[Interview] モバイルXMLの時代が始まる

2002/11/26

 携帯電話の上でXML対応のアプリケーションが動作する。最近の調査で、そうした機能が早くも実現できることが分かったという。日本のXMLの第一人者であり、国内でのXML啓蒙活動に力を入れている村田真氏に、XMLの新しい展開として期待されるモバイルXMLの現状について聞いた。


――携帯電話用のXMLパーサを開発されたのですか?

XML技術者育成推進委員会顧問である村田真氏

村田氏 いいえ。実はJ2ME対応のXMLパーサが主に米国のWebサイトでオープンソースとして公開されています。それらから余計なものを取り払ってコンパイルし、携帯電話のJava VM上で試してみると、実際に動作するものがいくつかありました。こうした調査は、なんばりょうすけ氏と橋本賢一氏を中心にして行ったものですが、十分に使えるレベルに達しているものが、すでにいくつかあることが分かりました。

 彼らは日本の携帯電話を持っていませんから、まさかそれらが日本の携帯電話上でiアプリとして動くとは思っていなかったと思います。とはいえ、いま私の手元の携帯電話でもXMLパーサを動かしています。例えばこのKXML2は、約12KBytesの大きさにXMLパーサーが収まっています。性能的にも十分な速度がありますね。

――通常のXMLパーサと、携帯電話用のXMLパーサでの相違点は?

村田氏 精密なエラーチェックをしようとすると、どうしても大きなコードになりますから、細かなエラーチェックは行われていないようです。また、APIもDOMやSAXといった一般的なものではなく、独自のAPIを使っているケースが多いようです。しかし、どれもシンプルなAPIになっていますので、使うのはそれほど難しくありません。

――携帯電話の上にXMLパーサが動作することで、どんな使い道が考えられるのですか?

村田氏 ちょうどいまW3CではXMLでフォーム機能を実現するXFormsの策定が進められています。これが実現すれば、今までHTMLのフォームで実現されていた携帯電話の入力機能をXMLで置き換えることができるでしょう。そうなれば、いままでよりも効率よくアプリケーションを開発できますし、1つでさまざまなデバイスに適用できるアプリケーションの実現に、また近づくことになるでしょう。

――そのためには、携帯電話上にXForms対応のブラウザが必要ですね。

村田氏 そうですね。XMLパーサと同時にブラウザがXForms対応になり、またそれらを利用するアプリケーションが必要になるでしょう。しかし、Javaでフォームのような入出力画面を作るのは面倒ですので、XFormsが使えようになれば、そのニーズは非常に高いはずと考えています。

――通信速度は問題になりませんか?

村田氏 SVGのように大量のデータを扱うようなアプリケーションを携帯電話でやろうとすれば、通信速度や容量が問題になると思います。しかし、フォームを使ってやりとりする程度であれば、ほとんど問題にならないはずです。

――モバイルXMLは、まだメーカーがほとんど手を付けていません。

村田氏 われわれも、今回のJ2ME対応のXMLパーサを調べて初めて、携帯電話での可能性に気が付いたところです。例えば、ContactXMLを実装して、携帯電話と一般のアプリケーションとの間で名簿情報を自由にやりとりできたら非常に便利ではないでしょうか。また、個人的には、携帯電話の上で動くRELAXのバリデータなどを作成して、アプリケーションを構築しやすい環境作りをしています。

――そうした成果はオープンソースとして公開していくのですか?

村田氏 そうですね。まず現時点でのまとまった情報を、今週行われる「2002 XML Japan」の初日「モバイルXML Day」の中で紹介していく予定です。また、プログラムなどは当然オープンソースとして公開していきます。もし、日本人のエンジニアが携帯電話向けにXMLパーサを本気で作れば、10Kbytes以内で作れるのではないかと思っています。こうした分野では日本が得意ですので、ぜひ今後盛り上がっていくことを期待しています。

(編集局 新野淳一)

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