ソフトウェア開発におけるリスク回避の最適解?

2004/2/10

日本アイ・ビー・エム ソフトウェア事業 執行役員 三浦浩氏

 日本アイ・ビー・エムは2月9日、都内で「J2EE開発者サミット in Hills」を開催した。旧ラショナル・ソフトウェア製品群を核とした開発者向けのイベントで、今後のJ2EE開発の方向性をIBMが示すというのが全体を貫くテーマ。堀田一芙氏に代わり、ソフトウェア事業のトップに就いた三浦浩氏は、ビジネスとITのギャップを橋渡しする存在としてのミドルウェアの重要性を訴え、同社が擁するミドルウェア群のうち、ラショナル製品の価値が「今後さらに高まっていく」と述べた。

 基調講演に登壇したのは米IBM Rational Software UML エバンジェリスト テリー・クアトラニ(Terry Quatrani)氏と日本IBM ラショナル事業部 第二技術部 藤井智弘氏の2人。どらも、旧ラショナル時代から、対外的にメッセージを発する存在として名が知られている。今回、両者が発したメッセージは、これまでIBMが発信し続けてきた「オンデマンド・コンピューティング環境(あるいはオンデマンドの世界)」におけるさまざまな課題を、ラショナルの得意分野であるソフトウェア開発の観点から解剖し、その解決策を提示する、というものだった。

米IBM Rational Software UML エバンジェリスト テリー・クアトラニ氏

 クアトラニ氏の発表内容は、米国における事例を豊富に引用することで、RUP(Rational Unified Process)の導入、あるいはラショナル製品の活用が、コスト削減や生産性向上に大きく寄与することを“証明”するものだった。RUPの認知度やその活用頻度について、米国企業は日本企業の“先を行っている”。もちろん、RUPの活用案件が多いからといって、ソフトウェア開発技術が成熟しているとは必ずしもいえないのだが、複雑化、大規模化する近年のソフトウェア開発案件を眺めるにつけ、“何らかの秩序だった開発プロセス”が必要だとの危機感は、セミナー参加者の多くが抱いていたようだ。ただし、(参加者にとっては)話が少々“未来”に行き過ぎていた感があり、その後に登場した藤井氏の講演が、クアトラーニ氏の話を補完する位置付けを担っていた。

 藤井氏の講演は、要約すれば、J2EE開発でよくみられる“リスク”をいかに回避するか、ということ。回避のための解答の1つとして、RUPが挙げられるのは当然のことだが、藤井氏の話を聞いていると、必ずしもRUPにこだわるのではなく、RUPが体現する“リスク回避型の開発プロセス”をうまく導入することが重要なのだと理解したくなる。「結局、RUPこそが最適なリスク回避型の開発プロセスである」という講演のポイント自体は動かないのだが。藤井氏のいうリスク回避の肝は、実際に機能限定版(RUPではベースラインという)を作成し、動くことを確認したうえで、先の工程に進む、ということである。常に動くことを確認する、という作業を繰り返す(イテレートする)ことで、後戻り不可能なほどの致命的な欠点を出現させないことが重要になる。そのための具体的な指針がRUPに盛り込まれており、最適なツールとしてラショナル・ブランドのツール群として存在しているのである。

(編集局 谷古宇浩司)

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