PtoPを誤解している人々へ送る、「ArielAirONE」の威力

2002/8/29

 アリエル・ネットワークが開発した「ArielAirONE」は、国産初のPtoPコラボレーションツールとしてよくGrooveと比較される。両製品とも、乱暴にいえばPtoP型のグループウェアである。だが、従来のクライアント/サーバ型グループウェアには困難な、組織を超えたコミュニケーション力や軽快な動作は、従来型のグループウェアとまったく異質のものととらえることができるだろう。国内企業の業務形態や企業文化に特化した点、動作の軽快さ、汎用ブラウザを使用する点で、「ArielAirONE」はPtoPコラボレーションツールの先行者であるGrooveとの差別化を図っている。

 「ArielAirONE」のそもそもの開発動機には、クライアント/サーバ型グループウェアの問題点を解決するという意図があった。具体的にいえばロータスのノーツである。

アリエル・ネットワークのマーケティング・マネージャ 徳力基彦氏
 当初、グループウェアは社内での静的な情報共有が目的だった。その後、共同作業やコミュニティを組織するといったような、動的なコラボレーションに活用されるようになる。現在では、同時作業、遠隔会議などリアルタイムのコラボレーションが業務フローに組み込まれ、グループウェアもそのニーズを求められている。

 しかし、「企業における働き方の変化とグループウェアのあり方にそごが生じてきた」とアリエル・ネットワークのマーケティング・マネージャ徳力基彦氏は言う。「クライアント/サーバ型ではサーバの負荷集中を招き、動的・リアルタイムコラボレーションには不適となってしまっている」(同氏)。仕事の仕方が変化するのと平行して、グループウェアはそのニーズを満たすために機能を拡張していく必要があるだろう。もちろん、一概にクライアント/サーバ型グループウェアには、それが不可能だとはいえないが、アリエル・ネットワークはアーキテクチャそのものの革新を望んだわけである。それが、PtoPテクノロジを採用したコラボレーションツール「ArielAirONE」が誕生した最も強い要因だった。徳力氏は「ノーツのコンセプトが生まれた時と時代の認識が明らかに違ってきている」と話す。

 アリエル・ネットワークでは「ArielAirONE」に対し、グループウェアという呼称をあえて避けている。「従来型のグループウェアと明確な差別化を出すことがマーケティング上どうしても必要」(同氏)だった。そこで、PtoPコラボレーションツールという呼称を使用している。ただ、徳力氏が言うように「PtoPという言葉に含まれるマイナスイメージはいまだにあることは事実。実際に使用してもらえばその懸念は払しょくされるが」という問題があるのも事実だ。

 確かに、現在のPtoPテクノロジに付随するマイナイスイメージを完全に払しょくするのは難しいかもしれない。個人情報の流出に対する対策や違法コピー対策はどうなっているのか?

 ネットワーク内の情報漏えいあるいは情報の盗難に対するセキュリティについては、情報の暗号化を行う事で回避できる。電子メールのセキュリティ対策と同様の手法である。外部からの侵入に対して、徳力氏は「PtoPだからといって、既存のセキュリティ対策例えばファイアウォールやIP-VPNの仕組みを崩す必要はない」という。つまり汎用ブラウザを通じて、情報のやりとりを行うことに変わりはなく、新規に新たなセキュリティ対策を施す必要はないということである。既存のセキュリティ対策が万全であれば、それほど問題ではない。

 違法コピーに関しては、例えば以下のようなケースが考えられる。「ArielAirONE」では「ルーム」を開設し、参加者を募るかたちでコミュニティを形成する。もし、あるルームの参加者が100万人規模に達し、そのルーム間で違法コピーのプログラムやコンテンツが流通することになった場合は明らかに問題となるだろう。しかし、「実際問題として、そのようなケースが起こることはない。もし、そのようなことが行われた場合、ユーザーの追跡を行うこともできるが。結局は、ユーザーの倫理観に負う部分が多い」(同氏)という。

 PtoPの最大の利点は、閉じた世界ではなく、個人と個人がつながりあうことで巨大なネットワークが形成することにある。組織を超えた業務連携という仕事のあり方は現在では当たり前のものとなり、「ArielAirONE」のようなコラボレーションツールが、その後押しをするのかもしれない。

(編集局 谷古宇浩司)

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