自治体の取り組みの遅れでe-Japan実現に赤信号?

2001/11/10

 電子自治体共同研究会は11月9日、地方自治体における電子化への取り組みに関する調査結果を発表した。現時点で電子自治体推進計画を持たない地方自治体は約半数で、計画が策定済みの地方自治体は約2割にも満たないことが明らかになった。e-Japan構想で目指す“世界最先端のIT国家”実現は、少なくとも自治体レベルではスムーズに進みそうにない。

 この調査は、今年8月より約2カ月間、全国約3300の地方自治体に対し同研究会が行ったアンケート調査による。回収件数は48%の1594件。

 同団体が発表した調査結果では、電子自治体を推進する組織を持つ自治体は30%、CIOあるいはそれに類似する情報統括担当組織を擁する自治体は16.8%という。電子自治体推進の計画に関しては、「(計画を)策定する予定がない」と回答した自治体は48.7%に上り、「策定予定」と回答した自治体は35%。同団体では、現時点で策定済みの自治体は2割に満たないと見ている。

 取り引き関係のあるメーカーとしては、富士通系が首位で45.8%、次いでNEC系(31.1%)、日立製作所系(13.6%)、NTT系(12.3%)、東芝系(10.1%)と日系大手企業が上位5位を占めた。外国系としては、IBM、オラクル、ユニシス、マイクロソフトなども上位20位内に入っている。なお、上位5社は「頼りとする企業(総合得点)」でもトップ5を占めた。

 同団体は、電子自治体の取り組みの格差を指摘するとともに、取り組みのための条件や環境が一律ではないことをその背景に挙げている。半数の自治体が行政改革とIT改革を同時に推進したい意識を示していることに触れ、「補完関係にある官民協働が電子自治体の推進には重要」とし、「官民協働が機能しない場合、電子政府・電子自治体の推進は、デジタル・デバイドを助長する危険性をもはらんでいる」とコメントしている。

 調査結果から、地方自治体が電子化に対し、必ずしも積極的・能動的に取り組んでいるとはいえない実態が浮き彫りになる。同団体でも、システム導入に関しては、依然としてメーカーおよび販売会社任せである傾向があると指摘している。専任者の不足、予算などの要因により対策を取りたくても取れない状況も考えられるが、計画策定の予定すら立っていない自治体が約半数を占めていることを考えると、2003年に実現を目指すe-Japan構想の雲行きは「あやしい」と言わざるをえない。

 電子自治体共同研究会は、日本の電子政府/電子自治体を考える共同研究会として発足、電子自治体の電子化への取り組みの研究などを主な活動とする団体で、ぎょうせい総合研究所、価値総合研究所(旧長銀総研コンサルティング)、およびガートナー ジャパンがメンバーとなっている。

(編集局 末岡洋子)

[関連リンク]
電子自治体共同研究会の発表資料
e−Japan戦略(要旨)

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