NTT-MEが描くブロードバンド市場攻略の新戦略とは?

2002/7/3

 新社長を迎え、エヌ・ティ・ティ エムイー(以下NTT-ME)が事業方針を大きく転換しようとしている。

 同社は7月2日、事業構造の変革を目指し、BtoB、BtoBtoC市場を主軸としたビジネス開拓事業を展開する方針を発表した。これまで、同社のビジネス展開は、BtoCを含めた広範な範囲をカバーしていた。今後はターゲット市場を絞り込み、同社の資源をビジネス市場に集中していく。
 
 これに合わせて、保守、メンテナンス、オペレーション技術を統合、インフラから基本アプリケーションまでのサービスプラットフォームとサポートをワンストップで提供する事業者向けブロードバンド事業を推進していく。

エヌ・ティ・ティ エムイー代表取締役社長 石川宏氏

 池田茂前社長(情報通信ネットワーク産業協会専務理事)の後を継ぎ、6月24日付けで同社社長に就任した石川宏氏は「これまで3年間、リソースの選択と集中を行ってきた。今年ぐらいから実際のビジネス面で成果が出るだろう。BtoB(toC)の上流市場に力点を置き、ブロードバンドビジネスの開拓を積極的に行っていく」と意気込む。

 BtoB向けの新たなサービスとしては、同一アクセス回線上でインターネットVPNとIP電話を利用可能とする「エンタープライズVPN」サービスを、7月下旬から提供する予定。

 また、BtoBtoC事業としては、同社がこれまで展開してきたブロードバンドアプリケーション・サービス(WAKWAK、XePhionボイスダイレクト、WAKWAKコール、WAKWAKコール・ゴーゴーなど)をOEMでISPに提供していく。

 OEM事業の第1弾として、9月にIP電話サービスのOEM提供を開始する。これは、同社が構築した音声専用のIP網とISPの通信回線を接続し、IP電話サービスをOEM提供するもの。OEM提供料金は全国一律3分10円、受発信双方で公衆電話回線を経由するタイプのIP電話サービスも全国一律3分20円で提供する。すでに国内大手ISPを含む約50社と話し合いを進めているという。

 石川氏は「価格面だけをみると、競合他社と比較して割高になる。ただ、弊社は価格競争に巻き込まれず、高品質のサービスを提供する道を選んだだけである」と、他社との差別化を価格面で追わないことを強調した。同社では、IP電話サービスのOEM提供により、インフラから基本サービスのアウトソース事業を受託して、2002年度で約30億円の売り上げを見込んでいる。
 
 NTT-MEによる、ビジネス市場への力点の移行、OEM提供の開始という事業展開の背景には、市場環境への適応という側面を読み取ることができる。技術の急速な進歩と競争激化を受け、技術者の人材確保や設備投資、アプリケーション開発等の負担が大きく、ネットワークインフラからアプリケーションまでを自ら保有する垂直統合型のビジネスモデルは限界を迎えつつある。
 
 同社の狙いは、このような市場環境において、自らの技術を市場(企業)に浸透させ、市場のリーディング・カンパニーの地位を確保しようとするものである。現段階では、ブロードバンドサービスのOEMビジネスを行っている競合他社は国内にはなく、いずれも独自のサービスを独自のバックボーンを活用して展開するのみだ。「このビジネスモデルにはものすごい期待を賭けているし、実は自信もある」と石川氏は小声でささやいた。

(編集局 谷古宇浩司)

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エヌティ・ティ・エムイー

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