プレーヤが揃い、スタートラインに立ったBtoB業界
インフォテリア株式会社
代表取締役社長 平野洋一郎氏
XMLにより企業システムは新たな局面を迎えようとしている。BtoBが目標地点ならば、2001年はその道しるべの年となりそうだ。インフォテリアはXMLを専業とするため平野洋一郎氏が設立したソフトウェアベンダー。XMLの登場以来、その動向を見続けてきた平野社長に、BtoBのこれからを聞いた。
2001/1/5
インフォテリア代表取締役社長 平野洋一郎氏 |
―― XMLにとって2000年はどんな年でしたか?
1998年9月の創業以来XMLが大切だと訴えてきましたが、当時に比べれば確実にすそ野が広がってきました。特に2000年後半は、IBMやマイクロソフトなどが積極的に使用したこともあって、認知度が高まりました。
今、XML普及の大きなけん引役となっているのは、BtoBとかマーケットプレイスという切り口です。BtoBは新しい市場で、かつITがビジネスや社会に貢献するという意義もあり、注目度は非常に高いといえます。
―― 注目のBtoBやマーケットプレイスは2001年にどう展開するでしょうか?
一口にマーケットプレイスといっても、独立系、業界型、大企業主導型といくつか種類があります。私の予測では、もてはやされているn対nのマーケットプレイスより、大企業主導型から発展していくと見ています。理由はビジネスとして成立するからです。順序としては、大企業がイニシアチブをとるマーケットプレイスが起こり、その流れに乗るようにして中堅や小規模企業が参加するマッチング型が成立するのではないでしょうか。
不特定多数と取引するn対nのマーケットプレイスが話題になるのは、言葉として分かりやすく響きも良いから。しかし、信用と計画性という点を考慮すると、現時点での成立は難しいでしょう。信用とは、大規模な調達の際に、安いという理由だけでマーケットプレイスを利用して知らない企業と取引するか、ということです。間接財にしろ直接財にしろ、安さを実現するためには、ある程度計画が立っている必要があります。価格付けは、期間や量の見通しが立って初めてできるものです。
さらに突き詰めると、このモデルは矛盾にぶつかります。n対nは余剰財を効率良くさばくというコンセプトから生まれたビジネスモデルですが、価格を安くするために計画を立てると余剰財は減ります。つまり商材が不足するわけで、安さと計画性、余剰の3つは原理として同時には成立しません。
それに対して大企業主導型の場合、大企業はシステム構築にかかる費用を賄える資金力と商流を持っています。ある程度ビジネスが予測できるのです。
―― 大企業以外の企業はどう取り組んでいけばいいのでしょうか?
すでに文具などの間接財に関してはアスクルのような企業がサイトを提供していますが、これが大規模になりシステムも結ばれていきます。具体的には、大企業がアリバのような製品を導入して、自社の製品に必要な部品を調達するサイトを構築すれば、そこに中小企業も含めたサプライヤーが集まってきます。ここにいかに早く接続するか、XMLのWebサービスを構築するかで、企業ごとのBtoBビジネスへの差が出てくるでしょう。
―― 今後、ベンダ側からどんなサービスが出てくるのでしょうか?
2000年の秋にプレーヤがそろい、スタートラインに立ったといえます。アリバ、Webメソッド、コマース・ワン、当社も「Asteria」を発表しました。各社ともアプローチは異なり、プロダクト系とサービス系の2つに分かれます。
サービス系はアリバやコマース・ワンなど、ネットワークに着目してサービスやコンサルティングをするというパターンです。プロダクト系は“BtoBサーバ”といっていますが、DB、EAI、EDIと切り口が微妙に違い、利用方法に合わせて選択する必要があります。当社の場合はゲートウェイ型で、XMLを中心に外とつなぐために設計していますので、サービス系とはむしろ協力してやっていくことになります。
米国に子会社を持ち営業活動を展開中。「米国ユーザーは新しい技術に関心が高く、要求が厳しい。叩かれるので良い刺激になっていますよ」 |
―― 企業のビジネス活動も変化が必要になりそうですね。
企業は効率化を目指して10年単位で推移してきました。80年代が個人の生産性の時代で、90年代が組織や会社単位での生産性でした。これからは会社間(BtoB)の時代。このテーマにわれわれは10年単位で取り組んでいくことになります。
現在、すでにオンライン化されたものも含め、実際に行われている企業間の取引は企業情報の交換に始まりネゴシエーション、契約書の取り交わし、売り買い、その後の支払いと、さまざまなやりとりで成立しています。これを全部オンライン対応させていくわけですが、その発展は3段階に区分できます。
第1段階が窓口をつなぐことです。出口と入り口、具体的にいえば発注書や納品書がXMLに対応してつながります。
第2段階では、売り買いのプロセスがつながります。アドホック(動的)にプロセスフローをつないでやりとりを行う。これが進行すると、会社間の壁が低くなっていきます。現在、社外とはほとんどつながっていない企業システムが、業務ごとの各プロセスを含めて自由にネットワークが張れるようになるのです。
そして第3段階に入ります。この段階では、あるプロジェクトに対して社内・外を含めて最適なチームで取り組むようになります。売り買いだけでなく、ディスカッションやネゴシエーションも含まれます。経営という観点からも大きく変化しています。企業がすべてを抱える必要がなくなるため余分な資産が減り、単位資産当たりの利益(ROA:Return on Asset)が上がります。コア・コンピタンスに注力できる状態ですね。企業の強さは、大きい=強いとか有利ではなく、いかにネットワーク型のビジネスプロセスに対応できるかで測られます。人々も、企業というくくりにとらわれずに仕事をするようになりますから、意識が変わってくるでしょう。
最終形は、星のように小さな組織が散在し、必要に応じて結合・分離する形です。
―― その流れの中でXMLをはじめとした技術はどう発展するのでしょう?
最終形である、いろいろな企業システムがつながるために、XMLの標準化はとても重要です。XMLは英語でいうアルファベットで、その上で何を話すのかという部分の標準化を推進していかねばなりません。RosettaNetにせよBizTalkにせよ、アドホックなワークフローを実現するためには、現状ではまだ不十分です。企業は、第1段階のBtoBの窓口だけではなく、将来をにらんで社内システムでXMLサービスを使うことも行っていく必要があり、ベンダからサービスや機能が提供されるでしょう。
システム的には、サーバを中心としたハブ&スポーク型から、サーバのPtoPを実現していくことになります。つまり、EDIのようにサーバが“つながっている”ではなく“(必要に応じて)つながる”状態です。つながると同時にプロセスフローが瞬間的に構築でき、調達も設定されて初めて意味あるものになります。
その実現と同時進行で、信用や評価の問題も解決されるべきでしょう。そこで重要になる技術がエージェントです。ソフトウェア業界では昔から注目されてきましたが、取引という場面でのエージェント技術は、企業そのものの信用、プロジェクト調査、管理と、いろいろなものに役立つでしょう。
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