[eWEEK]
MSのスパイウェア対策ソフトは「スパイウェア賛成ソフト」と呼ぶべき

David Coursey
2005/7/15

 マイクロソフトは幾つかのスパイウェアを「削除」推奨から「無視」推奨に変えた理由を完全に説明するべきだ。そうでなければ、スパイウェア対策ソフトを「スパイウェア賛成ソフト」と改名する方がいいだろう

 マイクロソフトが同社のスパイウェア対策ソフトと、大手スパイウェア企業Clariaの買収計画の噂をめぐる論争から手っ取り早く抜け出す方法がある。緩やかな方法も考えられるのだが、手っ取り早い方法の方が面白い。

 それは、「マイクロソフト Anti-Spyware」の名称を「マイクロソフト Pro-Spyware(スパイウェア賛成ソフト)」に変えることだ。それが同社が目指している方向のように思えるからだ。同社が幾つかのスパイウェアについて、「削除」推奨から「無視」推奨に変更する「アップグレード」を施しながら、その理由をいいたがらないわけを説明するすべがほかにあるだろうか? 

 マイクロソフトは心の中では、このソフトの名前を「マイクロソフト Spyware」に変えているのかもしれない。もし同社がClariaを買収したら、この名称が特に似つかわしい。

 もっといい方法もあるかもしれないが、効き目は遅い。それにレドモンドに抜け目ない考えが必要になる。

 この計画は、マイクロソフトに行動の改善――もっと公への説明責任を負うようになる――を迫るものなのか? 同社は顧客が信頼してくれると当てにしているが、その信頼がきちんと扱われるということを示すのに必要な情報を提供しないだろう。

 マイクロソフトは顧客に対し、特定のソフトをスパイウェアと判断する理由について具体的な情報を開示する義務がある。そして、同社が推奨事項を変更したときには、それを顧客に完全に通知しなくてはならない。顧客が自分で取るべき行動を決められるように、それぞれのスパイウェアに関する「成績表」を積極的に提供するのでなければ、「削除」以外の行動を推奨するべきではない。

 今回の件で、マイクロソフトの顧客は、どうして幾つかのスパイウェアが最近になって「削除」から「無視」推奨に変更されたのかを知らされて当然だ。これらのスパイウェアに関与する企業が、振る舞いを変えたのだろうか。もしそうなら、どのように変えたのか。それともマイクロソフトが基準を変えたのか? 同社はそれを説明しなくてはならない。

 顧客には、どのスパイウェアを削除するべきか、スパイウェアが自分の持っておきたいソフトと関係しているのかどうかを判断するインテリジェントな方法が必要だ。そのために、マイクロソフトは特定のスパイウェアに伴う危険性や影響、「恩恵」に関する詳しい情報を提供しなければならない。

 ユーザーが特定のスパイウェアに対して取るべき行動について、同社がアドバイスするのは自由だ。しかし、そうするのであれば、インテリジェントな判断に必要な情報を顧客に提供するべきだ。

 マイクロソフトはすでに、顧客に代わってあまりに多くの決定を下しているが、スパイウェアに関しては、デフォルトの答えは常に「削除」であるべきだ。

 わたしがマイクロソフトについて知っている限りでいえば、同社のスパイウェア対策ソフト開発者は、部門長のマイク・ナッシュ氏がいっているとおり、独立した存在だと思う。つまり、噂のClaria買収が彼らへの圧力になったのではないということだ。

 マイクロソフトには、少なくとも時折、他人をあざけることを楽しんでいるように思える部門がある。スパイウェア対策部門もその1つのようだ。マイクロソフトの統制体制はあまりに分散化されているため、ビル(ゲイツ氏)、スティーブ(バルマー氏)、その直下の数人を除いては、誰か一人がClariaへの対応の変更を命じて、それを続けさせたということはあり得ない。

 この件について知れば知るほど、Clariaと幾つかのスパイウェアが3月に「アップグレード」されたように見える。共謀したようには思えないが、マイクロソフトがスパイウェアの定義を変えようとしているのかもしれないとは思える。

 マイクロソフトがスパイウェアを「更正」させ、広告付きソフトの合法的な配布手段にできるようにしたがっている可能性はある。同社はすでに、サービス・サブスクリプションで売り上げを得る計画を明らかにしており、これらサービスに顧客が代金を払う方法には、広告を見ることも含まれるだろう。

 そのような取り決めがもっと露骨になったら、ソフトはテレビやラジオと同じやり方で資金を得るようになるかもしれない。広告が嫌なら、サブスクリプションを購入しろというわけだ。わたしは幾つかのオンラインサービスですでにそうしている。

 これからは「マイクロソフト Spywareはあなたにお勧め!」といった広告を見ることになるかもしれない。もしかすると、Office 12の秘密はアップグレード価格よりも広告サポートなのかも。

 いまの状況について、マイクロソフトは公開文書で説明しているが、事態を悪化させただけだ。

 同社の文書はこの問題全体に対処するどころか、おかしいくらいに狭い範囲の話に終始している。詳しく書かれているようにみえるが、そうではない。説明しようという姿勢は見られるものの、それができていない。「少なすぎ、遅すぎる」の古典的な例だ。

 スパイウェア「賛成」と呼ばれたくなければ、マイクロソフトは完全な説明を行い、自社のソフト、ポリシー、手続きに必要な変更を施し、顧客が同社の推奨を完全に信じられるようにしなければならない。

 マイクロソフトはわたしたちの信頼を求めているが、そのためにはもっとやるべきことがある。

[英文記事]
Maybe They Should Call It MS Pro-Spyware

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