「顧客の本音は専用線。付加価値で顧客を増やす」、NTTコム

2004/11/25

NTTコミュニケーションズのユビキタスサービス部 ギガストリーム営業部長 南宏二氏

 「企業のネットワークインフラがバーチャルな“ベストエフォート”のVPNでは不安。顧客の本音は完全帯域保証の専用線サービスだが、多くのユーザーが“低コスト化”を理由に、ベストエフォート型のVPN回線を利用しているのが現状だ」。マルチメディア推進フォーラムが主催したイベント「デタリフ化()がもたらす新たなネットワーク・ソリューション」で講演したNTTコミュニケーションズのユビキタスサービス部 ギガストリーム営業部長 南宏二氏はこう述べた。

 南氏は「VPN回線はQoSの確保が難しい」と述べ、VPNと専用線の信頼性の差を説明した。専用線の稼働率は99.9999%だが、VPNの稼働率は99.999%だという。差は1桁だが、年間の不稼働時間にすると、両者には200倍の差が生じる。米Contingency Planning Research & Strategic Reserchの調査結果によると、金融機関のネットワークシステムがダウンしている間の年間損失額を比較すると、専用線は600万円だが、VPNでは6000万円の損失が発生する。VPN回線のダウン時の損失額は(稼働率によっては)専用線の10倍になる計算だ。

 さらにネットワークサービスのメンテナンス時間帯については「インターネットVPNではキャリアの公衆網を利用するため、機器のメンテナンスの時間はキャリアが決めた時間帯で行うしかない。専用線を使っていれば、ユーザーがメンテナンス時間を自由に選ぶことができる」と強調した。

 この数年で、VPNサービスは勢い付いている。一方で、専用線サービスは斜陽化傾向にあると南氏は指摘する。その要因は価格の高止まりにある。キャリアのパケットデータ網は、フレームリレーからレイヤ3VPN、レイヤ2VPNへと代替わりするたびに料金が値下がりしてきた。専用線は、ネットワークの刷新が行われなかったため、料金値下げの契機がなかったのである。

 専用線が料金を値下げできなかった理由はまだある。「専用線サービスの価格は、監督官庁に届け出た料金表に基づく価格でしかサービスを提供できなかった」(南氏)からだ。しかし、2004年4月の法改正で、キャリアはユーザーのニーズに応じて価格を自由に設定できるようになった。

 南氏は「通信キャリアへの制限が撤廃されたいまこそ、専用線に付加価値を付けたり、顧客向けにカスタマイズしたりして、専用線ユーザーのシェアを増やしていきたい」という。NTTコミュニケーションズは、企業向けに専用線をカスタマイズし、業務用データのリアルタイム・バックアップを行うディザスタ・リカバリサービスや、監視IPカメラサービスを展開している。

(編集局 富嶋典子)

デタリフ化:電気通信事業法の「契約約款の作成・公表義務や役務提供義務を撤廃し、相対取引を可能とする規制緩和措置」に伴う改正

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