米同時多発テロ事件で動揺する米IT業界
2001/9/13
米国時間9月11日の朝に起きた、テロリストによると思われる同時多発攻撃が、IT業界にも影響を及ぼしている。
その数が1万人を上回るともいわれている事件による死亡者の中には、IT関連企業に従事していた人も多数いたと思われる。米アカマイでは、共同創設者Daniel Lewin氏が死亡したことが同社サイトで発表された。同氏はニューヨークの世界貿易センタービルに激突したボストン発ロサンゼルス行きアメリカン航空11便に搭乗していた。
米・アトランタで開催中だった「Networld+Interop 2001」は、この日が展示会初日だった。展示終了時間を早めたほか、いくつかの基調講演が中止となったほか、スケジュールが変更にったセッションなどもあるようだ。
ワシントン・ポストの特集ページ |
インターネット上で事業展開している各メディアの対応は素早かった。ワシントン・ポストでは、国内ニュースのセクションに“America Under Attack”という特集を設け、関連記事のみならず、炎上する世界貿易センターなど事件現場模様の動画配信サービス、ブッシュ大統領の演説の動画とフル・テキストでの配信、戦争突入に反対か賛成かの投票までできるようになっている。CNN.comやMSNBC.com、The New York Timesなどでも同様のサービスを提供している。どこのニュース系Webサイトもアクセス集中のためか、表示するのに非常に時間がかかる。また、広告枠を取り払ったサイトも見られる。
米政府や組織はWeb上に専用のページを設け、米国政府の対応や関連情報などを提供している(ただし、ニューヨーク市のWebサイトには、日本時間12日夕方現在、まったく接続ができない)。日本では独立行政法人通信総合研究所が米国と連携して「被災者支援安否情報登録検索システム(IAAシステム)」の運用を開始した
多くの個人サイトも反応したようだが、生存者の確認情報を受けつけて公表していたサイト(http://www.shunn.net/okay/)では、膨大なアクセスによりサーバがダウンしてしまい、「これ以上サービスの提供ができなくなった」と書かれている。
IT系の情報提供サイトでも、ZD-Netなどが情報を得られるサイトのリストを掲載した記事や攻撃を受けた米国務省の情報システムについての記事などを掲載した。
TechWeb系列のInformationWeekでは、急きょディスカッションを開催した。ディスカッションの中で、「世界規模で容易に情報共有ができるようになった。これを、テロリストの攻撃戦術についての情報共有にも活用できるはずだ」とWharton Business SchoolのHoward Perlmutter教授がコメントしたと報じている。
日本にも影響は出始めている。19日に都内で記者懇親会を予定していた米インテル 社長兼CEO クレイグ・R・バレット氏は、来日を中止した。その他のITベンダでも、記者発表などのため、来日予定だった本社幹部の予定に変更が出る可能性を明らかにしたところがある。19日開催の「WORLD PC EXPO 2001」では、米マイクロソフト 社長兼COOリチャード・ベルーゾー氏が来日して基調講演を行う予定となっている。が、マイクロソフトでは、現在のところ同氏の来日スケジュールに変更はないとしている。
今回のインターネットメディアでの報道は、いくつかの問題を提起しているようだ。その1つが、通常ならば問題がない“帯域”。インターネットでは、重大事件などで過度にアクセスが集中すると、なかなかWebページを表示させられず、必要な情報を入手できないという点だ。一部のメディアは急きょ帯域を拡大したという情報もあるが、テレビと比較すると、インターネットがメディアとしていかに未熟であるかが浮き彫りとなった。今後似たような事態が起こったとき、どのような報道をすればよいのか、インターネットメディアは課題を突きつけられたといえそうだ。
(編集局 大内隆良、末岡洋子)
[関連リンク]
米アカマイの発表資料(英語)
独立行政法人通信総合研究所の発表資料
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