eラーニング市場、にわかに本格化か?

2001/2/21

 教育系コンテンツ・プロバイダの米iVille社の製品を日本で展開しているスタディボックスは、日本アイ・ビー・エム、日本経済新聞、凸版印刷と共同で、Web上での教育用システムの販売や製作したコンテンツの販売を行うことを発表した。まずは日本経済新聞の講座をWeb上で展開するサービスから着手する予定だという。

 同社は、2000年7月、メディア配信業者であるジェイ・キャストが事業主体となって設立した会社。これまではiVille社のWebでの教育用システムソフトの販売を中心に行ってきた。今回、上記3社の出資を受け、代表取締役常務に日本IBMから田中一正氏を迎え入れ、本格的にオンライン教育事業の展開を図ることになった。

代表取締役常務に就任した田中一正氏 IBMではPS eビジネス事業部長だった

 今後の事業展開は、同社がiVille社の製品を日本市場向けにローカライズした学習マネジメントシステム「studybox」を核に進める。効率の良いWeb上での学習システムの開発や、凸版やジェイキャストと共同で行うコンテンツの作成・編集のほか、同製品をITシステムに包含して総合提案していく。

 同製品では、「受講者」「講師」「管理者」の3種類のユーザーがそれぞれにパーソナライズされた画面を持つ。受講者は、「教材」のほか、「講師からのお知らせ」や、「コミュニケーション」「課題」といった画面を持つ。講師側の使いやすさも特徴で、容易に教材やテストが作成できたり、生徒の進行状況をリアルタイムで把握することも可能。同社では、企業での利用として、営業マンの新製品教育などといったケースを想定しているという。

 手始めに、事業開始から20年以上の歴史をもつという日本経済新聞の企業経営・管理職者向けの講座「日経ビジネススクール」を「studybox」上で展開する。既存の講座をベースにコンテンツを作成、10講座からスタートし、今年中に講座数30を目指す。提供開始予定は2001年7月で、同社のサイト「日経ネット」とリンクをはることも計画しているという。受講料は未定だが、現行のものより低い価格設定となる予定。以前から地方での開催を求める要望が高かったという同社取締役文化・事業部長 富沢秀機氏は「インターネットの普及やブロードバンド化の進行という環境の整備、自己啓発ブームという時代背景などから踏み切った」と語る。

 オンライン教育のパターンとしては、通信教育型と集合教育型の2つに大分できるという。同社では「集合型のコンセプトをとる」と代表取締役常務に就任した田中氏。具体的には、通常オフラインでの授業でおこる質問やディスカッションを取り入れたり、サポートを行う専任者によるフォローなどで実現するという。

 インターネットのメリットを享受したオンラインでの教育・トレーニング市場は伸びが予測されている。現在、ポピュラーなのにマイクロソフトやオラクルなどのベンダーが提供している認定資格試験がある。このところ企業研修にも導入されるようになり、米国ではすでに2割の企業研修がオンラインで行われているという。日本国内でもつい先日IDC Japanが発表したIT教育・トレーニング市場規模に関する調査では、年間平均成長率7.6%という結果が出ている。スタディボックスでも、当面はインターネット利用に慣れたIT関連従事者を中心に普及して行くと見ている。一般消費者が参加する教養講座などの最終ターゲット到達はまだまだ先のようだ。

(編集部 末岡洋子)

[関連リンク]
スタディボックス
日本アイ・ビー・エムの発表資料
ジェイ・キャスト
IDC Japan

 

 

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