セキュリティビジネスの秘訣

2002/6/12
By T.C. Doyle, VARBusiness 4:11 PM EST Fri., May 24, 2002

 シリコンバレーの住人の多くは次の時代の大きな波に乗ることで出世街道を歩んできた。Kittu Kolluri氏も例外ではない。SGI在籍当時は新規に立ち上げたばかりのインタラクティブテレビの開発にかかわり、ドット・コムブームの絶頂期にはWedMDの立ち上げを支援した。そんな同氏の最新の戦略はというと、やはりこれまでと何ら変わっていない。今回取り組んでいるのは、通常の数分の1という低コストで規模の小さい企業にVPNライクなセキュリティ機能を提供するという仮想エクストラネットアプライアンス関連全般だ。NeoterisのCEOを務めるKolluri氏、インタラクティブテレビやWedMDが辿った運命を考えると、同氏のとった道は、セキュリティに注目という点から、今回も時代を先取りしているのではないかと思えてしまう。だが一部の専門家によると、それは疑わしいという。

 米コンピュータ・アソシエイツ・インターナショナル(CA)のCEO、Sanjay Kumar氏は、「当面は2つの大きな技術分野にチャンスがあると思う。まず、デスクトップのインフラ保護分野、2つめがアプリケーションのセキュリティだ」と話す。

 9月11日の事件以来、技術業界関係者は注目すべき市場機会としてセキュリティを選んでいる。例えば、IT関連への支出が下降する中でも、米データクエストは今年初め、全世界のセキュリティソフトウェア市場だけでも2001年全体で18%と大幅に伸びて43億ドルに達するだろう、と予想している。米データクエストによると、9月11日の悲劇はセキュリティ製品やインフラに対する支出を今後数年間は促すことになるだろうという。

 だが、これだけ有望であるにも関わらず、セキュリティ市場には次の時代の大きな波となる前にセキュリティ業界関係者さえも驚かせた具合の悪いことが起こった。第1四半期の業績がブームとはほど遠いことが判明したのだ。

 4月だけでも、米チェック・ポイント、米SonicWall、および米RSAの全社が期待はずれとなる第1四半期決算を発表した。米ネットワークアソシエイツの財務は重大な局面を迎え、米CAは同四半期に2億3800万ドルの損失を計上した。

 米シマンテックは3月決算の同四半期に上々の数字(売上げは前年比24%増の3億1080万ドル)を計上しているものの、CEOのJohn Thompson氏は「エンタープライズソフトウェアは経済による打撃をかなり受けた。人々が9月11日以降セキュリティ市場は経済の影響を受けないと仮定したことが率直に言って誤りだったと判明してしまった」とし、同分野に産みの苦しみがあることを認めている。

 専門家たちが大規模な市場再編を求めているのも無理はない。3月後半には、米ガートナーのアナリスト、Alain Dang Van Mien氏が、多くが不可避と考えることを単刀直入に総括するレポートを公表した。「ソフトウェアセキュリティ市場の再編」である。

発展する市場

 次に弊紙が主要ベンダトップに対して行った単独インタビューの一部を引用する。各氏は自社とその製品がどのように進化しているのか、そして自社のパートナーベースがどのように変化しているのかを語ってくれた。例えば、米チェック・ポイント社長のJerry Ungerman氏は、パートナー各社がセキュリティに特化する中で大きな変化を感じているようだ。

 「数年前に取引を始めたリセラーの多くが、複数の製品と技術をベースにさまざまな分野を幅広く手がけていた。現在ではこれらの大半がセキュリティに専念しており、セキュリティ専門ベンダになってしまった。彼らは自社技術に磨きをかけ、どこにでもあるようなファイアウォールタイプのプラグインではなく、付加価値を持ち、差別化された真のソリューションを販売している」(Ungerman氏)。

 セキュリティソリューション向けの強力なチャネルの進化により、ベンダ各社は考え方を変え、パートナー各社に一段と依存しようとするようになった。たとえばNeoterisではCEOのKolluri氏自身が、何らかの形でパートナーを関与させなければ契約を認めないとの指示を出している。米ISSのNoonan氏も、大胆な市場参入アプローチとISS向けチャネル構築への大規模な投資を大幅に見直している。理由は「簡単」という。「セキュリティチャネルは急速に成熟しつつある」からだ。

 実際にもそうだ。強いセキュリティソリューションプロバイダの台頭が弱い企業にプレッシャーをかけており、各社は市場への投資を継続するか撤退して自社の核となる長所に専念するかの判断を迫られている。米The Yankee Groupが3月に公表したセキュリティ市場関連レポートの中での指摘によると、ベンチャーキャピタルの資金獲得が困難な現状で、多くのマネージド・セキュリティサービスプロバイダ(MSSP)が崖っぷちに立たされているという。このレポートでは、低迷するMSSPが自社ビジネスを回復させるための方法の1つがさらに強力な間接販売チャネルの構築だと指摘しているが、頭角をあらわしつつあるソフトウェアプロバイダ各社は既にこれに取り組んでいる。

 その中の1社が米Securifyで、同社ではCEOのMark Hangen氏が間接販売の活性化を試みている。Hangen氏が米Securifyに入社したのは昨年の11月。同社は「SecurVantage」ネットワークトラフィック監視ソフトウェアの開発と販売を行うベンダだ。同氏は当時、同社のエンジニアリング/製品開発チームは非常に優秀だが、営業部隊は使い物にならないと考えた。その理由の1つに、直販へのあまりにも大きい依存があった(直販は、いま現在同社のビジネスの90%を占めている)。だが同氏は、トップレベルのパートナーさえ集めて関係を継続できれば、1年もしないうちに売上げを3倍のおよそ1300万ドルにできると考えている。

 同氏は、社員数40人の同社について「われわれの会社は1996年頃のISSである」とざっくばらんに語る。セキュリティ業界に横たわるチャンスを念頭に置き、できる限り早急に最新の体制を整えたいと考えている。同氏のためにも2001年が再び訪れないことを祈りたい。

[英文記事]
Secrets of Security

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