「SIerはコバンザメ」、新日鉄ソリューションズ会長が大批判
2004/4/27
「情報サービス産業は今後、厳しい淘汰の時代に向かうだろう。しかし、時代を潜り抜けないとダメだ」。日本オラクルが主催したセミナーで4月26日に講演した新日鉄ソリューションズ 代表取締役会長 棚橋康郎氏はこう述べて、システム・インテグレータ(SIer)などの情報サービス産業の厳しい現状を指摘した。棚橋氏は2004年1月のイベントでもSIerの現状を批判。しかし今回は批判に加えて打開策の提示に長い時間を割いた。
新日鉄ソリューションズ 代表取締役会長 棚橋康郎氏 |
棚橋氏は情報サービス産業の現状に強い危機感を持っている。国内の多くのSIerは「日本語の壁に守られた閉じた市場の中で、一度捕まえた顧客にコバンザメのようについて利益を上げている」と批判。そのうえで「顧客を囲うことを最大の戦略とし、ライバルとソリューションの切磋琢磨してこなかった。下請けに無理強いをするなど、いまだ近代工業にはいたっていない。家内製工業の集合体だ」と切って捨てた。
棚橋氏はこのような状況で数千社ものSIerが生き残っているのは、エンドユーザーがSIerのシステム構築能力、エンジニアリング能力を正確に評価できる仕組みがないからと指摘した。「汚れた東京湾の中で探し物をするようなもの。求めている発注先を探すのは至難の技だ」。システム構築能力などが向上しないままで、今後、中国、インドなどのSIerが日本語を勉強し壁を乗り越えてくるようになれば、「容易に受注できる。いまのままでは日本の外注生産は立ち行かなくなる。早晩、雇用調整などで日本のエンジニアの空洞化が起きる」というのが危機感の源だ。
では、どうすればいいのか。棚橋氏は「奇策はない。情報サービス産業は人がすべて。個々人のITスキルをレベルアップするしかない」という。「即効性はないが、教育投資は情報サービス産業の企業が行える必要不可欠で唯一の投資」と強調。また、フルラインアップでメニューを用意する“何でも屋”ではなく、特定分野に高い競争力を持つ“高級ブティック”を目指すべき、と提唱する。そのためにはITスキルスタンダードなどで社内エンジニアのスキルマップを把握して、高級ブランド化に足りない部分を教育する。
さらに棚橋氏は、情報システムの開発能力を客観的に評価する認定モデルである「CMMI」などを使ったSIerの評価基準の導入が必要と訴える。企業のエンジニアリング能力を客観的に評価できるようにすることで各企業の能力が透明化され、「コバンザメ商法が通じなくなる」。エンドユーザーやパートナーによるSIerの選別が進み、結果として企業の淘汰が進むというのだ。
棚橋氏はハードベンダ、ソフトベンダの時代に続いて「SIerが主役を演じなければならないと考えている、しかし、現状でその役割を果たせるまで進歩しているかというと“No”といわざるを得ない」と述べた。
(編集局 垣内郁栄)
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