事例に学ぶ、システム定着フェイズをどう乗り越えるか
2003/11/29
企業が新しい業務システムを導入しても従業員の間に定着せず、期待していた効果を上げられないケースがよくある。何が問題で、どこに気をつければ情報システムを事前の予測どおり有効活用できるのか。SAPジャパン主催のセミナー「CRM&SCM統合ソリューションセミナー」で、コダックの情報システム部 ビジネスサポート マネージャー 五十嵐啓喜氏が自社のプロジェクトを例にポイントを説明した。
コダック 情報システム部 ビジネスサポート マネージャー 五十嵐啓喜氏 |
コダックは2001年1月から2003年5月にかけて、SFA(Sales Force Automation)システムを再構築した。導入したのは、SAPの「mySAP CRM」と「SAP BW」。mySAP CRMではCRMオンライン、モバイルセールスアプリケーションの各モジュールを導入し、営業スタッフがビジネスパートナーや案件、活動、キャンペーンを管理できるようにした。コンサルティングやシステム構築はSAPジャパンと、当時のPwCコンサルティング(現IBMビジネスコンサルティングサービス)が協力した。両社のコンサルタントがコダックの営業スタッフと面談し、営業プロセスの問題点を洗い出した。五十嵐氏によると、スタッフの不満の多くは、必要な情報がどこにあるのか分からなかったり、情報があっても入手するまで多くの手順があり不便ということだった。
コダックは2001年1月から5月までを「パイロット・プロジェクト」として30人のパイロット・ユーザーにシステムを先行導入した。本格導入前にシステムの「いいところ、悪いところ」を明らかにするのが目的。その後、2002年8月に全国展開を開始。当初の想定ユーザー数は営業部のスタッフ150人だったが、営業をサポートするスタッフでSAP BWを利用するユーザーが増え、最終的には240人近くのスタッフが使うようになったという。
システム導入でコダックが重視したのが、2003年1月から5月にかけて行った「定着化プロジェクト」だ。定着化プロジェクトでは、予算と時間の関係でトレーニングなどを十分に実行できなかった事業部に対して補完的にトレーニングを実施した。SFAシステムの定着は6段階で評価。各段階は「効果的なパイプライン管理により、発掘した案件に対する目標受注率が達成する」など具体的に設定した。合わせて業務改革を行い、セールス管理やプロモーション管理のプロセスを標準化した。システム導入前から使っていたLotus Notesを活用し、社内ナレッジの活用を行うなど、SFAシステムの導入効果が最大になるよう社内プロセスを整理したという。
また、システム導入後の業務変革と、そのインパクト、インパクトへの対策を準備する「チェンジマネジメント・プログラム」を実施した。システム導入で社内的な混乱が生じる「ネガティブ・インパクト」に対しては、トラブル別に対策を用意。「新業務プロセスの理解不足のため不安になる」というスタッフには「コミュニケーション」「トレーニング」「目標設定・効果検証」の各ジャンルで対策を準備、「業務の標準化に対する抵抗がある」というスタッフには「コミュニケーション」を充実させた。五十嵐氏によると、システム導入後にこのようなネガティブ・インパクトが実際に発生。それぞれに対策を用意しておいたことで、障害の拡大を防ぐことができたという。
コダックはSAP R/3の導入も進める考えで、2005年半ばにも完了させる。CRMシステムを他国のコダックのシステムと統合する計画もある。
(編集局 垣内郁栄)
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