれはFTCとデータ保護委員会に対し、オンラインの世界でもプライバシー権の尊重を保証するよう求めた」と語った。

 EPICとJunkbustersでは、Amazonのポリシー変更は、第三者に対して顧客情報を「絶対に」公表しないという同社のこれまでの声明と矛盾しているため、欺まん的行為であり、連邦取引委員会法違反としている。改訂後のポリシーには、ユーザーが各自の個人情報を販売させないようにするという、改定前にあった選択肢が含まれていない。Amazonのポリシーは現在、「店舗や資産を売買する可能性がある。このような事態が起こった場合、一般的には顧客情報も移転される業務資産の1つとなる可能性がある」となっている。

 「もしAmazonがうまく逃れるようなことがあれば、われわれは英語の辞書にある“never”(決してない)の定義を変更しなければならない」(Catlett氏)

 プライバシー擁護者を特に苛立たせているのが、Amazonがその巨大なカスタマーベースから収集した膨大な量の情報だ。「これは(書籍、消費者商品、DVDなどの)単なるクリック・ストリームのデータではない。だが、同社が情報を持つ消費者の数は非常に多い。2300万人のカスタマーというのは、最も近い位置にいるライバルの5倍近い。Amazonがわれわれのプライバシーを満足に守ってくれないのであれば、おそらくどの会社にもプライバシーは守ってもらえないだろう」(Catlett氏)

 各団体はFTCに対し、Amazonが自社のカスタマーに関する情報を事前に同意を得ることなく公開することを禁止し、カスタマーが自分の身元や購入品に関する一部、もしくはすべての情報を削除する選択肢をAmazonが用意するよう求めた。Amazonはまた、請求があれば正確にどの情報がほかの企業に対して公開されたのかを各カスタマーに伝えるよう強制される。各団体によると、Amazonはカスタマーが自分のプロファイルに完全にアクセスできるようにもすべきだという。

 EPICとJunkbustersはほかにも、カスタマーが希望するプレゼント情報を友人や家族と共有できるようにするAmazonのサイトにある機能の問題を指摘した。これは、Amazonのカスタマーがカスタマー以外(同サイトに情報を入力していない人)に贈り物を送ることができるが、その場合、その受取人の情報さえも簡単に入手できるという。「Amazonは心配をしていない人々から住所を収集している。情報はAmazonの所有物であって削除できない、というAmazon側の主張が事態を一層不快にする」(Catlett氏)

 Catlett氏によると、AmazonはJunkbustersとのこれまでの交渉でこれら3つの要求を拒否したという。EPICとJunkbustersの両団体は9月13日、Amazonが改訂したプライバシーポリシーを巡ってAmazonとの関係を悪化させている。

 Amazonの国際公益担当副社長、Paul Misener氏は先週、Junkbustersに対する回答の中で、「プライバシーに関する通告は明確だと考えている。われわれは情報の移転にフォーカスして明確に記述している」と述べた。Misener氏は書簡の中で、「カスタマーに関する情報が(事業部全体の買収や共同展開店舗との新しい取引などによって)共有されるかもしれないとしたプライバシーに関する通告の中で述べられた限定的状況に従って、Amazon.comは同意がないかぎり、カスタマーから収集した情報を絶対に販売しない」と述べている。

 だがCatlett氏によると、「われわれはカスタマーに関するデータを所有しているが、それは見せないし、求められても削除しない上、これを販売する判断を下しても許可を求める必要はない」というのがAmazonの言葉の真意だという。

[英文記事]
Privacy Groups Wage War On Amazon.com

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