最も流行したウイルスはクレズ、トレンドが年間ランキング発表

2002/12/18

 トレンドマイクロは2002年1〜12月のウイルス感染被害ランキングを発表した。最も被害件数が多かったのは2001年10月に初めて見つかったKLEZ(クレズ)で1万6683件の報告があった。被害が長期間続くのが最近の特徴で、トレンドマイクロでは「感染が感染を増やす悪循環になっている」と警告している。

順位 ウイルス名(被害件数)
1 クレズ(1万6683件)
2 バッドトランス.B(7231件)
3 バグベアー(1790件)
4 オパサーブ(1441件)
5 エクセプション(1257件)
6 マトリックス(846件)
7 フレゼム(629件)
8 ニムダ(588件)
9 レッドロフ(565件)
10 ジャプエスエックス(360件)

 ランキングは2002年1月1日から12月15日まで、トレンドマイクロのサポートセンターに寄せられた個人ユーザー、企業ユーザーからの問い合わせを基に集計した。

 ウイルス被害報告の総件数は5万615件で、2001年のほぼ倍。トレンドマイクロのトレンドラボ ジャパン アンチウイルスセンター ウイルス解析担当 岡本勝之氏は「報告数は過去最高。ウイルスに対する意識の高まりが報告件数の倍増に結びついた」と説明している。クレズやBADTRANS(バッドトランス)のように長期間感染が続くウイルスもあるが、BUGBEAR(バグベアー)やOPASERV(オパサーブ)のように2002年9月に発見されて、3カ月で感染を広げてランキング入りしたウイルスもある。

 岡本氏によると2002年に流行したウイルスの特徴は、不正アクセスを準備する機能があること。PCのキー入力を記録して、勝手に電子メール送信するバッドトランスや、PCのポートをオープンして外部からの接続を可能にするバグベアーなどが流行した。電子メールのFrom欄に実際の送信者ではない名前を記載してウイルスをばらまくクレズやバグベアーのようなウイルスもあった。ウイルスの実際の感染者を特定することが難しく、ウイルスメールがいつまでも送信し続けられることになった。

 EXCEPTION(エクセプション)などWebにアクセスすることで感染するウイルスも増加した。Internet Explorerのセキュリティホールを悪用したウイルスで、電子メールのフィルタリングだけでは感染を防ぐのが難しい。愉快犯的にウイルスを作成するユーザーも多いようで、一度流行したウイルスとほぼ同じ機能を持つ亜種も、さまざまなウイルスで発見された。

 岡本氏は2003年に流行が懸念されるウイルスとして、件名や本文、添付ファイル名を工夫して感染させようとするなど、人の心理を悪用するウイルスが増加することを予想。件名を日本語にしたウイルスはすでに見つかっていて、さらに巧妙なウイルスの発見も考えられる。

 .NETなど新しい技術を悪用したウイルスの出現もトレンドマイクロは予想している。すでにC#で開発されたDONUT(ドーナット)と呼ばれウイルスが発見。岡本氏は「.NETやXMLをベースにしたWebサービスは分かりやすく、開発者が簡単に使える。ウイルス作成者に悪用される危険性も高い」と指摘している。Shockwave FlashやJPEG画像に感染し、電子メール以外の経路で感染を広げるウイルスの増加も予想されるという。

 感染のたびにウイルスコードの暗号化方法を変更して、自らの姿を変えていく「ポリモーフィック型ウイルス」が近年発見されたり、ウイルスコード自体を変更して、姿を変える「メタモーフィック型ウイルス」のSIMILE(シマイル)が見つかるなど“次世代型ウイルス”の流行も予想される。これら次世代型ウイルスはアンチウイルスツールの単純なパターンマッチングでは対応が難しいとされ、「大規模感染の危険もある」と岡本氏は注意を呼びかけている。

(垣内郁栄)

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