最大2700km、長距離FC接続の実現の秘密、米マクデータ

2004/10/16

 大規模SAN(Storage Area Network)向けにファイバ・チャネル・スイッチを提供している米マクデータは10月13日(現地時間)、米コロラド州デンバーにある本社に報道関係者を集めて、同社の製品戦略について説明を行った。

 同社はもともと、「ディレクタ」と呼ばれる大量のファイバ・チャネル・ポートを備えたスイッチ製品「Intrepid」シリーズを軸に、中規模向けの「Sphereon」、ファイバ・チャネルSANとIPネットワークのブリッジとなる「Eclipse」の3種類のハードウェア製品のほか、「SANavigator」をはじめとするSAN管理のソフトウェア製品を持つ。中でも最新製品であるIntrepid 10000とEclipse 2640は同社の戦略上の大きな鍵となる製品だ。

 Intrepid 10000は260個の1/2/10Gbpsファイバ・チャネル・ポートを備えた大規模SAN向けディレクタだ。同製品は、マクデータが買収した米Sanera Systemsの技術がベースになっており、その最大の特徴は複数SANの統合、最大4つの論理パーティショニング機能、最大2700kmの距離をファイバ・チャネルで接続する機能の主に3点である。同社の既存製品Intrepid 6000シリーズなどで構成される大規模SANの中心にIntrepid 10000を配置することで、複数SANの統合が可能となり、SANルーティングなどの機能が提供されるようになる。また論理パーティショニング機能により、Intrepid 10000が1台だけで複数のSANセグメントを構成できるようになるため、コスト削減や省スペース化の実現が可能となる。

 そしてもう1つ特筆すべき特徴は、長距離SAN接続と10Gbpsファイバ・チャネル(FC)のサポートである。Saneraの「バッファ・クレジット」と呼ばれるバッファ機構を用いることで、従来まで1Gbpsのファイバ・チャネルで最大100kmまで、といわれていた距離制限を越えることが可能となり、1Gbps時で約2000km超、10Gbps時で最大約220kmまで接続が可能となる。ディザスタ・リカバリ(災害復旧)などのソリューションでは「国や海をまたいだデータの同期」「ある程度の距離を超高速でデータ転送」といった事項が要求されるが、Intrepid 10000により、こうした要望に応えることができるようになる。

米マクデータ エンジニアリング担当上級副社長のジーン・ベッカー氏

 マクデータが今年5月から提供を開始したEclipse 2640は、ファイバ・チャネル〜IP(イーサネット)のゲートウェイ機能を提供する。同製品では、iSCSIとiFCPの2種類のIP-SANプロトコルを採用している。一般に、IP-SANプロトコルを用いる理由としては、安価なイーサネット利用によるコスト削減のほか、ファイバ・チャネルで問題となる距離制限を取り払うという2つの目的が挙げられる。長距離接続を実現するIP-SANプロトコルには、ファイバ・チャネルの通信をIPでトンネリングするFCIPとiFCPの2種類が用いられるが、EclipseではiFCPを採用している。その理由を米マクデータ マーケティング担当の上級副社長ジェフ・ボーゲル(Jeff Vogel)氏は「複数拠点をまたがるSAN同士を接続するにはiFCPが向いている。システムに冗長性を持たせるに当たって、Active-Active対応ですべてのリソースを有効利用できるため、効率がいい」と説明する。

 また発表会の中で、同社 エンジニアリング担当上級副社長のジーン・ベッカー(Jean Becker)氏は、今後1年半の製品ロードマップも発表している。同社では2004年後半から2005年にかけて、現行のEclipse 1620の強化版であるEclipse 1640のほか、Sphereon 4400/4700といった中規模向けスイッチ製品の拡充を行う予定だという。そのほか、Virtualization Switchと呼ばれる装置を投入することで、既存SANの仮想化(バーチャライゼーション)による統合を可能にするという。仮想化は1つの鍵となる技術のようで、同時期に登場する製品では、管理ツールやインターフェイスの強化のほか、仮想化機能への標準対応が盛り込まれる。

(鈴木淳也/Junya Suzuki)

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