PC1台あたり15%コスト減も可能、資産管理のIMとは?

2001/8/25

 クライアント/サーバ環境におけるPC1台あたりのTCOは、年間約180万円という。その62%は、ユーザーに対する運用管理やサポートに費やされる時間やシステムダウンによる業務阻害の時間を換算した“エンドユーザー運用コスト”が占めている。1998年に、日本企業13社を対象にTCOコンソーシアムが実施した調査結果だ。

 この調査からも、効率的なコスト削減とは、購入時の金額を抑えることではなく、導入後のコストをいかにして低く抑えることにあるのは明らかだろう。だが、それを認識して、経営に反映させている企業は少ない。米国では、資産管理を実施している企業は、非実施企業と比較するとPC資産管理コストが1台あたり713ドル(約15%)も低く抑えられるという結果も出ている。資産管理はいま、経営者が注目しているトピックスの1つだ。

 企業資産の最近の動向として、視覚化できない無形資産の増加がある。無形資産は、人や知識・ノウハウなどを指す知的資産(Intellectual Property)を含む。この無形資産に対する欧米企業の関心は高く、65%の企業が近い将来、無形資産に対する資産価値評価が年次会計報告書(アニュアル・レポート)に盛り込まれるという予想もある。無形資産の増加と共に、IT導入も進んでおり、資産の種類は多様化を極めつつある。従来の資産管理方法では管理や評価が難しくなってきているのが現状だ。

 このように、複雑化する資産管理や資産効率の測定手段として、いま話題を集めているのがIM(Infrastructure Management)という手法だ。調達から、導入、運用監視・保守、変更、処分/再利用まで、資産のライフサイクルをプロセス化したもので、IT導入の最大の目的である資産運用効率を測定できるほか、資産管理の一元化、ROIの最適化やTCO削減といったメリットがあるとされている。

 8月23日、IMソフトウェアの大手ベンダ、ペレグリン システムズは沖電気工業と共同で、「インフラストラクチャ・マネジメントセミナー」を開催、基調講演で、アンダーセン ビジネスコンサルティング ディレクター 桑原義幸氏が、IMの必要性について語った。

 IMは現在、ペレグリンやIBM、コンピュータ・アソシエイツなどがIMソフトウェアを提供しており、今後3年間でIMソフトの市場規模が2倍になると予測される。

 「企業は価値創造に関係するあらゆる有形/無形の企業資産を把握する必要がある」と桑原氏はいう。アンダーセンでは、「バリューダイナミクス」というコンセプトを提唱した。「ニューエコノミーの時代、これまでの資産価値では不十分」、同社では、ブランドなどの“組織資産”、“従業員/サプライヤ資産”、アライアンスにより得られる効果も含む“顧客資産”を追加した、資産価値把握手法のフレームワークを提供しているという。

 桑原氏は、IMを実践するための手始めとなる5つの質問項目を紹介した。

  • 社内にどのような資産を所有しているのか
  • その資産は、どこにあるのか
  • その資産は、効果的に機能しているか
  • その資産所有にかかるコストは
  • その資産は、当初の購入目的を達成しているか

 桑原氏によれば、IMを導入した結果、導入初年度で資産ごとに最高30%のコスト削減を達成した例もあり、継続的に運用することにより、資産ごとに年間あたり5〜10%のコスト削減達成も不可能ではないという。「これからのIT投資の着眼点は、“コストありき”ではななく、“メリットありき”へ転換すべき」(桑原氏)。それにより競争優位に結び付けることもできるからだ。ITにより発想の転換に迫られているのはビジネスだけではない。経営の有り方にも変化の波が押し寄せている。

(編集局 末岡洋子)

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