[Interview]
SIPSはシステム構築をどう変える?―先手をかける富士通の戦略

2000/12/21

 大手システムインテグレーター(SI)、富士通が11月末に「SIPS」事業に進出することを発表した。SIPSとはStrategic Internet Professional Serviceの略で、米国で95年に誕生したビジネス。Webサイトのコンサルとデザイン、構築・統合・運用を総合的におこなうビジネスで、今年に入り日本でも米系SIPSの進出が相次いでいる(11月2日付記事「米大手Webコンサル、サイエントが本格始動へ」参照)。

 従来のSIとはどう違うのか、米系SIPSとの差をどのように出していくのか、企業の情報システムの役割がどうかわるのか、同社システム本部コンサルティング事業部の伊藤大挙部長に話を聞いた。

――御社のSIPSとは?
伊藤部長 SIPSとはアメリカで生まれたコンセプトで、Web構築の上流から下流までを一貫して行うのが特徴だ。ビジネスモデル(「Webストラテジー」)を策定し、サイトのデザインなどの「Webデザイン」、「業務の設計」、開発(「Webインプリメンテーション」)、その後の「運用」まで含め、5つのフェーズでWebサイトの構築を行う。当社がこれまで培ってきたプロジェクトマネジメントのノウハウを活かして、従来だと半年から1年かかった作業を、平均で3、4カ月に短縮する。
 具体的には、これらを「Webコンサルティングサービス」「ソリューションスィート」という2つの商品体系で提供する。当社では、関連会社を合わせるとコンサルティング担当が総勢で1000人ほどおり、ここを中核に発展させて行く。また、米大手SIPSであるサピエント社、メンバーズ社とアライアンスも組んでおり、適所で協力関係を結ぶ。

富士通システム本部コンサルティング事業部長の伊藤大挙氏

――これまでのSI事業や他SIPSと、どこで差別化を図るのか?
伊藤部長 これまでSIベンダーとしてのスキルを活用する。例えば、3フェーズ目でプランを業務の設計に落とし込むが、このとき、当社がこれまで蓄積してきたノウハウを業務テンプレートにしたものと業務コンポーネントを利用して、迅速な構築を実現する。例として、BtoCのオンラインショップを実現する「ネットショップソリューション」やBtoBの受発注システム構築を実現する「ネット調達ソリューション」などがある。もちろん、細かな要求に応じるためのカスタマイズも行う。また、最後のフェーズである「運用」では、アウトソーシングセンターを使い、24時間365日のリモート監視も行える。
 また、当社では、オプションとしてさらに「運営」サービスの提供も行う。これも実績あればこそのサービスだ。Webサイトは、構築すれば終わりではなく、その後発展させるもの。どんな属性をもった顧客がどのサイトから入ってきたのかといったマーケティング活動を行い、顧客のよりよいサイト運営、ビジネスの発展に寄与する。
 デザインを強調するSIPSもあるが、わが社のSIPSの最大の武器はマネジメント。きちんと動くシステムを納期通りに納入して顧客に満足してもらい、安定して稼動するだけではなく、さらに拡張していくようなシステムを提供していく。このあたりの知識をノウハウは新興の企業ではできないこと。

――どうして今、SIPSなのか?
伊藤部長 顧客のニーズがこれまでのシステム構築からインターネットを使ったシステム開発へと移行した背景がある。高品質とスピードを考慮するとSIPSが最善の策といえる。こういった傾向は米国では数年前から見られたが、日本では今、機を得たといえる。大手のSIベンダーとしては、わが社は他社より1歩先んじたと自負している。
 実際、反応はすごくいい。潜在ニーズとしていかに強かったかを示している。業種としては、薬品関係の製造業、小売業、物流業などの流通、金融、さまざまだ。
 Webには、今までにない難しさとして、予見が不可能という特性がある。インターネットになって、急に人気が出て顧客が集中するケースがあるが、このあたりがこれまでのSIが直面している難しさだ。このあたりの設計が行えるのは大きな特徴だろう。

――自社製品を用いることでニュートラル性が薄れるのでは?
伊藤部長 基本的には自社製品を用いるが、顧客のニーズには柔軟に対応していく。ただ、Webシステムは一時的なものではなく、先をみた投資を行う必要がある。メンテナンスやバグ対応を考えた上で製品を選択するべきだ。その点で当社の製品を熟知した技術者が担当にあたることは、ユーザーにとっては安心につながると考える。

――企業の情報システムの役割がかわる?
伊藤部長 依頼は、実際に利用する部門(営業、業務、企画)からが圧倒的に多い。また、アウトソーシングの傾向は引き続き高く、情報システム部が縮小するケースは増えているようだ。専門部門を一切持たず、コア・コンピーテンシーのみに注力する企業も出てきている。
 今後、情報システムは、これまで通りのレガシーシステムの運用、新システムとレガシーシステムとのインターフェースをとるマネジメントが求められる。それに加えて、経営戦略支援や企画立案部門の役割、社内の情報リテラシー向上のための一種の啓蒙活動も行うことが理想的だ。逆にいえば、情報システム部をそういった機能をもつ部門へと変身させた企業は、有利な展開が図れるといえるのではないか。

(編集部 末岡洋子)

[関連リンク]
富士通の発表資料

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